テラーノベル
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「それで?」
「なんかうちの前で身売りしてる子がいてさ」
「へぇー」
後から来たもう1人が俺の顔を覗き込む
優しそうな顔と声
それなのにどこか威圧的な空気
「君は‥‥どうしたいの?」
「え‥‥俺‥‥?」
「この子は俺の連れだから。ね、君」
中年の男性がこの場から俺を連れ出そうとする
俺は腕を引かれ、男性の後を一歩ふみだす
「俺が買い直そうか?」
「は?」
中年男性が険しい顔で振り向く
優しげな男は腕を組んで俺たちを見ている
「いくらで買われたの?5万?10万?」
「お、俺だってそのくらい払える!」
「じゃあ50万」
「は?お前馬鹿じゃないのか?」
「払うよ50万。すぐにでも」
「‥‥何なんだよ、チッ」
男は腕を手荒く振り解くと夜の街へと消えて行った
「叶さん、ホントに買うの?」
「本当に買うよ。ね、買われたいんでしょ?」
「あ、いえ‥‥そんな‥‥」
どんな金額が飛び出てんだ?
俺はこれまでの会話が怖くて言葉が出ない
「ふわっちは仕事でしょ?僕この子連れてくね」
「あんまりいじめないでね」
「そんな事しないよ」
叶さんと呼ばれたこの人が俺を見つめる
どうしよう
どうなるんだ?
「僕の車乗れる?ちょっと話ししようか」
「あ‥‥」
「まだ何もしないよ。これは本当」
「何の話しをするのか‥‥」
「君のこれからの事じゃない?」
「これから?」
「君はこの店で働きたかった?‥‥違う?」
「そ、そうです!」
「じゃあ行こうか」
この店の関係者?
そうだよな
ホストっぽい人が挨拶してたんだから
だったら話しを聞いてもらうのは悪くない
俺はこの人が乗って来た車へと乗り込んだ
車に乗り15分くらいすると、高級な建物が建つ住宅街に停まる
黒く豪華な建物の前
「ここで話す?それとも中に入る?」
「‥‥ここが良いです」
「なるほどね」
何が『なるほど』なのかわからないが、彼は優しく笑いかけてくれた
「擦れてそうに見えるのにそうじゃないんだね。てっきり僕に擦り寄って来るのかと思った」
「え?」
「良いね、ますます気に入ったよ君の事。名前聞いても良い?」
「小柳ロウです」
「小柳‥‥こや、かな?それともロウ?」
「‥‥‥‥‥‥」
「そんなに緊張しないで‥‥って言っても無理だよね」
「‥‥すいません」
「謝る必要ないんだから。じゃあ『こや』って呼ぶね?僕は叶」
「叶さん」
「うん、良いね。こやとは馬が合いそう」
「そう‥‥ですか」
「じゃあ早速手短に話すね?こやはお金が必要なんだよね。もしも条件を飲めたらお金とここの部屋をあげられるよ」
「え‥‥部屋?」
「そう、ここには僕と他2人がいるんだけど、そこに君の部屋も作ってあげられるよ?」
そんな良い話しがあるのか?
条件が怖すぎる‥‥
「こっちの条件は、君の身辺調査をこちらが行う事。僕の言う事は絶対なのと、仕事はホストじゃなくてこの家の事をして欲しい。家政婦とは違うんだけど、似てるようなものかな?その対価として‥‥さっき言った『50万』を毎月あげるよ。部屋代は取らないから」
「え⁈毎月‥‥ですか?」
「そう、毎月。でもそれなりの事はしてもらうよ。分かってるよね?もう一度言うけど、僕の指示には絶対に従ってもらうよ?」
お金の心配はなくなった
それなりの対価を払えば‥‥
「どうする?‥‥今決めれそう?」
「俺‥‥Ωじゃないんですけど、叶さんがその‥‥俺の事‥‥そう言う目的でなら‥‥」
「僕は構わないよ。Ωが欲しい訳じゃないからさ。でも奉仕はしてもらうけどね」
「‥‥俺、経験が無くて‥‥叶さんの要望に応えられないかもしれません」
「かまわないよ、そこは僕が教えてあげるから」
酷い事とかされるかな
でも毎晩違う男に買われるよりはマシなのか?
考えも知識も無い俺には叶さんの言葉に頷くしか出来ない
「それならよろしく‥‥お願いします」
「こちらこそよろしくね」
俺はとんでもない世界に踏み入れてしまったのかもしれない
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コメント
2件
ふわっち~かなかな~ ま、まぁ こや 拾ってもらって良かったねぇ~♡ こや これからどうなるんやろうな~ 楽しみです✨️