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「お疲れ様!やっぱり早かったね」
6箇所全てを巡るのに要した時間は40分足らず。
「詠唱時間はどうしても掛かるから、こんなものだろう。どうだった?」
「凄い反響だよっ!!宣言した6箇所全てが一時間もしない間に破壊されたからね!
氷の塊が上空から落ちてくるのも良かったし、爆発も良かったよ!」
「屋内カメラは全て壊れたのですが、外からの映像は残っています。特に反響があったのは、ビルのベランダへ空からヒジリさんが降りてきた時でした」
あれか…あれはどうしようもなかったからな。
「あれもビルの外からYou◯uber達が撮影していましたが、彼らの目にはヒジリさんが空から舞い降りたように映ったことでしょう」
「これで名実共に神様の使いだね!!」
「そうだな。教祖よりも使徒の方がいいからな!」
響きがカッコいいじゃん?俺が最初の使徒だっ!!
「早い所ではもうニュースになってるよ。日本でも『現代に舞い降りたキリスト』として、凄い反響だね!」
「キリスト教とは戦いたくないなぁ…それよりもこれで信者の数はどれくらいになると予想しているんだ?」
俺は有名になりたいわけじゃないからな。
出来ることなら早く忘れて欲しいとさえ思っている。
「動画の再生回数がまだまだ伸びそうだからねぇ…仮に今回のSNSに投稿された動画の再生数が合計で5億回くらい再生されたとして、テレビやその他のメディアもあるでしょ……うーーーん」
しまった…まだ難しい段階だったか……
「だ、だいたいでいいんだぞ?」
「そう?じゃあ2億人くらいかな」
「に、2億…?嘘だろ…」
おいおい…予定より大幅に多くないかい?
「うそじゃないよ。だって子供達も見ているんだよ?現実にはいない正義のヒーローみたいなことを出来る人が、実際に現れたらどうなるか……ね?中学生以下の子供達はみんなルナ様に祈ると思わない?」
「…確かに。厨二病を患っている人達も挙って祈りそうだな」
なるほど……でも、予定より多いのは?
「でも、どれも一過性のものだよ。生涯を通して祈り続けてくれる人達は、放っておくと1/100以下くらいになると思うよ」
「なるほどな。つまり定期的にこういうイベントをするのか?」
「そそ。忘れられそうなタイミングで、顔を出すんだよ。今回みたいに周りが用意してくれる可能性は低いから、自分達で演出を考えて用意しないといけないけどね」
それは…必要経費か。
まぁ子供のすることなら長続きしないだろうな。
「これで次が楽しみだね!」
「いや。全然楽しみちゃうわ…」
「何言ってるの?満月の夜の話だよ?」
ああ…そっち……
「間際らしいタイミングで言うなよ…俺がDVD作成を楽しみにしているみたいだろ…」
「ふふ。楽しんでくれていいんだよ?」
「馬鹿いえ……」
結局撮影しなきゃいけないんだよな……
俺一人なら大変じゃん…ん?
「つーか、異世界で撮影するならライルや爺さん、リリーなんかも使えばいいんじゃ?」
「!!!聖くん…いつから天才演出家になったの…?」
いや、忙し過ぎて忘れてたろ?
「そうだね!イケメン二刀流剣士に、マッチョお爺ちゃんに、美女剣士!みんな強烈なキャラだねっ!」
「おう。使徒の俺が霞むだろうが、全く問題ないな!」
「あのぅ…魔法使い枠で、エリーさんも出せば…?」
天才か?さすミラだぜっ!!
「ちびっ子魔女枠だねっ!!エリーちゃんならケーキがあれば間違いなく出てくれるから、後はシリーズ化だけだねっ!」
エリー…お前はいつも安売りしてんなぁ…技術も何もかも……
「兎に角決まりだね!!一対一で聖くんと戦ってもらって、最後は四対一だねっ!」
「武闘会もあるのに……最近バトル路線突っ走ってないか?」
「良いんだよ。ヒーローとはそうあるべきなのだからっ!」
ヒーローって…単なる酔っ払いだぞ?
その日、聖奈は地球で反響を纏め、俺とミランは夜になっている転移ポイントから、異世界へと帰還した。
「構わねーぜ」
流石ライル。イケメンは目立つ事にも躊躇はないねっ!
「儂もその動画?とか言うものには出てもええぞ。じゃが…今更お主と戦ってものぅ…善戦出来るとも思えぬのじゃが?」
「私も構わない。セイがどれほど強くなったのかにも興味があることだしな」
ここは久しぶりの水都の屋敷。
ちなみにこの家の名義はまだ俺のままだ。
国を興した時に、二人にあげると言ったのだが、どうせタダで住ませてもらっているのだから、このままでいいって言われて有耶無耶になっていた。
まぁ二人も税金がかからないから、その方がいい…のか?
ちなみにライルはこの後、水都店に用事があるからまた迎えにいくまで放置だ。
「リリーは爺さんに勝てたのか?」
「それがのぅ。此奴は本気で戦わないのじゃ」
「ビ、ビクトール様に…もし…何かあれば…生きていけませんっ!」
それはすでに爺さんよりリリーの方が強いって意味じゃ……
まぁ俺も以前に比べ遥かに強くなっているから、簡単には負けないと思うが。
「じゃあ、決まりだな。俺はこの後、アーメッド共王国へ武闘会の話をしに行くから、その後にでもライルを迎えにくるよ」
「それなのじゃが、儂らも参加出来んか?」
「ん?武闘会にか?でも、あれは素手だぞ?爺さんは元々素手だが、リリーは剣士だろ?」
そもそも爺さんは他人の強さに興味がなく、身体強化魔法を磨くことだけに専念していたはずだ。
「儂はお主と戦う前に、勘を取り戻したくてのぅ。リリーの事は心配無用じゃ」
「そうだ。私は最近素手で戦っているからな!だ、だ、旦那様の様になりたくて…」
誰だよコイツ。よく結婚できたな。
もう新婚じゃないんだぞっ!!
「まぁわかった。出場者枠は確保しておくよ」
この二人が戦闘狂で助かったぜ。
もし、二人のどちらかが決勝まで残ったら、ルナ教だって宣伝してもらおう。
なんなら1.2.3位をルナ教信者で独占出来るかもしれないな!!
取らぬ狸の皮算用をしながら、ミランを拾うため、一度バーランドへと転移した。
「それは名案ですね」
迎えに来たついでに、ミランに爺さん達が参加する旨を伝えた。
俺達は武闘会をしたいわけじゃなく、ルナ教を広めたいだけだからな。
「だよな!リリーの素手での強さはわからないけど、爺さんと同じくらいなら本当に三位以上を独占するかもな!」
「はい。そうなれば宣伝効果は抜群ですね」
地球では桁違いに信者の数が増える予想だ。
その内どこかの篤志家が教会でも作れば、放っておいてもバランスは保たれるだろう。
問題はこっちの信者の数なんだが、それもアーメッド共王国を巻き込めればある程度計算できる程度にはなるな。
「それで…話は変わるけど、国営と商店の方は問題ないのか?」
「はい。予定が狂う前だと私達は既に海の上です。今回の事がきっかけで、仮想自動運営を見守ることが出来ています。
今、国の方は貴族たちと国民の推薦者からなる議員によって運営されていますが、大きな問題は起きていません」
バーランド王国には選挙権なるモノが存在している。
それは国全体で行うようなモノではなく、街や村の人口比から議員枠を算定し、街や村だけの選挙を行うものだ。
簡単に言えば、村長や町長は選挙で決めて、領地を治める貴族を筆頭とした議会に出席して発言することが出来る仕組みだ。
難しいことはわからんが、聖奈曰く『異世界と地球の良いとこ取り』らしい。
責任は貴族が取り、民衆の意見は議員が取り纏める。
と言っても、この国は明らかに時代を先取りし過ぎているから、国民から不満や要望など上がることはないが。
むしろ俺を称える声ばかりがあがり、聞くに耐えない……
「次に各商店ですが、こちらも大きな問題はありません。ただ…」
「ただ?」
「目新しいモノが欲しいと……慣れというものは怖いですね」
はぁ…こっちは文明に変化が起こらない様に気を遣って輸入しているってのに……
「まぁ、飽きられたらそれまででいい。無理して商店を維持しなくちゃいけないレベルは、とっくに過ぎているからな」
「そうですね。それに飽きられても、すでに真似が出来ない品質なので、売上には影響しないでしょう」
ニーズに応え続けている地球の制作現場はすごいね……
地球に変な関心を持ち、俺達はアーメッド共王国へと転移した。