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#普通
野々さくら
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ありあ
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数日後。
怪異探求倶楽部の部室には、いつもの穏やかな空気が流れていた。
ふと思い出したように、信愛が口を開く。
「そう言えばさ、三瓶先輩、自首したらしいね」
焔垂は静かに頷く。
「ああ・・・らしいな」
さくらも新聞で見た話を思い出す。
「三瓶だけじゃなくて、江古田とか
その他の人たちも、みんな自首したらしいよ
そのせいで職員室えらい騒ぎだったね」
「まぁ、生徒が殺人の罪で逮捕されちゃったからね」
「これで千歳さんも報われるかな?」
茜の呟きに、信愛は小さく微笑んだ。
「うん・・:そう願いたいよね」
焔垂は何も答えず、窓の外へと視線を向ける。
まるで空の向こうに誰かの姿を探しているかのようだった。
「八乙女くん?」
信愛が不思議そうに声をかける。
「どうかした?元気ないね?」
焔垂はゆっくりと振り返り、いつもの調子で答えた。
「いや・・・別に」
「そっか・・・ならいいんだけど」
信愛はそれ以上は聞かなかった。
焔垂は何も言わず、再び窓の外へ視線を戻す。
その横顔には、どこか寂しさが滲んでいた。
その日の放課後の教室でも、信愛は焔垂の様子が気になっていた。
「何か元気無かったよね?八乙女くん」
さくらは静かに頷く。
「そりゃそうでしょ、信じてた
三瓶から裏切られたみたいなもんだからね」
「そう・・だよね・・・」
その時だった。
それまで黙っていた茜が静かに席を立ち上がる。
「ん?茜?どうかした?」
「ちょっとね」
短くそう言い残すと、茜は教室を出て行った。
「どうしたのかな?」
さくらが首を傾げる。
信愛は小さく肩をすくめた。
「さぁ・・・」
◇ ◇ ◇
夕陽に照らされた屋上では、焔垂が床に腰を下ろして俯いていた。
青空を見上げながら、ぼんやりと呟く。
「三瓶先輩・・・」
その独り言を遮るように、元気な声が響く。
「よっ♬|傷心《ハートブレイク》♬」
茜だった。
焔垂は呆れたように顔を上げる。
「は?なんだよそれ」
茜は笑いながら肩をすくめる。
「|傷心《しょうしん》だよ♬傷心♬キズゴコロ♬」
焔垂は苦笑するように鼻で笑った。
「誰も都会で大事な何かを無くしてねーわ」
「てかさ? 何?泣いてんの?
切ないメモリーが胸焦がしちゃってる感じ?」
「う、うるせーな、てか古いんだよバカ」
そう言って焔垂は茜に背を向ける。
その隙に制服の裾でそっと涙を拭った。
もちろん、茜には気付かれていない、そう思っていた。
「バカはお前だよ♬」
軽口を叩いた次の瞬間、茜は後ろからそっと焔垂の背中を抱きしめた。
それに動揺した焔垂は慌てて身をよじる。
「ちょ、茜、なんだよ急に」
だが茜は腕を緩めない。
むしろ優しく抱きしめる力を少しだけ強める。
「こういう時ってさ、我慢しなくていいって思うよ?」
焔垂は視線を逸らしたまま、小さく首を振る。
「な、何だよ我慢って、俺は別に──」
言葉は最後まで続かなかった。
茜は呆れたように笑う。
「バーカ♬」
その一言は、不思議なくらい優しかった。
「強がっちゃってさ」
焔垂は唇を噛み締める。
「俺は・・・」
喉まで込み上げてきた想いが、言葉にならない。
沈黙だけが二人の間を流れていく。
茜はそんな焔垂の背中に頬を寄せ、静かに囁いた。
「泣いちゃえば?」
焔垂は思わず振り返る。
「は? 何言ってんだよ!男が
そんな簡単に涙見せれるかよ!」
茜は真っ直ぐ焔垂を見つめる。
「性別関係ある?」
「え?」
その一言に、焔垂は目を瞬かせた。
「男だろうが女だろうが、涙は出ちゃうじゃん?」
焔垂は言葉を失う。
「そ、それは・・・」
反論しようとしても、何も浮かばない。
茜は優しく微笑む。
「いいじゃん、泣いたってさ」
焔垂の喉が震える。
「茜・・・」
堪えていた感情が、少しずつ崩れ始めていた。
「ぐすっ・・・」
小さな嗚咽が漏れる。
茜はその声を聞いて、そっと焔垂の肩に手を添えた。
「私が側に居てあげるからさ
泣いちゃえ♬泣いちゃえ♬」
焔垂は震える声で答える。
「ありがとう・・茜・・・」
茜は焔垂の名を優しく呼ぶ。
「焔垂・・・」
そう言うと、茜は焔垂の肩をそっと抱き、自分の方へゆっくりと向き直らせた。
互いの距離が、少しずつ縮まっていく。
「あ、茜・・・」
戸惑いを隠せない焔垂を見つめながら、茜は静かに顔を近づける。
焔垂はその瞳を見つめ返し、やがて抵抗することなく、ゆっくりと目を閉じた。
コメント
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「File2−ネメシスの影− 36」、読み終えました。三瓶先輩たちが自首して一区切りついた日常が描かれているけど、焔垂の心の整理がまだついてない感じがすごく伝わってきました。屋上で茜が「泣いちゃえば?」って言って抱きしめるシーン、あの「性別関係ある?」の台詞がすごく優しくてじんわりきました。焔垂が涙を拭う場面も含めて、静かな情感が丁寧に描かれていて、心に残る回でした。続きが気になります。