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ピピピッ…ピピピッ…
夏真っ只中。
静かな部屋に木霊するアラーム音。
それは何回鳴ったか分からないが、舜太は布団もかけずに眠っていた。
ピピピッ…ピピピッ…
「……んん」
舜太は勢いよくスマホに手をかけアラームを止める。
はっきりと見える時刻昼12:00分。
舜太は珍しく、すぐに覚醒し起き上がった。
「…あれ、今日……じゅうちゃん」
この日は柔太朗とプライベートで出かける予定がある日であり、12:30に待ち合わせをしていた。
「……夢……?」
舜太は違和感に気づいた。
スマホの時刻を見ても同じ日同じ時間。
微かに残る記憶。
「…あ、時間……!」
モヤモヤしたまま身支度をし、髪のセットも気にせず舜太は家を出た。
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「しゅんちゃん、おはよー。少し遅刻だよ」
待ち合わせ場所に柔太朗はいた。
柔太朗は少し寂しそうな表情で、スマホの画面を指さす。
時刻は12:35分を指していた。
見た事ある光景に舜太は目を擦った。
「……じゅうちゃんごめん」
「……?そんなに落ち込まなくて大丈夫。対してすぎてないしね。じゃ……行こっか」
最近出来たカフェに行ってみようかと、2人は話をしていた。
「……あそこのカフェ、確かこの先のルートから右回る方向でも行けたやんな……?」
舜太は、スマホで地図を出し、指さす。
「え?確か行けるはずだけど……どうしたの?」
柔太朗は少し不思議そうに舜太を覗く。
「いや、なんとなく……?」
「ん?」
ニャー
木陰から猫の鳴き声が。
それは、2人の前を横切って行った。
「……猫……。これ、この前、も」
野良猫の割には毛並みが揃った黒猫。
「……もしかして、」
舜太は柔太朗をじっと見つめる。
「…どうしたの?しゅんちゃん?俺の顔になんかついてる?」
「……っあ、いや、大丈夫……行こっか」
明らかにオドオドしている舜太。
そんな舜太を横目に柔太朗は横断歩道の前に立った。
いつもより長く感じる赤信号。
2人を刺すような太陽の光。
そして青に変わる信号。
2人は歩き出した。
「……待って!!」
咄嗟に柔太朗の手を掴み、止める。
「え、どうしたの」
横断歩道に差し掛かる手前で2人は立ち止まった。
「……やっぱり、さ!今日は遠回りしていかへん?ほら、じゅうちゃんに話したいこといっ~ぱいあるし!」
舜太は横断歩道に差し掛かる時に、嫌な記憶が頭をよぎった。
それは夢なのかどうかもわからないが、柔太朗がトラックにひかれる、そんな記憶。
「それはカフェについてからでも話せるっ……てしゅんちゃんちょっと」
舜太は思いきり柔太朗の手を引き逆方向を歩く。
力の加減も分からないまま人をかき分け歩いていく。
このまま前に進んだら、嫌な予感がした。
10分ほど歩き回り、やっと気持ちも落ち着いた舜太。
「じゅうちゃんごめん。俺、少し勘違いしてたみたいやわ」
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工事中のビルの手前で止まった2人は少し息が上がっていた。
「……だいぶ遠くなったな、どうしよか。この辺近くのカフェ探そか?」
柔太朗は舜太の話を静かに聞いていた。
「……行きたかったよなぁ、あそこのカフェ。美味しそうやったもん」
「……行きたかったね」
ドンッ
そう言って柔太朗は舜太を押し飛ばした。
「いった……!!え、何すんねんじゅうちゃ、」
突然のことに声を荒らげたのも束の間、上から大量の鉄柱が落ちてきたのだ。
大きな音を立ててそれは、舜太の目の前に降りかかった。
「……は」
落ちてきたそれは、舜太の足元スレスレにおちてきていて、運良く舜太は助かった。
「……じゅう、ちゃん」
我に帰った舜太は柔太朗を探すと、柔太朗は鉄柱の下敷きになっていた。
必死に助けようにも、鉄柱が重するためどかそうにも難しく、運悪く鉄柱の数本は柔太朗に刺さっているようだった。
「ねぇ、じゅうちゃん!どうして……!今助ける、からッ……」
どれだけ手が痛くなっても気にせず舜太は鉄柱に手をかけた。
「……」
柔太朗は少し微笑んでいた。