寵愛狼男

混沌とした戦場の中、中国軍はその動きに一際異彩を放っていた。他の各国が直接戦闘を展開する中、中国軍は奇妙に静かで、冷静に状況を見極めているようだった。

拓真と亮太が狼男として戦う中、突然、施設の上空から巨大な輸送機が現れた。その輸送機から無数のドローンが放たれ、一斉に施設内外の全てをスキャンし始める。

「何だ、あの輸送機は？」拓真が叫ぶ。

「中国軍の精鋭だ。」亮太が歯を食いしばる。「戦場を観察するだけじゃない。あいつらは別の狙いを持ってる。」

輸送機から降り立ったのは、中国軍のトップ指揮官、劉志華（りゅう しか）だった。彼は端正な顔立ちに冷酷な眼差しを持つ、戦場の天才と称される人物だ。

劉志華は部隊に命令を下した。

「戦闘には加わるな。我々の目的は薬の奪取ではなく、『開発データ』だ。」

中国軍は施設のサーバールームに向かい、データ奪取を開始する。その行動は他国の部隊に気づかれるも、彼らの戦術は異常なまでに計算されており、直接的な衝突を避けながら目的を果たしていった。

亮太が巨大な狼兵士との戦闘に集中している間、拓真は施設の奥にある制御室にたどり着く。しかし、そこで劉志華率いる中国軍のエリートチームと遭遇する。

「拓真だな。」劉志華が冷たく微笑む。「君たちには感謝している。この施設を混乱させてくれたおかげで、我々が求めるものに近づけた。」

「貴様らの目的はなんだ？」拓真が銃を構え、詰め寄る。

「簡単なことだ。」劉志華は淡々と答える。「薬そのものに価値はない。我々が求めるのは、薬の基礎理論だ。この技術を掌握すれば、世界を支配できる。」

一方で、亮太は狼兵士との激闘の中で、自分の中に眠るさらなる力を感じ始めていた。しかしその力を引き出すことは、完全な狼男化を意味し、自我を失う危険を伴う。

「拓真……俺はどうすればいい？」亮太が叫ぶ。

「迷うな！」拓真が応える。「お前が自分を信じなきゃ、誰が信じるんだ！」

亮太は迷いを振り切り、全ての力を解放する。その結果、狼兵士を圧倒するも、彼自身も肉体の限界を超え始める。

劉志華はデータを手に入れると、速やかに部隊に撤退命令を下す。「この施設は持たない。全員退避しろ。」

その言葉通り、施設の中央部が爆発し、全体が崩壊の危機に陥る。

「拓真、早く脱出しろ！」亮太が叫ぶが、拓真はサーバールームを破壊しようと最後まで粘る。

劉志華は輸送機に乗り込み、施設から離れながらこう呟いた。

「次は中国が主導する時代だ。」