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りるら
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耀聖(ようせい)
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月咲やまな
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.:・.。. .。.:・
「竜馬・・・お父さんとお母さんに事故が起きた・・・」
生きている限り、この言葉は決して忘れないだろうと竜馬は思った
父の弟の茂雄おじさんが、竜馬のクラブ活動中の学校にいきなり乗り込んで来たのは、夏の暑い日の事だった
竜馬18歳・・・高校三年の夏休み、アメリカはイリノイ州を代表するイリノイ大学で、唯一の経済学専攻のホームステイ枠に竜馬が合格した時、父はとても喜んでくれた、そして母も海外で視野を広げるのは、とても良い事で、今後の父の仕事にも役に立つだろうと言った
竜馬の父の経営する「株式会社松下貴金属」の職種の「地金屋」という貴金属売買の仕事は、主に宝飾品や、資産としての貴金属商品を取り扱っており、世界的に見ても、需要と供給のバランスが激しい業界で「金」を安く買って、高く売ることに竜馬の父は生まれながらの、目利き能力に、天賦の才を持っていた
「松下貴金属」は父一代で、日本のその業界に名を馳せるほどになっていた、しかし貴金属業界は、相場を読むギャンブル的側面があるため、その読みを外すと、大きな損失を生む
竜馬の父の経営する「松下貴金属」は、竜馬が大学入学を控えた夏には、その赤字をもう埋めることは出来ないまでの負債を抱えていた・・・そんな松下家、が苦しい頃の父と母の、突然の交通事故の知らせだった
「お前の父さんが母さんを横に乗せて運転して・・・家にもどる途中で、高速道路のカーブを曲がり切れずに・・・横の車線のトラックに突っ込んだんだ・・・はっきりとしたことはわからないが、お前の父さんは相当スピードを出してたらしい・・・酷い怪我だ・・・それで二人とも、今・・・手術を受けている」
「手術」と聞いて竜馬の顔から血の気が引いた
「でも助かるんでしょう?・・・」
竜馬は助手席から茂雄おじさんを見た、病院まで二人の間に沈黙が続いた、やがて茂雄おじさんが口を開いた
「深刻な状況なんだ・・・何かしなければと思うが・・・今はお前にも、私にも、出来ることは何もないと言われて・・・」
その瞬間、竜馬の体に衝撃が走った・・・おじさんが泣いていた・・・病院までの道のりの40分・・・駐車場について正面玄関までなんとか歩いた
その全ての記憶が曖昧だった・・・病院のスタッフが二分後には、そのスタッフの顔も分からなくなっていた、外科手術の関係者だけが入れる待合室へと、案内された
そこに駆け込むと、知らないおじさんがいた、そのおじさんが目に涙を溜めて、竜馬に言った
「竜馬君だね・・・僕は君のお父さんの友人で神崎一郎だ」
そしてこう呟いた
「とても残念だ」
竜馬は一歩後ずさった
「嘘だ・・・」
その後ろから茂雄おじさんが、目にハンカチを当てていた
「二人とも間に合わなかった・・・」
竜馬が振り向くと、母の妹の久美子おばさん(文也の母)が部屋の隅に立っていた、涙が頬を伝っている
ヒック・・・「誰か嘘だと言って・・・」
ノックの音がして、青い手術着姿の医師が入って来た
「お邪魔をして申し訳ございません、お二人のお顔をご覧になりたい方はどうぞ・・・」
おばさんは涙を拭って竜馬の背中を支えた
「さぁ・・・竜ちゃん・・・お父さんとお母さんにお別れを・・・」
―お別れって何だよ?―
茂雄おじさんが言った
グスッ・・・「お前達だけで行ってくれ・・・私はとても・・・」
声が次第に小さくなり、おじさんは片手で顔を撫でて、大きく息を吸いこんだ
―何が起こってるんだ?―
竜馬は半ば強引に二人が寝ている霊安室に連れて行かれた
.:・.。. .。.:・
両親の通夜や葬儀に関するさまざまな決め事に18歳が対応するのは難しいと、誰しもが思い、そういった負担を軽くするために「神崎一郎」という人が、竜馬の家に泊まり、葬儀で捧げるお経や二人を棺に納める服装を決めたり、花を決めたりする手配を一身に引き受けてくれた
そして茂雄おじさんや久美子おばさんも、ひっきりなしに家を出入りしていた、夜には大きなリムジンが家の前に止まり、国際的な宝石商(ITOMOTO)の四代目会長伊藤政宗が大勢のお供を連れて通夜の挨拶にやってきた
会長の相手をしてくれたのも一郎さんだった・・・後でわかった事なんだが、その頃の松下家は葬儀を出す金も無く、一郎さんが費用をすべて出資してくれていた、しかしそんな事なども、当時の竜馬には何も知らされていなかった
葬儀が終わった後にも、毎日かかってくる電話を受けたり、お悔やみ状や花やメールの整理も一郎さんが手伝ってくれた
父は帝国を築いていたので、哀悼の意を伝えたいという人が殺到し、そのすべてに応えようと、彼は最善を尽くしてくれた
夏休みで学校はなかったが、竜馬はクラブ活動にも行けず、先が見えない精神的に消耗する日々が続いた
しかし最初の週が過ぎてから、事態はさらに最悪になっていった、一日中借金取りの催促の電話が鳴り響き、庭には裏社会関係の借金取りの嫌がらせで、空き缶が投げつけられ、家の壁には「金かえせ」とラッカー材で落書きをされるようになっていた
さらには倒産して、行き場を失った社員が、怒って玄関のドアをひっきりなしに叩くようになっていた
竜馬は一歩も外を出る事が出来ず、枕を頭に抱えて、ずっと布団の中にうずくまり、ただこの地獄が嘘だと言ってくれと祈っていた
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バタンッ「竜馬君っっ!今すぐ荷物をまとめなさいっっ!」
一郎さんがベッドにうずくまっている竜馬の掛け布団を、いきなり剥ぎ取り、竜馬を立たせた
「この家が正式に競売にかけられて、たった今落札された、新しい持ち主が嫌がらせにこっちへ向かっている、ここにはもういられない、お前は一郎さんの家に行けっっ!!」
続いて、茂雄おじさんも竜馬の部屋に入って来て、竜馬に言った、その時、一階の窓ガラスが割れた音がした
「ここは僕の家だっ!!」
竜馬はおじさんに泣きながら叫んだ、茂雄おじさんは悲しげな顔で竜馬に言った
「もう違うんだよ・・・」
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「さぁお入りなさい・・・」
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一郎さんの家は、大阪市内の工場地帯にある大きな一軒屋だった
彼は勢いよく玄関扉を開け、先に上がるように大げさな身振りで竜馬を促した、逃げるようにこの家にやって来た竜馬は、遠慮がちに広い土間を上がり、脱いだ白のナイキのスニーカーを行儀良く揃えた
竜馬は玄関広間を進みながら、こげ茶色の高価そうな家具が並ぶ、贅沢ながらに落ち着いた、しつらえの邸内に見惚れた
なんとなく居心地が悪くて、ボストンバックを抱きしめて、キョロキョロと美しい邸宅を見回したが、やがてハッとしてあまりジロジロ見ないように心がけた
それから日々は竜馬が屈辱を味わう暇もない程に慌しく過ぎて行き、茂雄おじさんと一郎さんは、二学期からは極秘に一足早く大学合格をしていた、アメリカはイリノイ大学付属の、高等学校に竜馬の編入手続きを済ませた
「今・・・君は日本にはいない方がいい」
一郎さんは黒い優しそうな瞳で竜馬にそう言った・・・なぜなら竜馬の父は先物取引きで犯罪まがいの事をしてて、これからは裁判などで、その罪を問われることになっていたからだ
事件扱いになれば、竜馬の父は犯罪者として週刊誌などに隠していても書きたてられることになり、おそらく竜馬は通常の穏やかな、学校生活はこれからは送れないだろうと、竜馬の父の顧問弁護士と話あった結果だった
顧問弁護士の、坂本さんと一郎さんと竜馬の父は大学以来の友人だったそうだ、彼らは竜馬の将来を真剣に考えてくれて、何千ドルもかかる、大学留学の費用を出してくれると言う
竜馬の父は将来のことなどをあまり考える人ではなかった、父は今を生きることを選んだ人だった、竜馬はいったい今まで父の何を見て来たんだろうと思ったが、でもその答えを聞く父は・・・もうこの世にはいなかった
どうすることも出来ない・・・竜馬は二人の言う事を効いて、一ケ月一郎の家で過ごした後、アメリカ留学をすることに決めた
一郎さんには病気で入院している奥さんと二人の子供がいた、そしてこの兄妹の、ものの見方はその対照的な外見と、同じぐらいかけ離れていた
長男の豊は、色黒で、背が低く、ウェーブのかかった短髪で太りやすい体質なのか、小学生なのにぽっちゃりしたゲームオタクだった、そして顔は一郎さんによく似ていた、妹のジェニは小学生低学年にしては、スラリとした長身で、長い髪の毛、色白に吸い込まれそうに大きい茶色の瞳をしていた
そして竜馬は初めて女の子を美しいと思ってときめいた・・・きっと彼女の母親もとても美しい人に違いない・・・しかしその儚げな外見とは違って、彼女はとんでもない強情な性格をしていた
.:・.。. .。
ある日、ジェニは玄関から二階に続く階段の一番前に座り、兄の豊が友達を連れて帰ってくるのを、今か今かとワクワクして待っていた
その瞬間、バタンッと玄関扉が開き、豊率いる友達がワッと溢れた、豊はゲーマーで、夏休みの登校日が終わると、よくゲーム仲間を家に連れてきて、リビングの大画面のテレビで、今流行りのレンジャー系シューティングバトルのゲーム大会を開催していた
一瞬で玄関は脱ぎ捨てられた沢山の運動靴で、大理石の床が見えなくなり、お手伝いさんが、慌しくおやつのパンケーキを焼いている匂いが、キッチンから漂ってくる
待ちかまえていたジェニ自身も、ゲームをしたくて、豊達の後を金魚のフンのように後追いする、しかしジェニは彼らにとって「仲間はずれ」だ、一緒の空間にいるのだけれども、誰もジェニのことを気にしないし、当然ジェニの番も回ってこない
「お兄ちゃん!次、ジェニの番!」
「ちょっと待ってろ!!」
待てど暮らせど、ジェニにコントローラーは回ってこない、豊達はバトル系のゲームに夢中だ
「お兄ちゃん!!ジェニにやらせて!!」
「うるせー!あっち行ってろ!!」
みんなジェニの事など無視して、最高潮に盛り上がり、大きなテレビ画面に夢中になっている
カチンと来たジェニは、すっくと立ちあがり、スタスタテレビの前にあるゲーム機本体の前に行った
―ガシャンッッ―
ジェニは本体を蹴飛ばし、テレビ画面は電源が消えて、真っ黒になった
「「「「あーーーーーーーっっ(怒)」」」」
豊達は、今回最高のヒットポイントを決めていたスコアもろとも、ジェニに台無しにされたのだった
コメント
1件
うわ…第131話、すごく重い回でしたね。18歳で突然両親を失い、借金、家の競売…「ここは僕の家だ!」「もう違うんだよ」のやり取りが胸に刺さりました。竜馬の「お別れって何だよ?」という心の叫びが痛いです。ラストのジェニの強気なシーン、あの空気を一変させる感じが良かった。重い話の後にああいう場面があると、ほっとしますね。一郎さんの存在がどれだけ大きかったか、じわじわ来ます…。