〝2人だけのキスの練習〟の日から、何だか避けられているような気がする。
今日はライブ前の最終確認でメンバーが集まっている。彼はと言うとメンバーの康二くんと二人でずっと楽しそうに話をしている。
俺はなるべく見ないように心がけた。
イライラを振り払うように必死で踊った。
照 💛『蓮!オーバーワークだぞ、最終確認なんだからそんなに・・・』
蓮 🖤『大丈夫です。なんだか緊張して・・・ 踊ってると気が紛れるんで』
照 💛『ほどほどになっ』
俺ら二人のやりとりをチラリと見ては、また康二くんと楽しそうに〝イチャイチャ〟している。
片思いってこんなに苦しかったっけ?
亮平💚 『そんなに焦ってどうしたの?蓮』
蓮 🖤 『いや皆んなより練習できてない
し・・・』
亮平💚 『そうじゃなくて^^勘違いだったらごめん』
あべちゃんは、翔太くんの方へ視線を送ると俺に耳打ちしながら核心をついた。
亮平💚 『嫉妬してるでしょ?翔太と何かあった?二人ともいつもと違う』
あべちゃんは、周りをよく見ている。その洞察力に今までたくさん助けられてきたけれど、この翔太くんへの〝思い〟だけは誰にも触れられたくない。
この感情にまだ慣れていない。男が男を好きになるということに俺自身、まだ受け入れられないでいるのだ。その間も翔太くんを好きだという気持ちだけが膨らんでいく。
この思いを鎮める方法があるなら教えてほしい。
蓮 🖤 『勘違いだよ。そんな事・・・有り得ない』
亮平💚 『そう?無理しないで相談して。多分、力になれるから』
あべちゃんは俺にウインクをして見せると〝練習付き合うよ〟と言って一緒に踊ってくれた。
そんな俺らを見て、メンバーも一人二人とダンス練習に付き合ってくれた。
翔太くんだけは部屋の隅でストレッチしたり軽く振りを確認する程度で、俺に近づくのも嫌らしい・・・胸が苦しい。
集中力を欠くと怪我に繋がる・・・
先ほどから右足首に痛みがある。胸の痛みに比べたらどうって事はない。
床に大の字になって天井を見上げれば吹き出る汗と一緒に涙が溢れた。慌ててタオルを顔にかける。
必死に声を押し殺して涙が止まるのを待った。
翔太 side
アレから2週間。俺はおかしい。蓮を見るとドキドキしている自分がいる。
オフの日も蓮をTVや街中で見かけるたびに初恋のソレと似たようなドキドキに戸惑い、今日はとうとう〝生の〟蓮とご対面ときた。
翔太💙 『マジでどうかしてる。気持ち悪りぃ』
心の声のハズが、外にダダ漏れだったみたいで、近くにいた康二が不思議そうに顔を覗き込んできた。
康二🧡 『どないしたん?しょっぴー?』
〝蓮を見たら、胸がドキドキします〟なんて誰に言えよう。
翔太💙 『キモい』
康二🧡 『誰が?なんやの?』
翔太💙 『俺が』
康二🧡 『しょっぴーはキモないで!可愛いで♡』
*翔太💙 『おい、やめろ近い抱きつくなよ*』
コイツになら何されてもドキドキしないんだけど・・・
ふと顔を上げると踊っていた蓮が少し歪んだ顔をしたのが気になった。
暫くすると床に大の字に寝そべっている。
翔太💙 『蓮、大丈夫かぁ?もしかして足痛めたんじゃないだろうな?水飲む?』
覆った蓮の顔を覗き込もうとタオルを引っ張ると必死で抵抗してきた。
蓮 🖤 『大丈夫だから放っておいてください』
翔太💙 『無理だろそんなの仲間だろ俺ら』
蓮 🖤 『うるさいよ!翔太君』
はぁ?何だって言うんだよ。そんな怒るような事言ったか?
〝ごめん‥‥ついイライラして〟蚊の鳴くような小さな声で謝ると〝頭冷やしてくる〟と言って部屋から出ていった。
ドキドキ高鳴っていた心臓が、今は靄がかかり、心臓をぎゅっと締め付けた。
翔太💙 『何だよコレ』
理解不能な心臓の乱高下に、置いてきぼりの自分の気持ちがザワザワと騒がしい音を立てている
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