金豚きょー
◇
_ねえ、知ってる?
このせかいにはね、てんしさまがいるんだって!
_天使さま?
_そう!てんしさま!
そのてんしさまはね、なんでもひとつ、おねがいを叶えてくれるの!
『…___』
通りすがりの小学生の会話を盗み聞き…してるわけじゃなくて、そう、たまたま。たまたまそんな会話が耳に入り、そして 私はそんなの嘘だよと心の中で呟く。
だって、私のお願いを叶えてくれたことなんてないし、ましてや現れたことも、その天使様とやらを見たことがある人もいないのだから。
◇
『ただいまぁ…』
誰もいない部屋に、自分の声だけが響く、
「おかえり」
…?
『…疲れてるな……』
今、男の人の声が聞こえたような、
「疲れてんの?お風呂沸かす?飯〜…は、作られへんから……寝かしつけよか?」
……気のせい、
『ご飯食べようかな』
気のせい
「先飯食うん?ほな俺のんもつくってや」
……気のせい……
「ていうかさっきから聞こえとんやろ?返事しーや」
気の、せい……
「なー、おーい」
じゃ、ない。気のせいじゃない。絶対。
『…だ……れ、です、?』
いつの間にか目の前にいる。
……天使?
にしては髭が生えているし、蝶ネクタイつけてるし、なんか黄色い豚の…着ぐるみパジャマ…みたいな……、でも天使の輪っかはあるし、目や髪の色は確実に日本人ではない。
「んー?アンタだけの使い…かな」
『てんし、さま……?』
「そ、」
てんしさま?本当にいた?
…でもなぁ……、この人の…いや人じゃないか…?ってそんなことはどうでも良くて。
この天使さん(仮)、天使にしては天使らしくないというかなんというか。天使ってもっとこう、ふわふわしてて可愛いものだと思ってたんだけど…。
現実はそんなに甘くないってことですか。
「ってことやから。ほら、行くで」
『…?』
目の前に差し出される手。
これに自分の手を重ねてしまったら、どこに行くのだろうか。
「いや“?”ちゃうねん。行くで、って」
『え、いや、どこに?』
天使(仮)は顔を顰めたまま、口を開く。
「天国」
『……というと?』
「アンタら人間がよく言う“天国”や」
『てんごく、』
…どういうこと?……つまり、つまり…?
『え、…つまり、私、しぬの?』
「あー、ちゃうちゃう。死にはせん。元々の存在が消えるだけ」
『それって死ぬってことじゃ』
「アンタが存在していなかったことになる」
『…、』
「分かった?」
『……ぁ〜…うん………はい…、多分?』
「分かってないやつやなこれ」
ま、ええわ。
目の前の天使(仮)は、無理やり私の手を取ってそのまま宙へ舞っていく。
もちろん、私も。
地面とどんどん離れて、ついには私が住んでいるマンションの屋上にまで達して。けれど羽は羽ばたいたまんま。天使(仮)は、さらに高くまで昇る。
「…こっからは、ちょっと寝とってや」
ぐん、と手首を引かれたかと思うと、次の瞬間にはもう意識を失った。
◇
つづくよ〜
コメント
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おおおおお(興奮)(? てかヒプマイに天国獄ってキャラいるから混乱(?)