眩しい日差しが差してきた病室に朝だと示した。朝一、赫達が来るはずもなくただぼーっとしていた。
そしたらガラッと扉が開くのが視界に入った。
「はぁッはぁ…ッ…桃…」
思わず驚いちゃった。
紫だった。来るはずもなく、期待もしていなかった。今まで俺の未来と違うことが起きることはなかった。なのに。
“どうして。“そう聞きたかった、なのに声が出ない。
「無理して喋んなくていいよ」
俺の心を見透かすようにそう言うが俺の耳には届かず部屋に溶けた。
それでも、紫の言葉が心に染み込み、理解した。
昔ながらの縁というものは怖いね、なんて本当は嬉しいくせに。なんて嬉しさを隠した。
紫は俺の感情を読んだのか、一言も話さなかった。でも隣で紫が何かを書いていた。
紫がその紙を見せた。
《何も書かなくていいから、読んで。
ごめん。桃が不安な時に傍に居れなくて。
弱くてごめん。桃が終わりを悟った感情してて怖くなったなんて、前と変わらない理由で逃げてごめん。俺もう大丈夫だよ。 》
そこまで読んで紫のことを見ると、俺の手を握って微笑んだ
表情で心の底から安心した。
紫がふと振り返ったので見てみると唖然とした4人だった。
紫と赫達が何か話している。
何の話かは全く理解できない。
~赫side
病室に入った途端紫の姿が見えた。有り得なかった、だってあの日紫はもう誰とも関わりたくないと言いたいような、瑞のことをきっかけに引きこもったあの日と同じ目をしていた。
だから。きっとまた戻ってしまうと思っていた。なのに、
「大丈夫か?」
そう不安そうに聞いてしまった。
それを悟った紫が
「赫の言う通りだった、もっと早く桃のところにいてあげれば良かったわ。」
そう微笑んだけど、やはりそこに暗さは残っていた。それでもここまで自分の足で来たなら、それはすごい成長でありながら、桃のことを想っていたことがよく伝わる。
瑞が言った、“信じられない“は紫と桃の中では通じないであろう。
紫が紙なにか書いたあと桃にみせた。
《ごめん、勝手に俺らのこと話した。》
そう説明をした。
だけど俺は分からなかった。昨日まで話していて、聞こえていた桃に何故筆談をするのか。
「…なぁ紫、桃は話せるよ?」
そう言ったが紫は首を横に振った。
「なぁ桃はお前らにあと何日って言った?」
そう聞かれるので何も疑問に思わず
「にしゅうかんって書いてたけど?」
そう言うと
「…その日が最後か」
「なにが?」
「…桃に力が入らなくなった日。」
そう紫が言った途端全て理解した。
「…2週間って嘘か?」
そう聞くと紫は静かに頷いた。
信じれなかった、だってそんな嘘つく意味がないから。
「なんでそんな嘘ッ…」
「桃も人間だからさ、弱いところ見せたくなかったんだよ。」
それは何処かで同じようなことを聞いた言葉。
「…桃々と同じこと言うね、」
翠がそういうと紫が少し驚いてから苦笑して
「俺こいつ程我慢してねぇから」
そう少し寂しげな瞳を揺らして桃の手を握っていた
桃は俺らの声も桃の声も力も何も無い。認めざる負えない環境が桃を苦しめているのは確かだ。なのに、紫の言う通り桃は笑顔でいた。
「馬鹿だろ、こいつ。」
思わずそう思った。
だってありえないくらいくだらない理由だから。無理することも我慢もしなくていいはずなんだ。それでも俺らのことを気にして無理してしまうこいつは馬鹿お人好しだと思う。
ほんとくだらない。
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