TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
シェアするシェアする
報告する

事件数日前。実家の図書館で事務員をしている渚冬。璃偉太、佑果から自分たち宛の郵便が届いたので、歌華たちに見せていた。

‘久しぶり。元気にやっているかな。うちの村には最近、女の子が引っ越してきた。この村で生まれて別の場所に住んでいたけれど、この村に戻ってきたんだ。この村に人が引っ越してくるのは僕たち以来だからいつか君たちにも紹介したい。よかったら今度、会いにきてくれないだろうか’

「いきなりね。どうしたのかしら」

歌華はかなり怪訝そうな顔をしている。

「今、何してるのかなって思ったんじゃない?」

「18年、会ってないのに?」

陶瑚の話にもあまり耳を傾けず、手紙を読み続ける。

「どれくらい会ってないの?」

「望夢さんの葬式以来じゃない?」

磨輝が尋ねて幸呼奈が答える。そう。磨輝にとってはまだ生まれる前の話だから。渚冬が「どれどれ」と手紙を歌華から取り上げる。「ちょっと!」と小突かれながらもパソコンを開く。乗り換え案内のサイトに自分たちの家と封筒に書いてあった住所を入力し、検索にかける。

「やっぱり遠いな……」

遠いことは分かったので、泊まらせてほしいことを手紙で伝え、皆も有休や代休を使って(磨輝、茉津李はまだ学生なので夏休み真っ只中)お盆前に行くことになった。

そして出発当日。時刻は5時。

「これ塗りなさい」

陶瑚が磨輝に化粧水を塗りたくる。薬塗りの要領だ。

「あとはこれと、これと……」

「注文の多い料理店かな」

幸呼奈が自分も色々と塗りたくっていることはよしとしてボソリとツッコミを入れる。

「日傘よし!帽子よし!日焼け止めよし!ローションよし!」

そうこうして色々と塗りたくられていよいよ出発。今は新幹線の車内。

「夏休み……」

「仕方ないだろう。せっかく呼んだもらえたんだから」

「だって覚えてないよ」

「実は俺もそこまで覚えている訳でもない」

あまり気が乗っていない磨輝に茉津李が話している。うだうだ言いながらも何度か乗り換えを経て辿り着いた村の駅。改札を通り抜ければ、そこはまるで別の世界にでも来てしまったのかと感じざるを得なくなるほど自分たちがいた場所とはかけ離れた村だった。雲1つもない空の下、集まる木。中心にそびえ立つ特別大きい木。異様な気配で、どこかおどろおどろしさすら感じる。素直に楽しそうと言える雰囲気ではなかった。荒らしの前の静けさのような印象を感じていた。


一方、宮藤家。最近、村に自分たち以来のニューフェイスが来たから機会があったら紹介したい手紙を送ってしばらくしたら、皆でお盆前に休みを取るから泊まりに来てもいいかという 。だったらやることは明白。部屋を用意しておこう。

「磨輝くんも来てくれるらしいよ」

「そう。楽しみ。もう高2くらいかなぁ」

一緒に色々と用意をしながら璃偉太は佑果に手紙の旨を伝えていた。そういえばもう1人、このことを伝えなければならない人間がいる。向かおう。車で1時間半。この村で唯一の病院だ。慣れたように用がある人間はすでに受付で仕事をしていた。

「望叶」

「あ、ああ。2人とも」

2人が望叶と呼んだその人は2人に気づくと急いで机の上に散らばっていた本やら書類やらを急いで片付けた。そして璃偉太と佑果は望叶に村に最近、引っ越してきた女の子を紹介するために文月家がお盆前に泊まりに来ることを伝えた。

「お盆まではここにいるんだよね?できる範囲でいいから手伝ってほしいの」

「……できることがあったら言って。羽菜ちゃんには私から言っておくから……」

「ありがとう」

佑果と璃偉太の言葉に少し間をおきながら答える望叶。しかしその目は2人を見ているようで見ていなかった。彼女の机の引き出しには死者蘇生や血の花の文献、この村で編み出された特殊すぎる方法でずっとずっと保管されている望夢の血の花が誰にも知られないように隠されていた。2人が帰ったことを確認して望叶は幸節家……最近、引っ越してきた少女の家に向かった。

「こんにちは、羽菜ちゃん」

「……望叶さん」

羽菜ちゃんと呼ばれるその少女が出てきた。そして望叶は彼女に例の話を伝えた。

「……っていうことなの。どうかな?最初は居づらいし、気まずいだろうけど、悪い人たちじゃないからさ」

「分かり……ました……」

「……銀俄くんも呼ぼうか。知ってる人いてくれた方がいい?」

「……はい 」

羽菜はずっと望叶の後ろから感じる悪意とも違う黒い感情を感じ取りながらも一緒にキャンピングパークへ行くことを決めた。一方、病院に戻った望叶。机の別の引き出しにずっと持っていたシリンジをずっと見つめていた。

「望夢……」

そして誰もいないどこかを見上げ、弟を名前を呼んだ。諦めと決意が入り混じったような瞳で、声を振り絞って。

迎えた当日。文月家がやってくる前にこっそりと呼んでいた様々な人々に望叶は……

loading

この作品はいかがでしたか?

31

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚