テラーノベル
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略して視コロ(?)
舜side
あの大騒動の約束から数日。
俺たちの「女児漫画で天下を獲る」作戦は、スタート直後にして最大の壁にぶち当たっていた。
……いや、山中柔太朗、人気がありすぎて1秒も話しかけられへん!!!
放課後、ネームの相談をしようと彼の教室を覗いた。
だが、そこにはすでに女子たちの分厚い人だかり。
女子A「柔太朗くん!今日の髪型も素敵だね!」
女子B「これ、お菓子作ったから食べて!」
柔「あはは、ありがとう。みんな優しいね」
微笑むだけで周囲にマイナスイオンと薔薇の幻覚を撒き散らす山中柔太朗。
おっとり優しく対応しているが、あれでは『マジカル・プリンセス』の次なる新フォームのアイデアを出し合う余裕なんて1ミリもない。
アカン。
このままじゃ原稿が進まん。
男同士の恋愛(?)の約束はともかくとして、俺はこいつの紡ぐ最強のストーリーを早く形にしたいんや……!
カリカリと、もどかしさのあまりノートの端に落書きをしていると、スマホが小さく震えた。
『柔:舜太くん、今いい?ちょっと来てほしい場所があるんだ』メッセージと共に送られてきたのは、校舎の案内図のピン。
俺は周囲を気にしながら、こっそりと指定された場所へ向かった。
柔side
学校という場所は、時に息が詰まる。
「イケメン」「王子様」……みんなが俺に貼るラベルはありがたいけれど、その期待に応えようと笑顔を作っていると、たまに自分がすり減っていくような感覚になるんだ。
でも、ここなら大丈夫。
ガタゴトと音を立てて鍵を開けたのは、旧校舎の奥の奥にある「元・演劇部の衣装・小道具倉庫」。
今は使われていないけれど、管理を任されている先生にお願いして、特別に鍵を借りたんだ。
中に入ると、埃をかぶったフリフリのドレスや、おもちゃの魔法のステッキ、中世の騎士の剣が雑然と並んでいる。
柔「ふふ……まさに俺たちのための聖域だね」
トントン、と遠慮がちなノックの後に、舜太くんが顔を出した。
舜side
案内された場所の扉を開けた瞬間、俺のオタク脳の全細胞が歓喜の悲鳴をあげた。
舜「な、なんやここ……!!」
そこは、色褪せたドレスや、チープだけど夢が詰まった魔法少女風の衣装、プラスチックの王冠が転がるワンダーランドだった。
柔「いらっしゃい、舜太くん。ここ、昔の演劇部の倉庫。ここなら誰も来ないし、何よりほら……」
柔太朗は、棚から一本のメッキが剥がれかけたおもちゃのステッキを手に取り、嬉しそうに微笑んだ。
柔「『マジプリ』の2期に出てきた『ルミナス・ワンド』に形がそっくりでしょ? 作画の参考になると思って」
舜「ほんまや……!! いや、形状のクオリティ高っ!っていうか山中くん、これ持って微笑むの無駄に絵になりすぎてて逆に腹立つわ!」
柔「あはは! 舜太くんは面白いね」
柔太朗はいつもの「王子様のスマイル」ではなく、目が細くなるくらい、子供みたいにクシャッと笑った。
……あ、待って。こいつ、いつも学校で女子に囲まれてる時、こんな笑い方してたっけ。
もっとこう、完璧で、隙のない、綺麗な笑顔だった気がする。
柔「……あのさ、舜太くん」
柔太朗はステッキを優しく棚に戻すと、パイプ椅子に腰掛け、少し照れくさそうに視線を落とした。
柔「俺ね、学校にいると、ずっと『完璧な山中柔太朗』でいなきゃいけない気がして、ちょっと疲れちゃう時があるんだ。
みんなが求めるイケメンの型に、自分をはめ込んでるみたいで」
夕暮れの光が、埃の舞う倉庫に差し込んで、彼の横顔を少し寂しげに照らす。
柔「でも……舜太くんといる時だけは、自分がかっこいいかどうかなんて、どうでもよくなるんだ。女児漫画が大好きで、ただ面白いものを一緒に作りたくて、夢中になれる。
俺の『異形のクリーチャー』みたいな絵を見て、本気でツッコんでくれるの、舜太くんだけだから」
ふっと顔を上げた柔太朗の瞳は、どこまでも澄んでいて、真っ直ぐに俺を映していた。
柔「俺、舜太くんの前だと、本当に心から笑えるんだよね。だから……ここが、俺たちの二人だけの場所にしよう」
舜side
……ずるいわ、こいつ。
そんなトーンで、そんな綺麗な目で言われたら、どんな言葉も返せへんくなるやん。
胸の奥が、ぎゅっと熱くなる。学校一のモテ男が抱える、誰にも言えない孤独。
それを、このフリフリの倉庫で、俺だけに開いてくれた。
少女漫画のヒーロー顔負けのセリフやけど、これはこいつの本物の心からの言葉だ。
舜「……しゃあないな」
俺はわざとぶっきらぼうに笑って、カバンからスケッチブックを取り出した。
舜「あんたが最高のストーリー考えてくれるんやろ? だったら俺は、世界一可愛い絵でそれに応えるだけや。この秘密基地で、天下獲る準備、始めよか」
柔「……うん!」
柔太朗は、今までで一番輝くような、等身大の笑顔を見せた。
少女誌のテッペンを目指す俺たちの旅は、この埃っぽくて、だけど最高にロマンチックな秘密基地から、本当の意味で動き出したんだ。
fin
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コメント
1件
あおいです🤍 第2話、めっちゃ良かったです…!「完璧な山中柔太朗」でいなきゃって疲れてる柔太朗くんが、舜くんの前でだけ見せる子どもみたいな笑顔、すごく胸にきました。あの埃っぽい倉庫が二人だけの秘密基地になる流れ、少女漫画の王道みたいでドキドキしました。次も楽しみにしてますね🌷