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〜幸呼奈〜

お盆休みも終わってしばらくたったある日。事件はまだ終わっていなかった。

「……っていうことがあったんだね?」

「そう……ですね……」

警察に私たちに起きたこと、私たちがやったことについて色々と説明をしていた。もう私たち姉弟が着いた頃にはもう何人か人に手を出していたこと、私たちが犯人を見つけ出したこと、羽菜ちゃんと銀俄くんが望夢さんの一部にされそうになったこと以外、特にこれというトラブルもないまま望叶さんを取り押さえられていたこと、そして……動機を聞いてしまったこと。望叶さんが18年、望夢さんの死を引きずっていたこと、引きずりながらも道具を揃えながらも禁術にまでは手を出せずにいた中、羽菜ちゃんが引っ越してきたことで羽菜ちゃんと銀俄くんが兄妹で、しかも花屋敷家にルーツがある、すなわち自分たちの血縁であることを調べてしまったこと、冥界と直接繋がれる異能者である私たち姉弟が村に来るということが重なって犯行に及んだこと、犯行が誰にも知られず終わったら望叶さんは自決しようとしていたこと、私たちが少しの間だが、冥界に行ったこと、そこで望夢さんに会ったこと。そして……磨輝が治癒の異能に目覚めたので、誰も死ななかったこと。

「冥界だの、血の花だの、死者蘇生だの、異能だの……まるで異世界だな」

「っていう割に信じてくれるんですね」

「まあ本人たちを目の前にしちゃあね……信じるしかないでしょ」

理解の早い警察で助かった。実はこの人以外には頑固な警察もいて、実際にお姉が近くにあった冷蔵庫を持ち上げて見せたり、お兄が分からないハズのものを見て当てたり、茉津李が近くにあったものを目の前で浮かせて見せたり、私が警察を少しだけ素直にしてみたり、陶瑚が警察の記憶をのぞいて知らないハズのことをペラペラと話して見せたり、磨輝も自分の怪我を治して見せたりした。

「なるほど。話してくれてありがとう。望叶さん。君の処分についてはこれから決まっていくよ」

「……はい」

私たちのやることはもう終わった。あとのことはもう法と望叶さんの問題だから。

「ではお世話になりました。私たちはこれで」

「うん。お疲れ様。お気をつけて」

「あ、最後に1つ」

完全に帰るムードだったが、磨輝が扉を少しだけ開けて顔を覗かせた

「ど、どうした?」

「こんなこと言いたくありませんけど……」

じゃあ言うなよというような顔をしている警察。

「望叶さんはそんなに頭がいい人じゃない」

「……え?」

「証言、聞いただけで嘘ついてるの分かるし、望夢さんの部屋は鍵閉めておかないし、 そもそも殺せてもないし」

最初の2つはともかく、最後のは磨輝が覚醒できたからでは?一応、心の中で留めておく。

「うぅ……」

「貴方は素直な人です。犯罪は向いてませんよ」

いい言葉なのか悪い言葉なのかは分からないが、少なくとも磨輝も傷つけようとして言っているわけではない。

「うん……そう……かもね」

「はい!」

決してありがとうとは言わない望叶さん。そして気づかない磨輝。

「それから……」

「さっさと帰れ!」

まだ続けようとしていた磨輝だが、警察からツッコミとともにカツ丼の器が飛んでくる。磨輝も懲りたのか私たちに着いて帰って行った。


それから更に数日が経って。何とあの警察、事件を公にせずにいてくれたのだ。冥界やら、血の花やら、死者蘇生やら、異能やらなんていうものが世間に知られようものならどうなるか分かったものではないから。村の人たちに明かすだけに済ませてくれたのだ。銀俄くんと羽菜ちゃんも学校でも家庭でうまいこと誤魔化してくれているらしい。そして行動力が前にも増したとか増してないとか……それが彼ららしさならそれはそれでアリだろう。そして自分たちが兄妹であることも隠さなくなったという。今度、お父さんの故郷の韓国に言ってみるのだという。そして私たち文月家は……宮籐家と連絡先を交換した。18年前はここまで連絡ツールが発展していなかったからね。連絡先まで交換できていなかったのだ。璃偉太さんと佑果さんは今でも時々、望叶さんに会いに行っているそうだ。望叶さんは捕まったというのにどこかつきものが取れたような顔をしているという。ちなみに被害者たちも望叶さんを許した訳では全くないが、彼女が彼女なりに色々なものを見てきて、色々なことを考えてきたことだけは知っていてくれているらしい。そして私たち文月家は……特に何か変わった訳ではない。お姉は相変わらずスゴい(色々な意味で)獣医として名を馳せているし、お兄と私は図書館で両親にこき使われているし、陶瑚は患者の相手をしているし、茉津李と磨輝は残りわずかな学校生活に勤しんでいる。変わってはいないが……ずっと止まっていた宮籐家との時間が動き出したことには本当に喜びで溢れている。私たちの毎日はまだまだ続く。

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