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雨の日。
ちょっとした用事でスタジオに寄った帰り。
ビルから出ると、建物の陰からふと見えたのは、スタッフの女の子と相合傘をして歩いてる“らっだぁ”だった。
楽しそうに笑い合う表情と、傘越しの距離感。
それだけなのに、なるせの胸が妙にきゅっとなった。
(心の声)
「いや別に…俺が気にすることじゃねぇし……あいつが、女の子と普通に歩いてるだけやん」
そう自分に言い聞かせて。
でも、無意識に目は二人から離せなかった。
そのまま立ち尽くしていると、そんななるせに気づいたらっだぁと視線が合う。
らっだぁは「あっ」って顔して、傘を隣の女性に渡し、こっちに小走りで駆け寄った。
「なるせ…!? なんでいんの!?
…ていうか傘は?、ないの?」
(ぶっきらぼうに)
「……あるよ、今外出たばっかだから出してないだけ」
(じっと見て)
「…………なんか、機嫌、悪い?お前」
(目をそらして)
「…別に。なんもないけど」
そんな、ぶっきらぼうに喋るなるせに、 ため息をつきながら、らっだぁはなるせの鞄を漁って傘をさす。
「ほら、入って。…帰ろ」
黙って傘の中に入るなるせ。
距離はいつもより近いはずなのに、
なるせの肩はぴたりと固まって、全然寄ってこない。
「もっとこっちおいで?濡れるでしょ」
「……濡れてない…」
(ぽつり)
「………もしかして怒ってる?、相合傘してたの?」
「は!?、っ怒ってねぇよ!なんで俺が怒んだよ!意味わかんねえて!!」
(にやっと笑って)
「怒ってますやん。お前の顔、めっちゃわかりやす笑」
(赤くなって)
「……うるせぇて」
(小声で)
「俺、なるせが焼いてくれるの、結構嬉しいよ?」
「……だから…焼いてねぇって…」
(傘の中、ふいに距離を詰めて)
「ごめん笑……ちょっと断れなくてさ相合傘、ほんとはお前とがよかったんだよ?」
(ぼそっと)
「………俺も、そっちの方がいいけど…」
(にっこり)
「あ、言った笑、かわい〜」
(即うつむいて)
「ちが……今の、なかったことにして…」
(傘の中で、そっと肩を抱いて)
「ごめんね。次からはちゃんとごめんなさいって断るから、もう怒んなって」
(ぽそっと)
「……怒ってないし。ちょっと、ヤなだけ」
雨の音に混ざって、2人だけの小さな声。
ちっちゃい傘の中で、
なるせはちょっとだけ、らっだぁの手首をつかんでいた。
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