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ゆうき あきや
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#心理描写重視
コメント
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第197話、読み終えました!もう卒業式だっていうのに、500人ものSPと狙撃手が配備されてる光景が完全にサミット会場で笑っちゃいました😂 それなのにアキヤさんはOD色シャツで現れて「迷彩効果」とか言い出すし、小春ちゃんのパイプ椅子スマッシュが炸裂する瞬間、最高でした!世界の富豪たちが数兆円送金してる横で玄米おにぎり食べてる姿、もうアキヤさんらしさ全開で大好きです。賑やかで温かい家族に囲まれた卒業式、本当に素敵な話でした🌷
第197話:黒服に囲まれた卒業式。主のOD色スーツ
前日に世界中の富を牛耳るVIPたちから叩きつけられた、総額一兆円という規格外の胡蝶蘭や青いバラのジャングル。
その花の海に埋もれた十勝の限界集落の小さな高校で、本日、いよいよ小春ちゃんたちの『卒業式』が挙行されようとしていた。
雲一つない抜けるような春の青空。
だが、学校の正門前に広がる光景は、感動的な旅立ちの朝とは完全にかけ離れた、異様すぎる空気に包まれていた。
「……第三セクター、クリア。不審な動きはない」
「了解。狙撃班、屋上の配置についた。対象(卒業生)の安全を確保する」
校門から体育館へと続く道には、お揃いの黒いスーツと漆黒のサングラス、そして耳に無線機のイヤホンを装着した、屈強な『黒服のSP(セキュリティ・ポリス)』がズラリと立ち並んでいたのだ。
その数、およそ五百人。
全員が特殊部隊出身のプロフェッショナルであり、彼らが放つ圧倒的な威圧感によって、学校の敷地内はさながら主要国首脳会議(サミット)の厳戒態勢会場と化していた。
黒塗りの防弾SUVが校庭を囲み、正門には空港にあるような金属探知機のゲートまで設置されている。
「ひ、ひぇぇぇ……! わしの学校が、テロリストの標的みたいになってまったべさ……!」
昨日、花の海で溺れて気絶した教頭先生が、金属探知機を通る際にベルトのバックルで警告音を鳴らされ、屈強なSPに両脇を抱えられて尋問テントへと連行されていった。
そんな完全封鎖されたサミット会場(学校)の入り口に、俺――アキヤは堂々たる足取りで到着した。
本日の俺は、いつものOD(オリーブドラブ)色の作業服ではない。
小春ちゃんの「雇用主」であり、同時に事実上の「保護者代理」として出席するため、クローゼットの奥から引っ張り出してきた漆黒のテーラードスーツをビシッと着こなしていた。
元・陸上自衛隊需品科で鍛え上げられた無駄のない体躯に、細身のブラックスーツが完璧にフィットしている。
我ながら、フォーマルな陣地への潜入装備としては及第点だろう。
「お兄さん! 来てくれてありがとうございま……って、ちょっと待ってください!」
制服の胸に卒業生を示すコサージュをつけた小春ちゃんが、小走りで駆け寄ってきた。
そして、俺のスーツの胸元をジッと見て、信じられないものを見るように目を丸くした。
「スーツはいいんです! スーツはすっごくカッコいいんですけど……なんでインナーのワイシャツが『OD色(自衛隊グリーン)』なんですか!? 普通そこは白でしょうが!!」
俺の漆黒のスーツの下には、純白のドレスシャツではなく、見事なまでに深緑色をした『OD色の特注シャツ』が輝いていた。
そのやり取りが、ジンバルに固定されたスマホの生配信を通じて全世界へと流れた瞬間、五千万人のリスナーが接続するチャット欄が人類史上最大級の爆発を起こした。
ピコーン! ピコーン! ピコーン!
『(ドバイの石油王からの¥50,000MeTubeギフト)無限連発』
『”Happy Graduation Day, Koharu!! The security level is perfect! I hired the world’s top PMC (Private Military Company) to protect your ceremony! I am sending 500 billion yen for their operational costs!“(卒業おめでとう、小春!! セキュリティレベルは完璧だ! 君の式典を守るために世界最高の民間軍事会社を雇い入れたぞ! 彼らの作戦行動資金として五千億円を送金しよう!)』
『(スイスの銀行家からの¥50,000MeTubeギフト)無限連発』
『”A graduation ceremony is a gathering of supreme assets! I have positioned snipers on the roof to eliminate any risks! I bid 500 billion yen to ensure flawless execution!“(卒業式とは至高の資産の集まりだ! いかなるリスクも排除するため、屋上に狙撃手を配置した! 完璧な遂行を保証するために五千億円を提示するぞ!)』
『(ハリウッド女優シャーロットからの$5,000MeTubeギフト)無限連発』
『”Nooooo!! Akiya looks too sexy in that suit!! The OD shirt gap is driving me crazy!! I’m transferring 800 billion yen to buy exclusive rights to that outfit!!!“(いやああああ!! スーツ姿のアキヤがセクシーすぎるわ!! OD色シャツとのギャップで気が狂いそう!! その衣装の独占権を買い取るために八千億円を送金するわ!!!)』
総額数兆円規模の電子マネー(赤スパ)が、祝福と狂気の極彩色弾幕となって画面を完全に埋め尽くした。
国家予算レベルの警備費用が乱れ飛び、連行されていた教頭先生が「ひ、ひぇぇぇ……! 警備費に数兆円……! わしの退職金がチリガミに見えるべさ……!」と呟き、二日連続となる気絶を果たしている。
だが。
俺――アキヤは、数兆円の祝儀と、目の前でOD色シャツに顔を引きつらせている美少女を前にしても、ミリ単位すら動じることはなかった。
黒服のSPたちが警戒の目を光らせる中、俺はおもむろに内ポケットから薄型の特製タッパーを取り出した。
中に入っているのは、完璧な水加減でストイックに炊き上げられた『玄米の俵おにぎり』と、自家製の『大豆ミートと十勝産黒豆の祝祭風煮込み』である。
俺は、世界中の富豪たちの絶叫と、厳戒態勢のピリピリとした空気に包まれながら、一切の感情を排した元・社畜の無表情で、大豆ミートを玄米おにぎりの上に乗せ、淡々と咀嚼し始めた。
バリッ、ゴリッ、モグモグ……。
(……ふむ。卒業というハレの日を象徴する黒豆の植物性タンパク質と、玄米の圧倒的な食物繊維。式典という名の長時間の精神的拘束(防衛戦)において、己の自律神経を極限まで研ぎ澄ます究極の兵站食だな)
己の肉体という名のロジスティクスを完璧に維持しながら、俺は水筒の冷たいほうじ茶で喉を潤すと、五千万人を突破して世界の民間軍事会社の株価を急上昇させているカメラと、目の前の小春ちゃんにキリッとした真顔を向けた。
いつもの『限界言い訳タイム』の発動である。
「小春ちゃん、本日の任務(卒業)に向けた最終確認ご苦労。そして画面の向こうで、ただの式典の会場設営に巨額の資本を投下してサミットだと騒いでいる皆さまも、全員冷静になってください」
『出たァァァァァ!!!』
『軍事レベルのSPとOD色スーツを前にしても絶対にブレない男!!!』
『主の限界言い訳タイム・黒服とOD色完全スルー編ww』
『さあ、この完全にバグったテロ対策本部をどうやって需品科の業務にするつもりだww』
俺は淀みない口調で、極めてフラットに言い放った。
「これは国家元首の警護でも、テロ対策のサミット会場でもありません。彼ら黒服の集団は、昨日搬入された一兆円規模の胡蝶蘭(高密度バイオマス防風林)が強風によって飛散し、近隣住民に物理的被害を与えるのを防ぐための『インフラ監視員』および『交通誘導の警備スタッフ』に過ぎません。金属探知機も、式典に持ち込まれる不要な手荷物(デッド・ウェイト)を削減し、会場内の動線を最適化するためのロジスティクス管理の一環です。そして私がOD色のシャツを着用しているのは、式典という非日常空間において、突発的な事態(醤油のハネや泥汚れ)が発生した際の『視認性低下(カモフラージュ)』を目的とした、極めて合理的な『リスクヘッジ』です。ええ、すべては冷徹な『地域インフラの安全管理』と『兵站における迷彩効果の応用』ですね。私が大豆ミートを噛み締めているのも、式典中の空腹による集中力低下を防ぎ、保護者としての威厳(ホメオスタシス)を維持するための、需品科としての徹底した『事前カロリーローディング訓練』です」
「んなわけあるかあああ!!!」
ガゴォォォォォンッ!!!!
背後から、分厚い鉄骨を叩き割ったような凄まじい破砕音が響き渡った。
小春ちゃんが、来賓席用に用意されていた『パイプ椅子(高剛性スチールパイプ・折りたたみ鈍器仕様、重量約三キロ)』を両手で大上段に構え、俺の背中に向かってパーフェクトなフルスイングを見舞ったのだ。
三キロの硬質な鋼鉄パイプが肉体に直撃した、鈍くも大地を揺るがすような恐ろしい大爆音が、十勝の春の空へと虚しく響き渡る。
「ただの交通誘導で、屋上にスナイパーライフル構えた人が這いつくばってるわけないでしょうが!! どう見たって、私が無事に卒業できるようにって、金銭感覚のバグったおじさんたちが暴走して世界最強の軍隊を送り込んできただけでしょうが!! あとお祝いの席でインナーにOD色着てくる変人がどこにいるんですか!! 私の感動的な卒業式を、冷たい交通誘導とか迷彩効果とかいうお役所言葉で粉砕するんじゃないわよ!!」
『小春ちゃんのキレキレ特大パイプ椅子スマッシュ炸裂www(音が完全にプロレスww)』
『交通誘導の警備スタッフ(ただの世界最強の民間軍事会社)』
『汚れを目立たせない迷彩効果(卒業式に絶対着てきちゃダメな色)』
『適応力バグおじさん、ついに数百人のSPと狙撃手をインフラ監視員に分類しやがったww』
『言い訳が理不尽すぎて、卒業のエモい空気が一瞬でへし折られたわww今日も最高!!』
俺の理不尽極まりない軍事的な限界言い訳と、小春ちゃんの容赦ないパイプ椅子ツッコミに、五千万人の視聴者たちは感動の涙から一転、大爆笑の渦へと叩き落とされた。
スマホの画面越しに、古民家で留守番をしている純白の神獣シロ様が、呆れたようにオッドアイの瞳を細めて「ミャウ(相変わらずパイプ椅子で叩かれても直らない鈍感下僕ね)」と喉を鳴らしているのが見えた。
巨大ヒグマも「グゥ〜♪」と画面の向こうから卒業を祝福するようなイビキをかいている。
どんなに莫大な金が動こうとも、小春ちゃんにとっては、このカオスで賑やかな家族の存在こそが、最高の卒業祝いなのだ。
「……まぁ、理由はどうあれ。我が陣地の最重要防衛拠点(学校)が完璧な警備網で保護され、君のハレの日に向けたロジスティクスが完全な形で維持されたのなら、作戦としては完全勝利だ」
俺はパイプ椅子の凄まじい衝撃で痺れた背中をさすりながら苦笑し、春の風を感じながら、タッパーの玄米おにぎりと大豆ミートをゆっくりと噛み締めた。
激務に潰されて逃げ込んできた、この限界集落。
最初は一人で静かに暮らすための隠れ家(シェルター)だったはずが、今では世界一美しいオッドアイの神獣と、数兆円の軍隊を派遣してくる大富豪たち、そしてパイプ椅子を振りかぶる専属アシスタントに囲まれた、世界一バグっていて温かい『絶対の聖域』になってしまった。
神獣の魅せる圧倒的な尊さと、元需品科のブレない大豆ミート咀嚼、および警備システムの限界屁理屈。
春の陽射しが降り注ぐ限界集落の卒業式は、鈍器のような椅子の快音と大爆笑に包まれながら、さらに強固になった絆と共に、新しい日常という名の未来へ向かって、どこまでも力強く走り出していくのだった。