テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
山に囲まれた森の中。
冬の澄んだ空気と、うっすら雪が積もる地面が出迎えてくれる。
すちの丁寧な運転で無事に現地へ到着。
エンジンを切った瞬間、
「ついたーーー!!」というこさめの叫びが響き渡る。
「やばっ!写真と一緒!ていうかそれ以上!?ログハウスとテントがあるーっ!」
「こさめ、静かにしろって……でも、テンション上がるのはわかる」
「あー、寒い。でも雪がサラサラしてる……」
「なつ、すぐ雪に埋まるから気をつけろよ」
「わぁ……本当に自然の中って感じ。焚き火、楽しみ……」
「みんな、荷物忘れてないよね?俺がフロント行ってくるから、代表者だけ来て」
受付棟でチェックインする すちとらん。
他のメンバーは入口前で写真を撮ったり、雪に触ったりしている。
スタッフの案内で敷地内へ。
「こちらが6名様用のラグジュアリーテントです。全室暖房完備、ベッド付き、薪ストーブもありますよ」
「わ……すご……ふかふかのベッド……」
「夜は冷えるからな。……しっかり暖めないとね」
「お、お前、今なんか意味深なこと言っただろ……」
「ほっとけ、あいつらはそういう生き物だ」
「こっちが食事棟!?キッチンめっちゃ広くない!?あとで鍋しよ鍋!」
「ちゃんと分担するならな。」
焚き火スペースや貸し切り露天風呂も案内され、全員大興奮であった。
___
日が沈みはじめ、森が静けさに包まれていく中。
温かい光が灯る食事棟で、6人が夕食の支度に取り掛かっていた。
「こさめシェフのおな〜べ大会〜!みんな下ごしらえよろしくねー!」
「お前が一番テンション高いんだよ。ちゃんと切るもん決めろ」
「えー、じゃあ俺は…人参の型抜き担当♡」
「そこ一番いらねぇだろ」
すちとみことは、食材を丁寧に水で洗っていた。
みことはピーラーでじゃがいもの皮をむきながら、ほんのり笑顔。
「なんか、こうやって並んで料理するのって、新鮮だね」
「うん。いつも俺が勝手にキッチン立つからね。でも今日は特別な夜だから」
「特別……?」
「みことがみんなと楽しんでる顔が見られるの、俺にとっては結構特別なんだよ」
不意打ちの甘さに、みことは顔を赤らめて手を止めてしまった。
一方、ひまなつといるまは包丁を握りながら、無言の空気を漂わせていた。
「……お前、大根切るの遅すぎ」
「う、うっさいな!そういうの向いてないんだよ俺!」
「だったら火の番でもしてろ。薪足りてねぇぞ」
むっとした顔で外に出ていくひまなつを見ながら、いるまは口元をゆるめた。
こさめが型抜き人参をハートにして遊んでいると、らんがため息をつきつつも一つ取って、鍋の中へ。
「……ほら、落ちないように沈めるぞ」
「えっ、入れてくれんの!?らんくんやさし〜!」
「……うるせぇ」
全員が動きつつ、ついに大鍋で煮込みがスタート。
テーブルにはチーズフォンデュ、ホットワインやココア、あったかいパンも並ぶ。
「おいしそう……!」
「これって、ほぼアウトドア居酒屋じゃん…!」
「かんせーい!!」
「腹こわすなよ」
「夜は冷えるから、しっかり食ってあったまれ」
6人が囲む、冬のアウトドアダイニング。
焚き火がぱちぱちとはぜる音と、みんなの笑い声が混じって、夜がゆっくり始まった。
___
夕食を終えた6人は、焚き火台を囲んでそれぞれの椅子に腰掛けていた。
パチパチと薪が燃える音。吐く息は白く、手にはホットココアやカフェオレ。
「ふー!あったまるぅ〜!焚き火ってキャンプ感あるよね!」
「まぁキャンプみたいなもんだしな。寒くねぇか?」
「らんくんの隣だから大丈夫〜♡」
「……」
らんは無言で、こさめの肩に自分の上着をかける。
ひまなつはマシュマロを串に刺し、火で炙っていた。
その横で、いるまが木の枝を燃やして遊んでいる。
「焦がしすぎ注意って言ったじゃん……!」
「いや、こうやってカリカリのが美味いんだよ」
「カリカリすぎたら炭なんだよそれは!」
「うるせぇな」
文句を言いつつも、焦がしたマシュマロをそっと自分の口に入れるひまなつにいるまは目を細めた。
一方、すちはみことの指先をそっと握っていた。
冷えていた手が、じんわりと温かくなっていく。
「みこと、寒くない?」
「うん……すちの手、あったかい……」
「焚き火よりみことの笑顔のほうがあったかい」
みことは顔を真っ赤にして、手を口元に当てる。
「またそうやって……!」
「だって、今日はお外デートの延長だし?」
「……しかし、こうやってみんなで焚き火囲んでるの、ちょっと不思議だな」
「だね。あの頃は、ただのヤンチャ仲間だったのに」
「今じゃ…全員カップルとか、恋バナ耐性つきすぎだろ」
「なっちゃんって恋愛相談って感じしないのに、意外と…ね?」
「なっ…い、意外とか言うな…!」
「じゃあさ、カップルの中で一番甘いのってどこかな〜?」
「すちとみことだろ。間違いなく」
「え、そう?」
「間違いない!!!」
みことは照れくさそうに、すちの肩に寄りかかる。
すちはみことの髪をくしゃっと撫でた。
そして、火がゆっくりと弱まる頃。
「そろそろ、部屋戻るか」
「そうだね。冷える前に、あったかい布団入らなきゃ」
「あ、でももう少しだけ……火の音聞いてたいな」
「しゃあねぇ、少しだけな。風邪ひくなよ」
それぞれの想いを胸に、6人は穏やかに炎の前で揺れる時間を過ごしていた。
___