テラーノベル
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チェリル「……聖女様、実を言うと……男癖が悪いんです……皆、知ってます……」
チェリルは少し首を横に振ると、小さな声でとんでもない裏事情を暴露した。
(ぶっ……! 男癖が悪い!?)
俺は黒いフードの奥で、危うく盛大に吹き出しそうになった。
ゲーム『魔王様と聖女様』の公式設定では、純潔で慈愛に満ちた完璧なヒロインのはずだ。
それが、まさかの「男癖が悪くて皆知っている」という生々しいローカルな噂。
清純派の裏の顔を知ってしまい、元サラリーマンのオタク脳は大混乱だ。
(やっぱり、ゲームの知識だけが全てじゃないってことか……!)
呆気にとられる俺の隣で、チェリルは翡翠の瞳を少しだけ細め、いつになく真剣な表情をしている。
その時だった。
――カツン。
パレードの狂騒と大歓声を割って、背後から不自然に鋭いヒールの音が響いた。
重々しく、そしてどこか執念を感じさせるその足音に、カンストした魔王の防衛本能がピクリと反応する。
ゆっくりと振り返ると、いつの間にかパレードの馬車から降りたのか、あるいは最初から影を潜めていたのか――そこには、純白のドレスを身にまとった金髪の美少女が立っていた。
「……見つけたわ、アズリス。そこの泥棒猫は、一体どこの誰かしら?」
聖女リリス・ホワイト。
ゲームの慈愛に満ちた微笑みはどこへやら、その瞳にはドロリとした底なしの嫉妬の炎が燃え盛っていた。
チェリル「……聖女様と、……お知り合い…ですか……?」
隣に座るチェリルが、不思議そうに翡翠(ひすい)の瞳をパチクリさせながら俺を見上げてきた。
そのあまりにも緊迫感のない、ぽつりとした呟きに、張り詰めていた空気が一瞬だけ緩む。
(……そうだ。よく考えたら、リリスはまだ俺の正体を知らないはずだ!)
俺の脳内にあるサラリーマンの冷静な思考回路が、高速で現状を分析し始める。
ゲームのシナリオ通りなら、魔王アズリスがリリスと接触して執着を始めるのはこのパレードの後のイベントだ。今のリリスは、俺が「世界を滅ぼす魔王」だということも、自分に恋する運命の悪役だということすら知らない。
なのに、なぜ彼女は俺の名前を呼び、あんなにもドロドロとした嫉妬の炎を燃やして睨みつけているんだ?
「……誰、ですって?」
純白のドレスを揺らしながら、リリスが一歩、また一歩とベンチへ近づいてくる。
その顔は美しく完璧な「聖女」そのものだが、瞳の奥だけは完全に据わっていた。
「私の耳には、確かにそこの泥棒猫があなたのことを『アズリスさん』って呼んだのが聞こえたわ。ねえ、そこの男……。あなた、私を差し置いて、そんな不細工な羽虫と仲良くお喋りするなんて、いい度胸じゃない?」
(おいおい、初対面でいきなり泥棒猫だの羽虫だの、言葉のドッジボールが強烈すぎるだろ……!)
チェリルが言っていた「男癖が悪い」という噂が、一瞬で真実だと確信に変わる。
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どうやらリリスは、自分が認めた「見栄えのいい男」が自分以外の女といるだけで、自動的に嫉妬のスイッチが入る超危険人物(メンヘラ)だったらしい。
そんなリリスの凄まじい威圧感を前にしても、チェリルは怯むどころか、小首を傾げて天然な反を見せた。
コメント
2件
聖女さん流石にヤバい女すぎる、
わあ、第10話もめっちゃ面白かったです…! 「男癖が悪い聖女」ってタイトルからもう期待してたんですけど、まさかリリスがこんなにどろどろな嫉妬キャラだったなんて…!公式設定の純潔聖女とのギャップがたまらないです。チェリルの天然ぽつりツッコミもクセになりますね笑 アズリスの戸惑い方が元サラリーマン感あって親しみやすいですし、今後の修羅場展開が気になりすぎます〜! 続き、静かに待ってますね🌙