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俺は今『ドッペルゲンガー』の名前を考えている。(ミノリたちは食器を洗っている)
『ドッペルゲンガー』の存在自体、モンスターとして認識していいのか分からないくらい曖昧なため正直、悩んでいる。
さて、どうしようかな……。
俺はふと、目の前にいるその子を見た。
その子は目をキラキラと輝かせながら、こちらを見ている。
ふむ、これが期待の眼差しというやつだな。
俺はその眼差しに耐えきれそうになかったので、その子から目を逸らそうとした。
しかし、その子のアンテナのようなアホ毛が『オジギソウ』のように垂れてしまった。
これはまずいと思い、とっさに頭を撫でてやると、その子は微笑みを浮かべながら、嬉しそうにアホ毛をヒコヒコと動かした。
それを見たミノリたちの視線に殺意を感じたが、気にせず名前を考えることにした。
すると、急に雨が降り始めた。異世界でも雨は降るんだな……。
雨。雲に蓄積された氷や水の粒が一気に地上に降る現象。
それは万物を溶かすと言われているが、それは何億年もかけたらそうなるというだけで、雨に濡れたら『〇〇になる』というのは、迷信だ。
その時、俺の脳内に電撃が走った。
「……シズク」
「……シ、シズク?」
「『雨』に『下』って書いて『雫』だ。いつか雫は落ちて消えてしまうけど、消えるその瞬間まで、精一杯生き続けようとする様は、今を生きる若者たちに何かを訴えかけているのかもしれない……」
「……つまり、どういうこと?」
「……まあ、最後の瞬間まで諦めないって意味……かな? どうだ? 気に入ったか?」
「うん! かわいい名前だからいいよ! ありがとう! ナオト!」
シズク(ドッペルゲンガー)はそう言いながら、俺の胸に飛び込み、顔をスリスリと擦り付けてきた。(食器を洗い終わったミノリたちは、ちゃぶ台の周りに座った)
「おいおい、俺なんかより、お姉さんたちと遊んだらどうだ?」
『シズク』は首を傾げると、キョトンとした顔でこちらを見ながら、こう言った。
「そこにいるお姉さんたちはナオトのことが大好きだから、私に嫉妬してると思うよ」
その言葉を聞くと、それに該当する者たちは激しく動揺した。
「な、何言ってんのよ! あたしは、こいつのことなんか、なんとも思ってないわよ!」
ミノリ(吸血鬼)。
「そそそ、そうです! こんな人のこと、す、好きなわけないじゃないですか!」
マナミ(茶髪ショートの獣人)。
「ナ、ナオ兄みたいな浮気者なんか、もう知らない」
シオリ(白髪ロングの獣人)。
「わ、私は、兄さんのことなんて、なんとも思ってないですよー」
ツキネ(変身型スライム)。
「私にとって、マスターはマスターです。それ以上でも以下でもありません。しかし、浮気は絶対に許しません」
コユリ(本物の天使)。
「ナ、ナオトさんのことなんか……もう知りません」
チエミ(体長十五センチほどの妖精)。
「あ、あたしにとってマスターはマスターだ! か、勘違いするなよ! ガキ!」
カオリ(ゾンビ)。
「何言ってるの? お姉さんたちはナオトが好きすぎて自分だけのものにしたいと思ってるんでしょ? 自分に正直にならないと、きっと後悔するよ?」
『……うっ!』
「おーい、その辺にしとけよー。というか、全員、図星なのかよ……」
さすがは『嫉妬の姫君』。どうやら他人の嫉妬心が分かるらしい。
……さて、名前も付け終わったことだし、次の目的地についての話をしようか。
「みんな、次の目的地のことについて話すから、もっとこっちに来てくれ」
「……あたしたちがこれからあんたに言うことをちゃんと聞いてくれたら、あんたの言うことも聞いてあげてもいいわよ?」
「えっと、分かってるのか? ミノリ。早くしないと目的地に到着……」
「うるさいわね! あたしたちの言うことを聞けない理由があるの!? シズクがいれば、あたしたちは用済みってわけ!? 冗談じゃないわよ! あたしたちだって我慢してるんだから、たまには甘えさせてよ!」
シズク以外の全員の顔を見るとミノリの発言が正しいことが分かった。
全員、頬を少し赤く染めながら、こちらを見ていたのだから。
敵に回せば明らかに負けることは分かっているし、敵に回す気もなかったため、俺は言うことを聞くことにした。
「分かった……。みんなの言うことを一つずつ聞いてやるから、早く言え」
シズク以外の全員が目を輝かせた後、それぞれが俺に要求してきた。
「あたしは! あんたに頭を撫でてほしい!」
ミノリ(吸血鬼)。
「わ、私も! それでいいです!」
マナミ(茶髪ショートの獣人)。
「私はナオ兄にダイブする!」
シオリ(白髪ロングの獣人)。
「兄さん! 私も抱きついていいですか! いいですよね!」
ツキネ(変身型スライム)。
「マスター、今回は甘えてもいいんですよね? では私もマスターに抱きつきます」
コユリ(本物の天使)。
「ナオトさんの頭の上で寝てもいいですか!」
チエミ(体長十五センチほどの妖精)。
「マスター。あたしは……マスターに膝枕してほしいんだけど……ダメか?」
カオリ(ゾンビ)。
みんな少し素直になったな。よかった、よかった。
全員の要求を聞いた後、俺は二人ずつ、彼女たちの願いを叶えてやることにした。
「みんなの気持ちは分かった。でもいっぺんにやるのは難しいから順番を決めるぞ。まず、ミノリとマナミ。次に、シオリとツキネ。その次に、コユリとチエミ。で、最後にカオリ。これでいいか?」
みんなは、ほぼ同時にスッと立ち上がると、こう言った。
「ええ、それでいいわよ。ありがとね、ナオト!」
ミノリ(吸血鬼)。
「あ、ありがとうございます! ナオトさん!!」
マナミ(茶髪ショートの獣人)。
「ナオ兄はやっぱり優しいね」
シオリ(白髪ロングの獣人)。
「ありがとうございます! 兄さん!」
ツキネ(変身型スライム)。
「ありがとうございます。さすがは私のマスターです」
コユリ(本物の天使)。
「ナオトさんほど優しいマスターはいません! 胸を張っていいですよ!」
チエミ(体長十五センチほどの妖精)。
「さすがはあたしのマスターだ! どこまでもついていくぜ!」
カオリ(ゾンビ)。
「おいおい、大袈裟だな。でも、順番はちゃんと守れよ?」
「もちろんよ! あたしを誰だと思ってるの?」
ミノリ(吸血鬼)。
「わ、分かりました!」
マナミ(茶髪ショートの獣人)。
「りょうかーい」
シオリ(白髪ロングの獣人)。
「はい、わかりました!」
ツキネ(変身型スライム)。
「はい、マスターの仰せのままに……」
コユリ(本物の天使)。
「ナオトさんのためなら、なんでもやってみせますよ!」
チエミ(体長十五センチほどの妖精)。
「あたしが信頼できる唯一の存在であるマスターの言うことには従うぜ!」
カオリ(ゾンビ)。
「……よし、みんないい子だから俺もみんなの要求にできる限り応えてみせるよ! さぁ! いつでも来い!」
『わー!』
そこからのことはあまりよく覚えていないが、多分みんな満足した……。
なぜかって? それは俺がみんなの要求を成し遂げた後、みんなの顔がいつもより輝いていたからだ。
ツヤツヤしていたと言った方がいいだろうか? まあ、なんにせよ、みんなが満足したのならそれでいい。
さて、次の目的地についての話し合いを始めるかな……って、ん? 俺の背後から感じる、この殺気はいったい……。
その殺気が放たれている方に目をやると、そこにはハイライトがオフになった目で俺を見つめるシズクがいた。
『嫉妬の姫君』だということは、本人も嫉妬しやすいということなのかな?
現代風に言うと【ヤンデレ】化しやすい……かな?
しっかし、これは、まずいことになったな……。
その眼差しからは先ほどまで俺の目の前で満足そうにしていたやつとは思えないほどの威圧を感じた。