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帰ってきて早々母に呼び出されてしまった。
席に着くやいなや大きなため息を一つ。
母「どうして連絡くれなかったの」
涼香「充電切れてたから見れなかった」
咄嗟に目を逸らし嘘で誤魔化してしまった。
母の目を見てしまうと全てを知られそうで怖かった。
母「はぁー…」
母は携帯を取り出しながら何処かに電話を掛け始める。
その数秒後、ポケットにしまっていた携帯が鳴り出した。
涼香「?!」
母は私の嘘など見透かしてしたのだ。
電話を切った母の顔は呆れと怒りに満ちていた。
母「なんで嘘なんかついたの」
涼香「……。」
母「黙ってちゃ分からないでしょ」
涼香「……。」
母「弁護士になる気あるの?聞いてるの?」
涼香「……。」
母「まったく…何の為に引っ越したと思ってるのよ。 あなたの夢を叶える為でしょ!あなたの為に高い学費まで払ってるのよ!」
ずっと怒りを抑える為に握っている拳は限界に近付くに連れてぷるぷると震える。
そして、一気に溢れ出た。
涼香「いい加減にしてよ!
高校はお母さんが強制的に決めたからでしょ!!私の意見なんて聞く耳持たなかったじゃん!『あなたの為』とか言ってるけど全部自分の為じゃん!!」
母「何?!口答え?私は涼香の為を思ってやってあげたのよ!あなたは一流の弁護士になりなさい!じゃないと…じゃないとアイツら見返せないじゃない!!!」
やっと母の本音を聞けた気がする。
最初から母の目に私は映ってなどいなかったのだ。映っていたのは見捨てた家族だけ。
母「はぁ……はぁ………っ!!ち、違…これは……」
一気に吐き出して正気に戻ったのか自らの発言を訂正しようとする。
この時、私の中の何かが崩れ落ちる音がして母の言葉さえ聞こえて来ない。
そして、とてつもないくらいの吐き気に襲われた。
(嗚呼、吐きそう)
気付けば私は吐いていた。
床には吐瀉物が広がっていてまた嘔吐する。
しかし、今頭の中にあるのはとにかく吐きたいということだけだった。
吐いたら私の中にある嫌な事全部が一緒に吐き出てくれると思った。
だから、もう出ないと分かっていても嘔吐いてしまう。
(吐かなきゃ…吐き出さなきゃ…吐きたい吐きたい吐きたい!!!)
涼香「あ”あ”ぁ”……が…お”ぇ」
母「キャーー!涼香!!」
必死に口の中に指を突っ込みながら嘔吐く私を見て母は怯えていた。
そんな母の姿を見て今までにない高揚感を感じた。
涼香「ふふ……ゔぇ…ふっ…お”ぇ」
(もう胃液しか出ないや)
満足した私は吐瀉物をそのままにして風呂場へ向かった。
嘔吐した際に汚れた服はゴミ箱に投げ捨てその日は丁寧に髪を洗った。
(もう我慢しない…これからは私の生きたいように生きる)
その日から私は母の言葉にだけ一切耳を傾けることはなかった。
そんな日々が続き最初は反発していた母もとうとう諦めたのかお互い会話をすることも無くなった。
『おはよう』も『行ってきます』も『ただいま』もそして名前さえも交わすことは無くなりほぼ他人に近かった。
そんな日の朝、起きてリビングへ向かうと私の分の朝食だけ用意されていなかった。
(やり返しのつもり?)
父「どうして涼香の分の朝食がないんだい?!」
母「何言ってるのあなた。
うちに子供は居ないわよ」
父「何を言って」
母「冷めないうちに早く食べちゃって」
今まで黙って見ていた父が久しぶりに口を開いたかと思えば母に強く意見できないでいる。
(情けない男)
前から父は母に逆らうことができずずっと傍観者のような存在だった。
我が家やこんな状態だから祖父母もかなり困り果てていた。
涼香「はぁー…」
仕方ないので駄菓子屋まで行くことにした。
外は相変わらず暑く微かに陽炎が動いていた。
こんな猛暑の中歩いて5分で額から汗が垂れてくる。
涼香「暑っつい……!」
(なんで朝からこんな事してるんだろう)
不満を心の内に溜めながらも駄菓子屋までの足取りを止めることなく進んでいく。
やっとベンチが見えてきた頃朝から飲まず食わずで10分以上猛暑の中を歩いて来たからか足元がふらつき、視界がぼやけてしまう。
涼香「あと少し……もう少し」
そして私は駄菓子屋の前で倒れてしまった。
パタパタ…
丁度いい風を感じて目が覚めた。
店主「大丈夫かい?」
私の顔を覗き込むようにおばあちゃんがうちわを持って心配していた。
額の違和感を感じ触ってみると冷えピタが貼られていた。
店主「大きな音がしたと思えば嬢ちゃんが倒れててね〜、どうやら軽い熱中症みたいだね」
涼香「ありがとうございます。助かりました」
ぐうぅぅ…
安心したせいか腹が鳴ってしまった。
恥ずかしさで顔が真っ赤になる。
店主「待っててな〜」