テラーノベル
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最近、撮影や配信が立て込んでいて、
ろくにスキンシップができていなかった。
そんな、ようやく2人きりの夜。
なのに──
らっだぁは、なるせが近づいて来ても、全然触ってこない。
それどころか、 ずっと優しい顔してるくせに── 意地悪なことばかり言ってくる。
「なるせ?…俺今日、何もしないって決めてんだよね」
「…へぇ、そうなんだ…………オナ禁、か」
「はい?、なんて?笑」
「ハイ? なんでもねぇっすよ、別に笑」
あくまでも、平気なふり。
本当は、ぎゅって抱きしめてほしいけど…。
でも自分から「さわって」とは言いたくない。
…だって、かっこわるいのは嫌だから。
でも、本当はもどかしくて、ぐっと拳を握って、吐き捨てるように呟いた。
「……じゃあ、俺…もう寝るから、おやすみ」
少し間が空いて、らっだぁもベッドに寝転んできた。
なるせは、その腕をちらっと見ていた。
ほんとは、隙あらば触れたい。
けど、強がりな自分が、それを許さない。
…頭の中がぐるぐるする。
不意にらっだぁが意地悪な声で、そう問いかけてきた。
「…なるせはさ、俺にどうされたいの?」
「ッは?…別に……なんも……」
「ほんとに? 泣きそうな顔してるけど」
図星だった。
喉の奥がぎゅってなって、
でも意地でも顔を見せないように、枕にうずくまる。
「っしてない……してないわ……」
もう声が揺れてて、
らっだぁはそれをちゃんと聞いてるくせに、近づいてこない。
「へぇ、じゃあもうちょい焦らそっかな〜」
その一言で、ぷつんと堪えてた糸が切れた。
「……ばかぁ……」
「ん?」
(ふるえ声)
「…ばかだよ……っ。……ほんと、いじわる、お前……」
声が震えて、手で顔を隠して、なるせはついに泣いた。
泣かされた。
本当は、泣きたくなかった。
負けた気がして、悔しいのに。
なのに、そんななるせを見て──
らっだぁは、やっと本気の優しい顔になる。
後ろからそっと引き寄せて、あたたかく包む。
「我慢しなくていいよ。もっと、なるせの可愛いとこ見して?」
「……っ泣きたくなかった、のに……」
「泣いていい。てか、泣いてほしかった」
なるせが顔をあげると、そこには安心しきったらっだぁの顔。
そっとキスを落とされて、もう何も言えなくなった。
「泣くほど、好きになってくれてありがとう」
その言葉に、なるせはやっと素直に目を閉じた。
──悔しい。
でも、こんなにもあたたかく包まれるなら、
もう少しだけ、泣いてもいい、と思えてしまった。
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