episode15 チーム名
ブライドside
日本製の布団というものは、床に敷いている心地がしない。
イギリスの敷布団なんざ翌日には腰が痛くてたまらないと言うのに、日本のは心地よい目覚めまである。
朝からほんの少し気分が上がり、普段より足取りが早くなる。
まだ2人とも寝ているため静かに布団を出て朝の身支度を整えたら昨日と同じく料理当番。
映矢輝の寝相が悪すぎて所夜がそれを押さえるように抱きしめて寝ているのだが、私は一体何を見せられているのだろう。
ある程度作り終えた段階で、所夜がムクリと起きてきた。
「あら、今日は朝パスタでしょうか、、、楽しみですねぇ、、、」
眠そうに目元を擦り、洗面台に向かう彼女に終わったら映矢輝を起こすように告げまた料理に取り掛かる。
所夜はともかく、精神年齢が低い映矢輝が好き嫌いが全くないため、思い切り好みの食材を使える。
朝から重いと言われるかもだがイギリスではこれが主流だと言えば大体黙って食う。
考えている間に盛り付けも終わり、映矢輝も起きてきた。
「ふわぁ〜、いい香りで目が覚めるの最高〜。」
映矢輝も目が取れそうなくらいに目を擦り、所夜に案内されて洗面所へと向かった。
所夜side
慣れない手つきでタオルで顔を拭い、キラキラした目がもっと大きくなった映矢輝さん。
もちろん、世間知らずのお嬢様だったので朝に顔を洗うという概念はなかったらしい。
「できたぞー!」
少しばかり大きな声でそうブライドが呼びかける
その声を聞くと、映矢輝はえーちゃんのご飯が食べられる!とウキウキしてリビングにかけて行った
一番に席に座り、背筋をピンとしてじっと待つ姿がなんとも愛おしい。
自分もブライドの手伝いをして、なるべく早く席に座る。
映矢輝side
いい匂いで目が覚めると、えーちゃんが料理をしていた。
眠い目を擦り上げて千ちゃんに案内されるがまま洗面台に向かった。
かっこいいなぁ、朝早く起きれてみんなの分の料理を振舞って
あたしもやってみたいなぁ、でもきっと2人なら、、、
「はぁ、?ガキンチョは黙って食わされときゃいいんだよ」
「えぇ、?!包丁とか、火とか危ないですよ?そもそも私料理できませんし、、!」
って言うんだろうなぁ。
うん。目に見えて想像できる。
そんな事を1人妄想していると、千ちゃんに洗面台へと案内される。
朝に顔を洗う、というのはこの国では当たり前のことらしい。
魔界にも地獄にもそんな風習はない。でも、サッパリして目が覚める。
これ程までに清々しい、心地よい朝は初めてだ。
そうしてるとえーちゃんに呼ばれた。きっとご飯ができたのだ。
洗面所にまで漂ういい匂い、、、これはきっと「ぱすた」だろう。
お腹も空いてるし、早くえーちゃんの料理も食べたいので、走ってすぐに席に着く。
食事の時は背筋を伸ばしてマナーを守って食べろって千ちゃんに言われたから、ゆう通りにして待つ。
ふとキッチンに目をやると、千ちゃんがえーちゃんのお手伝いをしていた。
そうだ、私もなにか手伝わなきゃ!
ブライドside
「えーちゃんえーちゃん!あたしにも何が出来ることない?」
キラキラした目でそう問いかける映矢輝。
正直、もうやる事はほぼ終わっている。が、この純粋無垢な瞳を否定できるほど私は強くない。
「……そうだな、じゃあこれ運んで置いてくれ。」
そう言って、ほぼほぼ使わないであろう取り皿を3枚手渡す。
嬉しそうに皿を机に持っていく姿に所夜が悶えているのは気のせいだと信じたい。
いただきます
いただきまーす。
いただきます!
朝飯を食べ終わり、太陽がすっかり登りきった頃。
映矢輝はちゃくちゃくと、地獄へ帰る支度を進めていた。
所夜は何泊して行ってもいいといったが「パパを心配させちゃうといけないから」と言って今日で帰るらしい。
ブライドは内心複雑だった。ここで返してしまったらまた敵対の関係になり、映矢輝は父親に支配される日々が続いてしまう。
だが、映矢輝の気持ちを無下にすることは、彼女にはどうしても出来なかった。
そして数十分後、洗濯しておいて乾いた服を着せ、大きな角にはリボンを巻く。
満足気に魔導書が入ったカバンをかけ、可愛らしいローファーを時間をかけてはく。
玄関の姿見を何度も確認し、いつものきらびやかな笑顔で服を揺らす。
先に口を開いたのは、所夜だった。
「じゃあ、気をつけてくださいね。家には何時でも来てください。大歓迎です。」
映矢輝は嬉しそうに瞳を輝かせ、笑顔で答えた
「うん!じゃあまたね!行ってきます!!」
ブライドは無意識に手を伸ばし、その手を映矢輝の頭に被せて左右に揺らした。
隣で見ていた所夜は口を抑えて目を見開かせている。
「気ぃつけろよ。」
「うん!ありがとう!」
数分後
「あーあ、映矢輝さん行っちゃいましたね。」
ソファに座った所夜は足を伸ばしてつまらなさそうに小さく呟く。
「なんか、一気に静まり返ったな。」
ブライドも小さく呟き返す。
映矢輝がいたのはたった1日の事。でも、1日で3人はかなり親密になってしまった。心のどこか奥深くで、2人がいつしか寂しいと思うのは時間の問題だった。
眉を八の字に下げるブライドに所夜は問いかける。
「…………寂しいですか?」
「……分からねぇな。この静かな空間がたった1日で物足りないと思うとは思わなかったよ。」
「それを、人は寂しいって言うんです。」
ブライドは困惑した。自分が寂しいという感情を持っている事の違和感や、そもそもこの感覚が寂しさなのかという疑問、更には変なむず痒さで映矢輝を引き止めれば良かったとほんの少し後悔する。
「それほど、映矢輝さんといると楽しかったんですね。貴方は。」
「はぁ!?」
「私があいつといて楽しい……?んなわけねぇだろ。あいつはただのガキ。ましてや敵だ。んなわけ、んなわけ……!」
ぶわっと頬が熱くなる。きっとこれは、暖房が効きすぎているせいだ。
所夜side
私がそう指摘した瞬間、一気に頬を赤らめるブライド。
照れ方が分かりやすすぎです。貴方って人は、、、どこまでツンデレなんですか?
「映矢輝さんがいなくて寂しいと思うなら、映矢輝さんといた時間が紛れもなく楽しかったという証拠です。それに、頬が尋常じゃないほど赤いです。照れすぎですよ。隠せてません。まさかこのような形で貴方の感情が芽生えるとは、、、想定外ですね。」
照れてねぇ!と抗議する私より幾分か身長が高い彼女の頭をそっと撫でる。
あ、いいこと思いつきました。私ってば天才なのでは!?
「そうです!映矢輝さんが戻ってきた時、映矢輝さんの居場所を作れるために我々のチーム名を決めましょう!」
「これでも私達、ウイルスを排除するお仕事をしているでしょう?その一環としてなら、チーム名を決めることはオブサーバー側から認められているんです!」
まだほんのり頬が赤い彼女にそう提案すると、彼女は意外な言葉を発した。
「そうだな。だが仮に本当にチーム名を決めるなら名は私が決める。お前ネーミングセンス終わってるからな。」
私そんなネーミングセンス悪いですっけ!?そんなことないですよ!!
まあいいと心を切り替え出来れば早めに名を決めるよう告げて単独の任務に向かう準備を始めることにした。
ブライドも任務が入っているらしいが、朝早起きしていたブライドはその時に準備は済ませているのだとか。
先に行くぞ、と告げられ、慌てて見送る。
「はぁ、行動力凄いですね。にしても、そんなネーミングセンス悪いですか?私。」
あれ?準備をしている間に机の上にメモの端切れが。
昨日出たゴミの1部だろうかと拾い上げると、そこにはブライドの筆跡で何かが書いてあった。
あの子の字は達筆かつ筆記体のためひと目でわかる。
どれどれ、何が書いてあるのか?
……!
思わず目を見開いてしまった。
「全く、早めにとは言いましたが、ここまで早くなくていいですのに。」
どうやら、私が準備中の際に書いておいたものらしい。
チーム名
「アラムリーブス」
「全く、キザな人です。」
アラムリーブス
英語で「紅葉」を意味する
紅葉の花言葉は
美しい変化
大切な思い出
などがあるそうです。
最後までお疲れ様でした!
ずっと悩んでいたチーム名!とうとう決めることが出来ました!
ちなみに、紅葉の花言葉「美しい変化」の由来は
紅葉の葉の色が緑、黄色、オレンジ、赤、と変わっていく様からだそうです。(諸説あり)
ブライドの感情の変化にピッタリじゃん!と思い紅葉にしました!
あと、英語の響きが一番良かったから……というのは心に秘めておきます。
ちなみに、落花生の花言葉は、「なかよし」らしいです。
一応言いますが
中の人はそんな花言葉は意識せずに名ずけました。ただこんな話がしたかっただけです。
あと投稿期間空いてしまってほんとうに申し訳ありません!次回もぜひ待っててくれると嬉しいです!
コメント
1件
新作待ってました!🎉✨相変わらずキュンとさせられるシーン満載ですね✨パパしてるの最高です✨