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「うわあああぁぁぁん!! ママぁ、こわいよぉぉ!!」
午後の外来診察室に、割れんばかりの男の子の泣き声が響き渡った。
「あ、あの……すみません! この子、病院が苦手で……!」
恐縮しきりの母親が抱っこする3歳の男の子は、ある一点を指差しながら必死に顔を背けて泣き叫んでいる。
その指差す先にいたのは——白衣を着て、電子カルテのモニター前に座っている仁人だった。
仁人は何一つ悪いことはしていない。
ただ、患者のカルテを真剣な眼差しで確認し、問診票の項目を一つひとつ精査していただけなのだ。
しかし、そのあまりにも真剣すぎる眼差し、キリッとしすぎた眉間による真顔が、幼い子どもにとっては完全に『激怒している怪獣』に見えてしまったらしい。
「うわぁぁぁぁぁん!!こわいぃぃ!!!」
「すみません、すみません…!!ほら、泣き止んで、?」
「…い、え。お気になさらず」
「ふ、ふふ……っ、くくっ……!!」
となりで問診を担当していた勇斗が、下を向いて肩を激しく揺らし始めた。
「……何笑ってんの、勇斗」
仁人が声のトーンを落として睨みつけると、勇斗はついに耐えきれなくなって大爆笑した。
「はははははっ!! 仁人! お前顔!! 顔がマジで怖すぎるんだって!!」
「笑うな! 僕は普通にカルテ見てるだけでしょ!!」
「それが怖ぇんだよ!! 眉間にシワ寄りすぎて鬼のお面みたいになってんぞ!!」
「鬼って言うな!!」
勇斗がパイプ椅子から転げ落ちそうになりながら爆笑し、仁人が必死に言い返すも、その言い返す時の真剣な顔がさらに怖かったらしく、男の子は「ひぃぃぃん!こわいぃぃぃ!」と泣き声をボリュームアップさせた。
「あ〜あ、完全にトラウマじゃん」
処置カートを押しながら通りかかった太智が、ニッシシと笑いながらアイスの棒を咥えて覗き込んでくる。
「吉田先生、ちょっとはニコッとしなよ〜。子ども相手なんやから」
「……っ、こうですか」
仁人は口角をギュッと引き上げ、精いっぱいの『笑顔』を作ってみせた。
しかし、引き攣った目元と無理やり作られた口元のスマイルは、優しさとは程遠い『企み顔の悪役』そのものだった。
「うぎゃあああぁぁぁぁぁん!!!」
「逆効果!! 逆効果だから仁人やめて!! ひー、腹痛い!!」
「笑って泣かれるのはどうすればいい!?」
パニックになる仁人を横目に、勇斗は白衣の袖をぐっと捲り上げると、膝をついて男の子と目線を合わせた。
「ほら、大丈夫だぞ〜! あのお兄さんは顔がちょっと厳しいだけで、本当はぜんぜん怖くないからね!」
勇斗が目いっぱい目尻を下げて優しく話しかけると、男の子はひっくひっくとしゃくりあげながらも、すーっと泣きやみ始めた。
「……よしよし、偉いぞ〜。じゃあお胸の音ぽんぽんしようね」
一瞬で子どもの心を掴んで診察を進める勇斗。
その完璧すぎる手際と、自分の表情の格差に、仁人は自分のデスクでショックを受けたようにポカンと立ち尽くしていた。
そこへ、お茶を持ってきた柔太朗が仁人の肩をポンと優しく叩いた。
「……じんちゃんドンマイ。次はアンパンマンのシールでも貼っときな」
「……シールで解決する問題なの、これ……?するんだったらいくらでも貼るわ」
びび
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#山中柔太朗
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