Runa 様からのご依頼
太宰治(文豪ストレイドッグス)×雨の日の出来事
start
「あちゃー…」
とある日の仕事帰り。残っていた事務仕事をやっと終えて会社を出ると、外は土砂降りの雨が降っていた。
お察しの通り傘は持っていない。今日の天気予報は一日晴れだった筈だ。会社から社員寮は地味に遠くて、全速力で走って帰ってもびしょ濡れは免れない。かと云ってタクシーを呼べる程のお金の余裕もない。
(少し待ってみるかぁ)
天気予報が晴れだったという事は之はきっと通り雨。数分間激しく降って、そのうち何事も無かったかのように止むだろう。
止まない…。あれから五分が経過したが、止む気配がない。そろそろお腹も空いたし、走るしかないか?
そんな風に思って俯いていると、目の前でぴちゃりと革靴が止まった。
「!、太宰さん」
「やあ、〇〇」
其の正体は同じ職場で働く上司、太宰治だった。何時ものように定時でさっさと帰ってしまった彼が如何して此処に…。
「君、今日残業だったろう?傘も持ってきていない様子だったし、今頃ビルから出れずに困ってるのでは、と思ってね」
もう時間も遅いし帰るよ、と手を引かれる。なんでそこまで判ったのか、判ったからって態々向かいに来てくれるなんて。少し期待してしまう自分を見て見ぬふりして、太宰さんの傘の中に入った。
「というか何で傘一つなんですか」
「うーん、内緒♡」
「は、はあ…」
本当に此の人は何を考えているのか判らない。まあでも今回は助けられたわけだし、とやかく言う心算も無いのだけれど。
「ほら、ちゃんと寄って。濡れてしまうよ」
「!」
と、肩を掴まれて引き寄せられる。思わず顔を上げると直ぐそこに太宰さんの端正な顔があって、顔に熱が集まった。
「おやおや、初心だねぇ」
クスクスと笑われても、何も云い返す事は出来なかった。
「ありがとうございました、助かりました」
社員寮の私の部屋の前まで送ってもらったので、頭を下げて礼を云う。
「良いんだよ、こちらこそありがとう」
「?、何がですか」
「うーん?」
太宰さんの言葉に首を傾げると、おもむろに私に近付く。然して私の少し濡れた髪を指先で遊んだ。
「君と2人きりで会えたからね。赤面も見れたし」
「っ、!」
すっかり引いていた顔の熱が沸騰したように帰ってくるのを感じる。太宰さんはくつりと喉を鳴らすと、『たまには雨も良いね』なんて云って背を向けた。
「じゃあね、風邪を引かないようにね」
そう片手を上げる太宰さんに暫く火照りが治まらなかったのはまた別のお話。
コメント
18件
最高でしたっ!最初から最後まで本当に尊くて、きゅんきゅんしちゃいました......書いて下さってありがとうございますっ!
流石太宰さんんんん!! これを予想しその先の事も予想しているという…😇‼️ 本当に天才ですか天才ですよね。 相合傘ッッ!!肩を寄せ合うッッ!!顔が近いッッ!!最後の言葉ッッ!!どれも最高すぎますッッ!!🤦🏻♀️🤦🏻♀️ 雨の日もいいですね好きになりそうです((