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イリア「はい、買ってきたわ。」
ジーク「料金証明書は?」
イリア「あるけど…別に必要ないでしょう?」
ジーク「いや必要だ、金は払う。」
イリア「別に大丈夫よ。結構稼いでるし。」
ジーク「そういう訳には…」
イリア「いいから。甘んじることも大事よ。はいこれ。」
イリアはポケットからカードを出し、ジークの手に料金証明書の代わりに差し出す。
ジーク「じっ、自営業…薬売り…し、しかもゴールド…!?」
アリィ「?ジーク、なに?これ。」
ジーク「ああ、そういや教えたこと無かったな…物を売る為のライセンスだ。コレがないと勝手に店を開けないんだ。俺は持ってないからいつも店に持ち込んで売ってる。」
アリィ「…店に持ち込んで売る場合は必要ないのに、どうしてお店を持つと急に必要になるの?」
ジーク「あー…ちょっと説明が難しいんだが…店を持ってる人は売ってる物についてちゃんと知ってて詳しい証明書みたいなものだな。説明責任が生まれるんだ。」
イリア「薬品関係は特に厳重でね。これを持ってないと、持ち込みで売ることも出来ないの。でもその分お金はいいのよ?まぁ私の場合持込みで売ってるんじゃなくて…そこに自営業って書いてあるでしょ?旅先で出店を開いて売ってるの。」
シリル「…ゴールドの意味は分かる?」
アリィ「分かんない。」
シリル「商人じゃなきゃ触れる機会なんてないもんね。知らなくても無理はないよ。むしろなんでジーク君が知ってるのか不思議。」
ジーク「…ちょっとした事情で昔は持つ必要があったからな。というか…俺名乗ったけ…」
シリル「いいや?指名手配書に書いてあったから。」
ジーク「な、なるほどな…。」
シリル「ゴールドの説明に戻るけど、色にはブロンズ、シルバー、ゴールドがあってね。ブロンズが1番新米の商人。要は皆で手助けしてあげようねっていうライン。逆にゴールドはむしろ皆の手助けを積極的にしてねっていうかなり経験豊富なラインなんだよ。」
アリィ「シルバーは?」
シリル「熟練だけどまだ人1人を完全に預けるのは厳しいかなってラインだよ。ゴールドの人が居ないと出来ないことも多くってそれだけ凄いんだ。商人が居れば経済は上手く回る。だから国際商会ってものがあって支援してるんだ。どこの国にとっても経済が回るのはいい事だからね。」
イリア「…これには昔の大災害の訓戒も含まれてるの。商人にとって最も必要なことは予測。だけど新米にはその力が備わっていない。昔騙されて大量の違法薬物を各国に渡らせてしまった商人が居て大災害が起きたの。薬害ってやつね。もしライセンスが欲しいなら厳しいテストをやらされるわよ。」
アリィ「じ、ジークのテストだけで十分だ…。」
シリル「どういう関係なのそれ…。」
イリア「とにかくそういう訳だからこれくらい安いものよ。お金は要らない。明日は朝早くに出発するわ。今日はしっかり寝て頂戴。昼までにオアシスに付ければいいけど…間に合わなかったら一旦休みましょう。それと…ジーク。」
ジーク「よ、呼び捨て…。」
イリア「嫌かしら?他になんて呼べばいいか分からないから…」
ジーク「いやいい。ただ距離が近いなって思っただけで。」
イリア「不快でないならいいわ。戦えるのはシリルとジーク、貴方達2人だから知っておいて貰いたいんだけど…シリルには原因不明の持病がある。発作が起きたらすぐに頼るようにしてはあるけど…場合によっては症状が酷くて誰かを呼ぶのが難しい時があるの。戦いの際に、少しでも予兆を感じたら撤退するようにして。」
ジーク「分かった。でもそれって大丈夫なのか?」
イリア「今のところは命に別状はないわ。ただこの先どうなるか…今は緩和薬を服用させてはいるけど肝心の治療薬は開発出来てないの。…私達には残された時間も分からないの。」
シリル「でもイリアの緩和薬は効いてるし、絶対治ってきてると思うよ。」
イリア「容態というのは急変することがしょっちゅうあるのよ。…ほんとごめんなさい。」
シリル「あ、謝らないでいいって!ごめんね、話を重たくしちゃって。」
ジーク「いや必要な情報共有だから大丈夫だ。」
アリィ「…あれ?これ服多くない?」
イリア「あぁそれは…砂漠の夜用に防寒着をね。砂漠の寒さで死ぬなんてのも結構ある事だもの。持ってるか聞くのは忘れちゃったけど…あっても困らないものだから。むしろ防寒着を持ってるならそれと一緒に着ちゃって頂戴。1着はその子のよ。」
アリィ「ポルポルのも買ってきてくれたの?」
イリア「当たり前よ。1人だけ辛い思いをさせるのは可哀想だもの。暑さは多分大丈夫でしょうけど寒さは着込まないとどうにもならないもの。」
アリィ「ありがとう。」
イリア「どういたしまして。」
(…噂はあくまで噂ってとこかしら。…でもまだ分からない。)
イリア&シリル(砂漠の道中で見極める。)
シリル(もし…悪魔を悪用にしてるならその時は…)
ジーク(話が出来すぎている。…恐らく本当の目的は別にある。)
アリィ&ジーク(この道中で見抜く。)
アリィ(もし…敵であればその時は…大丈夫、ジークにはもうこれ以上殺しをさせたりしない。)
イリア「それじゃあおやすみなさい。私たちは隣の部屋で寝てるからこっちのベッドを使ってちょうだい。」
アリィ「うん、おやすみ。」
(2部屋なんだ。)
シリル「えっ、僕イリアと同じ部屋で寝るの?」
イリア「そうよ?」
シリル「無理無理心臓持たないって」
イリア「ほらさっさと行く。」
シリル「もうちょっと危機感持ってよ!」
ジーク「あづぃ…」
アリィ「ジークの声が消えちゃった…。」
ジーク「……なんでアリィは平気なんだ…」
シリル「暑さに強いのかもね。」
アリィ「さぁ…?どうにかしてあげられれば良かったんだけど…」
イリア「アリィ、貴方悪魔として指名手配されてるのよね?なんの魔法が使えるの?」
アリィ「…どうせバレてるなら言ってもいいけど、あんまり今役に立つものは無いよ。」
イリア「単なる好奇心よ。このままずっと暑い暑い言いながら進んでたらテンションも下がっちゃうわ。あと何かあった時の対策にも使えるもの。」
アリィ「…そういうことなら…私が使える魔法は基本筋肉の増強くらいだよ。それで腕の筋肉を増強させて力持ちにしたり、足の筋肉を増強させて高いとこにジャンプしたりくらいかな…。」
(…イニディア村で使ったバリア…あれは…本当はただのバリアじゃない…でも…これはコントロールが上手く言ってないものだし言わなくてもいいかな。)
シリル「なるほどね…悪魔の解体が楽そう!」
アリィ「…それだけ?」
シリル「それだけだよ?だって言われても僕が使えてる訳じゃないから…これくらいの感想しか出てこなくて…もっと何か言った方が良かった?」
アリィ「ううん。大丈夫。ところでジーク、霊圧消えたけど大丈夫…?」
ジーク「…無理…ちょっと止まって…水飲みたい…。」
イリア「わかったわ。焦らなくていいから必要な分しっかり飲んで頂戴。アリィも。」
アリィ「え?私は別に喉乾いてないし…」
イリア「ダメよ。飲める時に飲んでおかないと。特に貴方達セヌス人は水分を必要とする人種なんだから。それに気づいた頃には手遅れなんてこともあるわ。」
アリィ「飲みます。」
イリア「よろしい。」
シリル「あれ?ポルポルちゃんは?」
アリィ「え?」
アリィがキョロキョロと辺りを見渡すと、一同から遅れているジークより、更に後ろに白い何かが見える。
アリィ「ポルポルだいじょ…」
アリィがポルポルの様子を見に近づく。
アリィ「と、溶けてる…!?」
ポルポル「…ギ……ィ……」
アリィが近づくとそこには半分液状化したポルポルがいた。
アリィ「こ、ここここれどうすれば…!?」
ジーク「…氷で冷やしたら固まるんじゃねぇの?」
アリィ「アイスじゃないんだから…というか氷なんてどこに…」
イリア「氷は無いけどいいお知らせよ。もうすぐで1つ目のオアシスよ。」
アリィ「ほんと!?あっでも…どうやってポルポルを持とう…。」
ポルポル「ギィー」
ポルポルがアリィに手を伸ばす。
アリィ「もしかして抱っこ?」
ポルポル「ギー」
アリィ「分かったよ。ほら。でもこれで本当にいいの…?」
アリィがポルポルを抱き上げる。
ポルポル「ギッ。」
アリィ「まぁ本人がいいならいっか…。というかポルポル、おててあったんだね…。」
イリア&シリル「おてて…」
イリア「ジーク、あともう少しだからそれまでの辛抱よ。」
ジーク「…まだあるのか…昔ここ道があったのになんで無くなったんだよ……くそ……」
シリル「そりゃだって毎年砂に埋もれてたら整備なんてやってられないからね。」
イリア「想定以上にセヌス人への負担が大きいわね。次からはもっと多めに休憩をとりましょう。」
アリィ「もし追っ手が来たら…」
イリア「大丈夫よ。砂漠なんてなんにも特徴が無いもの。撒きたい放題よ。シリルもいるしね。」
シリル「まかせて。」
アリィ「…分かった。」
イリア「…もうすぐお昼ね。オアシスで長時間休みましょうか。ジークは恐らく脱水症状を引き起こしているから。」
アリィ「よくわかったね…!?」
イリア「私は研究者とは名乗ったけど医療の研究者だもの。これくらい分かるわ。でもだからって人任せにしないで、違和感があったらすぐに自分の口から言ってちょうだい。」
アリィ「うん。」
ポルポル「ギッ。」
アリィ「着いたー!!」
シリル「皆お疲れ様。」
イリア「私ちょっとジークを診るから、屋内にいるわね。」
シリル「分かった。」
アリィ「私も見ていい?」
(あまり引き剥がされるのはよくない…)
イリア「いいけど…面白くも何も無いわよ?」
アリィ「いいからいいから。」
イリア「…?」
アリィ(よし……)
イリア「ジーク、自力で行けるかしら?」
ジーク「これくらい行ける…」
ジークは足を引きずりながらのそのそと2人と一生に屋内へ入っていく。
シリル「…ポルポルちゃんは行かないの?」
ポルポル「ギッ」
シリル「僕のことを随分買ってくれるのは嬉しいけど…あまりヒトを信用しすぎたらいけないよ。」
ポルポル「ギ?」
ポルポルがシリルの腰に携えた薬瓶に近付く。
シリル「…やっぱりアヴィニア人には分かるんだね。でもこれはダメだよ。イリアの開発でまだ開発段階なんだ。」
ポルポル「ギィー」
ポルポルは薬瓶を咥えシリルから引っ張りだそうとする。
シリル「こらダメだよ。…これは本当に開発段階で危険性がある物なんだ。必ず、完成したら渡すから。」
ポルポル「ギィ……」
シリル「ごめんね。…君は一体どのアヴィニア人なんだろうね。」
シリル「記憶の守り人『ノア』、星と月の導き手『アストライアー』、不滅の『ラクタ』、君は…」
ポルポル「ギー?」
シリル「…分かんないか。」
(深い思考能力はないか…典型的な悪魔と同じ…だけど友好的。)
シリル「…正直もうダメなんじゃないかって諦めかけてた。君のおかげで希望が見えてきたよ。」
ポルポル「ギィ?」