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유리
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コメント
2件
松田さんと怪盗キッドの間に新たな思い出(?)が出来た…… これからどうなるんだろ、
いやあ、第6話、めっちゃ熱かったですね! 松田さんが快斗の正体に完全に気づく瞬間、読んでてこっちまで息を呑みました。「2個ぐらいあるんじゃねーか?」って不敵に聞くあたり、もう確信してるんだろうなっていう余裕が感じられて痺れます。過去のエピソードが一本の線で繋がったときの快斗の動揺も、松田さんの「3個目じゃねぇか」っていうラストも、温かくて切なくて…ほんと良い回でした!
【第六話:不敵な問いと、確信の夜】
「……なぜ、攻撃しない?」
静寂が支配する屋上で、松田の低い声が快斗の鼓膜を叩いた。
サングラスの無い松田の瞳は、見透かすように鋭い。
「いつものお前なら、トランプの弾丸でも煙幕でも、いくらでも繰り出せるはずだろ。現にさっきから、その右手がポケットの中でピクリとも動いちゃいねぇ……。なぁ、怪盗さんよ」
快斗はシルクハットの影に顔を隠したまま、固く唇を噛み締め、沈黙を貫いた。
変に声を出せば、動揺からいつものポーカーフェイスが完全に崩れてしまう。
そんなキッドの頑なな態度を見て、松田はふっと口元を釣り上げ、不敵な笑みを浮かべた。一歩、また一歩と距離を詰めながら、確信に満ちた言葉を投げかける。
「お前……俺に対して、個人的な思い入れでも、2個ぐらいあるんじゃねーか?」
「っ……!?」
モノクルの奥で、快斗の目が見開かれた。
心臓が、今日一番の警鐘を鳴らす。
2個。
ひとつは、小学生のあの日、爆弾から自分を救い上げてくれた、煙草の匂いのする広い背中。
もうひとつは、3年前のあの日、観覧車で死のカウントダウンを待つこの男を、中学生の無茶なマジックで引きずり下ろしたあの夜。
(気づいてる……!? どこまで、知ってて言ってやがるんだ……!)
図星すぎるその指摘に、快斗の完璧なポーカーフェイスが完全にひび割れた。松田の鋭すぎる直感と洞察力は、快斗の想像を遥かに超えていた。
「――しまっ、」
これ以上ここにいては、すべてを剥ぎ取られる。
恐怖に似た焦燥感に駆られた快斗は、松田の胸元を目がけて、ポケットから強引にトランプ銃を抜き放とうとした。
傷つけるつもりはない。ただ、一瞬の隙を作って、この場を無理やりにでも突破するために――。
「甘ぇよ、ボウズ!」
だが、動揺したキッドの動きは、松田のプロの目から見ればあまりにも隙だらけだった。
松田はキッドが銃を抜くよりも速く、鋭い踏み込みでその右腕を掴みにかかる。ボクサー上がりの、電光石火の容赦ない一撃。
「くっそ……あぶねぇっ!」
快斗は咄嗟に身を翻したが、松田の鋭い手刀が快斗の顔のすぐ横をかすめた。
その衝撃で、白いシルクハットが夜風にさらわれて宙を舞い、顔を隠していたモノクルがパチィンと音を立てて弾け飛ぶ。
月光の下に晒されたのは、まだあどけなさの残る、しかしあの日の面影を色濃く残した、一人の少年の素顔だった。
「お前――!」
「……っ、またな, お巡りさん!!」
顔を見られた快斗は、なりふり構わず手元に残っていた最後の煙幕弾を足元に炸裂させた。
今度は松田もその強烈な爆煙に一瞬だけ視界を遮られ、掴みかけていたキッドの腕が指先からすり抜ける。
ゴホゴホと激しく咳き込みながら、松田が煙を払ったときには。
白いハンググライダーが、夜の帳へと遮二無二逃げていく後ろ姿だけが、遠くに見えた。
「ハァ、ハァ……チッ、最後の最後で、とんだ大捕物になっちまったな……」
松田は乱れた髪を乱暴にかきむしり、地面に落ちていたキッドのモノクルの破片を拾い上げた。
そして、今しがた月光の下ではっきりと目視した、あの少年の「素顔」を思い返す。
数年前、爆弾の前で泣きそうになりながらマジックを見ていたボウズ。
3年前、作業着姿で自分を死の淵から引っ張り上げた生意気な中学生。
そして今夜、自分の命を気遣うように、攻撃の手を止めて逃げ出した白い大泥棒。
その点と点が、松田の頭の中で、完璧に一本の線で繋がった。
「……ハッ。2個どころか、3個目じゃねぇか」
松田は拾い上げた破片をポケットにしまい、夜空を見上げて、苦笑交じりにぽつりと呟いた。
「やっぱ、あいつ――あの時の、ガキだな」
確信は、もう揺るぎない事実へと変わっていた。
取り残された屋上で、松田陣平は、かつて自分が救い、そして自分を救ってくれた「大切な泥棒」の正体を、完全に突き止めたのだった。