敵は拳ほどのサイズ。
狙いは定まりにくいが、雑魚には違いない。この武器で一撃で倒せるだろうと、俺は楽天的だった。だが、それは大きな間違いだった。
ヒメサザエはいきなり巨大化。
犬や猫サイズほどになり、棘を伸ばした。……っぶねッ! 串刺しになるところだった。しかし、俺は頬に掠り傷を負った。痛ぁ!
「ヒールです!!」
スコルの支援スキルが入り、俺の頬は治癒した。ふぅ、聖女エルフがいて良かったぁ。回復アイテムなんぞないし、ヒールがなかったら死んでいたな。
「おいおい、あのサザエ、バケモンだぞ」
「み、みたいですね……」
でも回避できたって事は、俺のレベルも上がっているようだな。いや、ステータスか。島のレベルが上がると同時に俺の能力も上がる。
だから倒せないわけではないはず。
「スコル、お前はそのまま支援を続けてくれ! 俺はヒメサザエを仕留める」
「了解ですっ」
俺は、ゲイルチュールのアイテムボックスから『石』を出した。これで『石投げ』してやる。つまり、遠距離物理攻撃ってわけだ。
「――てやッ!!」
命中率を上げるため、俺はいっぺん五個を投げた。内、一個が命中。ヒメザサエを怯ませた。今だあああっ!!
それでも棘攻撃が迫って、俺の横腹や膝を掠めていく。スコルのヒールで回復するから、俺は気にせず突撃し、ゲイルチュールの“ピック”を落とす。
ガンッと激しい音と共にクリティカルヒット。武器そのものの攻撃力は低いが、俺自身のステータスが反映され、高ダメージを与えた。
粉々に散っていくヒメサザエは、食糧アイテム『サザエ×3』をドロップ。俺は直ぐに回収を完了させた。
「おぉ~! ラスティさん、さすがですぅ!」
後方支援してくれていたスコルが駆け寄ってくるなり、俺に飛びついてくる。
「うわっ! スコル!」
「だって、カッコ良かったんですもん!」
「……わ、わははは! どうだ、これが俺の実力だ」
や、柔らかい。スコルの身体が密着していろいろ当たっている。いや、でもそれよりも、一緒に狩りができてもっと嬉しかった。やっぱり、モンスターを倒せたときの達成感は良いものだ。これはやめられない。
この調子で他のヒメサザエも討伐していこうと、俺は考えた。だけど、まだ動けそうにないな。疲労感とスコルがぎゅうぎゅう抱きついてくるので、身動きか出来なかった。……まあ、しばらくこのままでいいか。
俺は女の子に抱きつかれるなんて、これが初めてだった。
「ラスティさん、今日はバーベキューですねっ」
「いいな、それ。よし、もっと食材をゲットして――」
突如、ざぶんと高い波が襲ってきた。
ん……なんだ、気配を感じる。
海の向こうから……誰か来る?
「……! ラスティさん、あれ!」
「スコルは俺の後ろにいるんだ。絶対に離れるな」
「……はい」
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