施設が崩壊する中、中国軍の撤退が進む一方で、戦場の空気が再び変わる。突如、上空に現れたのは複数のヘリコプター編隊。その機体には青と金の星が描かれたEUの旗がはためいていた。
「EUか……やっと来たか。」拓真が荒れ果てた施設を見上げながら呟く。
ヘリコプターから降り立ったのは、EU軍の指揮官、ソフィア・ルメール。冷静沈着な表情を持つ彼女は、戦略の天才として知られ、国連の場でもリーダーシップを発揮してきた女性だ。
「やっと、状況が整ったようね。」ソフィアは周囲を見渡し、崩壊しかけた施設を冷静に分析する。
ソフィアの部隊は徹底的に計画された行動を取っていた。彼らの目的は、中国軍と同様に「データ」の確保かと思われたが、実際には異なっていた。
「拓真。」ソフィアは彼の存在を知っていたかのように声を掛けた。「ここでの争いを終わらせるつもりはない?」
「終わらせる?」拓真は訝しげに彼女を見つめる。「EUの目的はなんだ?この計画の背後に何を求めている?」
「それを知る価値があるかは、あなた次第ね。」ソフィアは微笑むと、部隊に指示を出した。「施設内に残された薬と技術を完全に破壊しなさい。こんなものが存在するべきではない。」
EUは他国と異なり、薬を利用するのではなく、その存在を世界から抹消することを目的としていた。
「君たちが戦っているこの狼男の力、その発端は紛争ではなく、利益だ。」ソフィアは冷たい目で拓真に語った。「これが広まれば、どれだけの生命が犠牲になるか分かる?我々は、それを防ぐために動いている。」
「そんな建前が通用すると思うか!」亮太が声を荒げる。「本当は別の狙いがあるんじゃないのか?」
ソフィアは亮太を一瞥し、「真実は行動で示すものよ。」と静かに答えた。
ソフィアの言葉に動揺する拓真と亮太。しかし、その瞬間、施設の裏手から新たな勢力が現れた。
「また別の部隊か……」拓真は警戒を強める。
現れたのは、謎の武装集団。EU軍も初めて見る敵だったようで、ソフィアはその存在に驚きを隠せない。
「これは……予定外。」ソフィアが小声で呟く。
謎の武装集団は、施設の残骸に残された薬やデータを狙っていた。EUと拓真たちは、思わぬ形で協力しながら新たな敵に立ち向かうことになる。