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私達はみんな違っているけれど、それでいて同じでもある。
そんな当たり前のことを忘れて、違うことに価値があると思い込んでしまう。
そして理解されないままに孤立して、誰からも見放されてしまう。
それでもまだ自分が一番正しいと信じているなら、それこそ悲劇というものでしょうね。
「……えっと、とりあえず分かったよ。今日はちょっと用事があるけど明日は必ず行くようにする」
「ありがとうございます! ではお待ちしております!」
沙耶架からの返事を聞いて満足した小春は教室から出て行った。
その様子を見ていたクラスメートは呆気に取られていたが、やがていつも通りの光景だと言わんばかりの雰囲気になる。
「相変わらず凄い子だよねぇ。あんなに可愛い子が毎日のように告白してくるなんて羨ましい限りだわ」
「ホントにそうだよね。あの子のファンクラブが出来てるくらいだし」
「でも本人は全然興味なさそうなんだよね。そういうところがまたいいんだけどさ」
女子生徒達が噂話をしている最中にチャイムが鳴り響き、授業が始まった。
「皆さんおはようございます!今日も良い天気ですね!」
元気よく挨拶をする女性教師に対してクラスメイト達は気のない返事をし、教室内の雰囲気は決して明るいものではない。
その理由としては先日起こった事件が原因になっているのだが、その原因を作った張本人は気にした様子もなく教壇の前に立っていた。
彼女の名前は七瀬アケミと言い、このクラスを受け持つ担任でもある。
年齢は二十代後半くらいだろうか。
身長は百六十センチほどで細身ではあるが胸は大きくスタイル抜群で、肩にかかる長さの茶髪を後ろで束ねており、化粧はほとんどしていないように見えるものの顔立ちは非常に整っている。
また人当たりが良く誰に対しても分け隔てなく接しており、明るく朗らかな笑顔を絶やさないこともあって男女問わず人気がある先生だ。
ただし彼女の欠点を挙げるとするならば少々お節介焼きな性格をしているということかもしれない。
「それでは出席を取りましょう……まずは相川くん」
「はい」
名前を呼ばれた少年―――相川は立ち上がりつつ、ゆっくりと周囲を見渡してみた。
教室の中はすでにホームルームを終えた生徒たちで溢れかえっており、それぞれが楽しげな様子を見せている。
そんな中でも一際目立つ集団があるのだが……うん、いつも通りの光景だね。
「ねえねえ、小春ちゃん! 今日の帰りどこか寄らない?」
「ごめんなさい。今日は予定があって……」
「えーっ!? また~?」
「うぅ……本当にごめんなさい!」
クラスメイトの少女に対して申し訳なさそうな表情を浮かべているのは、このクラスで一番可愛いと言われている少女だ。
ちなみに彼女は僕と同じ図書委員でもあり、昨日も同じやりとりをしている。