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haru
46
ラムネ@夏目様教者
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「いや…」
「恭也、言ってよ。何?」
言いかけてしまった時点で遅かった。
このまま言わなくても、きっとドルの力で聞き出される。
だったらもう、言ってしまおう。
「…陽煌さんは陽雅さんの事、よく思ってないみたいですよ」
「どういう意味?」
「分かんないですけど、快が言ってたんです。多分、オーラを見てそう感じたんだと思います」
二人の間に沈黙が走る。
少しして、陽雅さんが口を開いた。
「そんなに快くんの言う事を信じるんだね。しかも兄ちゃんの事悪く言うなんて、恭也は悪い子だね」
陽雅さんが立ち上がり、こっちへ来る。
そして、俺の腕を掴んだ。
「またお仕置しないとね。ほら、行くよ」
(お仕置…)
あの日の記憶が蘇る。
すごく痛かった。もうあんなの、されたくない。
「嫌です」
「ダメだよ。ほら、来て」
陽雅さんが俺の肩を掴んで引っ張り、無理やり俺を立たせた。
そのまま扉へ向かおうとする陽雅さんに俺は抵抗する。
「嫌です!」
俺がそう叫んだ時、リビングの扉が開く。
「恭也!」
目を向けると、快がこっちへ来ていた。
「快?」
「陽雅さん、やめてください。恭也、嫌がってるじゃないですか」
「快くん。恭也の事が好きだから助けに来たの?」
「違いますよ。いや、友達としては好きですけど」
快の後ろから零斗さんも来る。
「おい陽雅。やめろよ」
「零斗まで何。これは俺と恭也の問題なの。口出さないでよ」
「悪ぃけど口は出すぞ。お前の事は俺が止めるって言っただろ?」
「恭也にお仕置するだけだよ。恭也が悪い子だから」
「悪い子ってお前…陽煌さんの事悪く言われたからって、お仕置するとかおかしいだろ」
「何。零斗も兄ちゃんの事悪く言うの?」
陽雅さんは俺から手を離して、零斗さんの方に体を向ける。
その様子を見て、快は慌てて俺の腕を掴んで引っ張り、陽雅さんから離させる。
「恭也、大丈夫?」
「ありがとう。もう大丈夫」
俺がニコッと笑うと、陽雅さんがこっちを見て、怪訝そうな顔をする。
そして俺たちの前まで歩いてきた。
その様子を見て、快は俺を守るように腕を掴み、自分の方へ引き寄せる。
そんな快を見て、陽雅さんが言った。
「…恭也に気安く触らないで」
そう言った後、快の体を両手でドンと押す。
その反動で快は尻もちを着いて倒れた。
「痛っ…」
「おい陽雅!」
零斗さんが怒鳴りながら陽雅さんの元へ行き、胸ぐらを掴む。
「てめぇ何してんだよ」
「快くんが恭也にちょっかいかけるからだよ」
「ちょっかいなんてかけてねぇだろ」
「零斗もいい加減現実見なよ。快くんは零斗の事なんて好きじゃないんだよ。本当に好きなのは恭也なの」
「違ぇよ。快は俺が好きだ。甘い匂いもするから分かるんだよ」
「零斗じゃなくて、恭也の事考えてるんじゃないの?」
「お前ちょっと黙れよ」
零斗さんが本気で怒っている。
止めた方がいいのは分かってるけど、割って入る勇気も無く、俺はただ、しゃがんで快のそばに居ることしか出来ずにいた。
ふと扉の方を見ると、いつの間にか泰輝さんの姿が目に入る。
泰輝さんは困った顔で二人の様子を見ている様だった。
「快くんは零斗の事なんて好きじゃないよ。全部、恭也を油断させるための芝居なんだから」
辺りがシーンと静まり返る。
少しして、零斗さんが口を開いた。
「…ふざけんなよ。お前がそんな事言う奴だなんて思わなかった。お前となんか絶交だ」
零斗さんは陽雅さんから離れて、こっちへ来る。
「二人とも行くぞ」
零斗さんはそう言ってしゃがみ、快を立たせた。
そして快を支えながら開いたままの扉へ向かう。
俺は悲しそうに零斗さんを見ている陽雅さんを見て、ただ立ちつくす。
そんな俺を見て、立ち止まった零斗さんが言う。
「おい、あお。行くぞ」
「でも…」
立ち止まったままの俺の腕を、零斗さんが掴み、再び歩きだす。
そのままリビングを出ようとすると、陽雅さんがこっちへ歩きながら言う。
「待ってよ零斗」
「来んな! お前とは一生口聞きたくねぇんだよ」
陽雅さんに背を向けたままそう言う零斗さんを見て、陽雅さんは立ち止まる。
「泰輝。悪ぃけどアイツの事頼んだわ」
泰輝さんは零斗さんの言葉を聞いて、ゆっくり頷く。
そのまま俺たちは陽雅さんの家を出た。
歩きながら快に言う。
「助けてくれてありがとう」
「ううん。心配でこっち来て正解だった」
「零斗さんもありがとうございました」
「別に気にすんなよ」
「あの、本当に陽雅さんと絶交しちゃうんですか?」
少し間が空いたあと、零斗さんが言う。
「…そうだな。アイツの事、許せねぇから」
「そうですか…」
「あおもしばらくアイツと会うのやめろよ。次は何するか分かんねぇし、俺も止めれねぇから」
零斗さんの言葉を聞いて、俺は黙り込む。
陽雅さんとしばらく会わないなんて、嫌だ。
でも、零斗さんの言う通り、今の陽雅さんは危険だ。
会いたい気持ちと会わない方がいい気持ちが交差する。
「…まぁ、無理にとは言わねぇけどさ。なんかあっても知らねぇぞ」
「…はい」
そして俺たちは東雲駅で別れ、零斗さんは快の家に行った。
電車に揺られながら、陽雅さんの事を考える。
今日の陽雅さんの感じからして、快の言っている事は当たっている気がする。
陽雅さんの裏で糸を引いているであろう陽煌さん。
陽煌さんの本性を暴いて、陽雅さんにもそれを証明すれば、陽雅さんも何か変わるかもしれない。
陽煌さんの事を知る、手っ取り早い方法は、泰輝さんに話を聞くことだろう。
(…まずは泰輝さんと話さないとな)
俺は小さく息を吐いた。
_________
バタンと閉まった扉を見つめている陽雅さんに俺は近寄る。
その時、陽雅さんの目から涙が零れた。
俺は陽雅さんの元へ駆け寄る。
「陽雅さん、大丈夫ですか?」
陽雅さんは声を震わせながら言う。
「ねぇ泰輝。なんで俺はいつもこうなのかな」
「えっ?」
「なんで俺はいつも、大切な人を傷付けるようなこと言っちゃうのかな。俺、こんな自分が大っ嫌いだよ」
「陽雅さん…」
胸がチクッと痛くなる。
陽雅さんが泣くところなんて、初めて見た。
もう嫌だ。陽雅さんが傷付く所をこれ以上見たくない。
「大丈夫です。陽雅さんは何も悪くないですから」
「ううん。俺が全部悪いんだよ」
「そんな事無いです。陽雅さん、俺の事助けてくれたじゃないですか。だから今度は、俺が陽雅さんを助けます」
「俺を助ける…?」
「はい。恩返しです。陽雅さん、今日はもう休んでください。その方がいいと思います」
「泰輝…ありがとう。そうするね」
陽雅さんはそう言って、リビングを出ていった。
俺はふぅっとため息を吐く。
(陽煌さんと話をしよう)
俺はリビングを出て、自分の部屋に向かった。
中に入ると、ベッドで眠る陽煌さんを見つめる。
陽雅さんにドルの力を使って、眠っている様子だ。
(そろそろ起きると思うんだけど…)
俺はベッドの前でしゃがみ、陽煌さんの顔を眺める。
なんだか少し、顔をしかめている様だ。
俺は陽煌さんの頭をそっと撫でる。
陽煌さんは口元を緩ませた後、呟いた。
「陽雅…」
陽雅さんの夢を見てるみたいだけど、今まで見た事がないくらい、優しい顔をしている。
これはきっと、お兄ちゃんの顔。
陽煌さんは陽雅さんの事が心から嫌いな訳では無いのかもしれない。
そう思いながらも陽煌さんの寝顔を見つめていると、陽煌さんの目がゆっくり開く。
俺と目が合うと、口の緩みは消えて、いつもの表情に戻った。
「…泰輝」
「陽煌さん。おはようございます」
俺はそう言ってニコッと笑った。
コメント
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灯依さん、第47話読みました。 今回すごく切なくなった…。陽雅さんの涙、初めて見たんじゃないかな。「大切な人を傷つけるようなこと言っちゃう自分が大嫌い」って言葉が胸に刺さりました。表向きは強いけど、実はすごく脆い人なんだなって。 泰輝さんの「今度は俺が陽雅さんを助けます」っていう台詞、優しさがにじんでて好きです。そして陽煌さんの寝顔で見せた「陽雅…」って呟きに、まだ分かり合える可能性を感じました。 次が気になります…!