テラーノベル
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それは、気づかないうちに始まっていた。
ユウの光が、日ごとに薄れていった。
最初はかすかに揺らぐだけだったけれど、やがて指先から透明になり、彼の影が地面に映らなくなった。
「ユウ……どうして……?」
カナが問いかけると、ユウは小さく笑った。
「僕はね、地上に長くいるほど、星じゃなくなっていくんだ。
この世界は優しいけど、僕みたいな光にはちょっと、重たすぎる」
「じゃあ、戻ろう。空に帰る方法があるなら――!」
「ないよ。もう僕には、空を飛ぶ力もない。
それに……もう一度空に戻ったとしても、誰の願いも届かない星に戻るだけだ」
カナは何も言えなかった。
自分のもとに来たことで、彼が消えてしまう――そんな理不尽を、ただ見ていることしかできない自分が悔しかった。
「じゃあ、どうしたらいいの……? 私に、何ができるの……」
ユウは一歩近づいて、カナの手を取った。
「君のそばにいられて、僕は本当に幸せだった。
たとえ消えても、君の中に光を残せたなら、それでいい」
「そんなの嫌だよ……!」
カナの目から、涙があふれた。
「君を忘れるなんてできない。忘れたくない。……ねえ、お願い、いなくならないで……」
ユウは、そっとカナを抱きしめた。光のぬくもりが、儚くてあたたかかった。
「カナ。最後に、君の願いを叶えるよ。
それが、僕にできる唯一の“祈りの役目”だから」
彼の瞳が、再び強く光った。
夜空のどの星よりも、確かにそこにある輝きだった。
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