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#R15
(株)姫神V
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「佐伯さん」 そろそろ来るだろうなと思っていた朝倉くんが、案の定やってきた。
ハイハイ、マヤちゃんの事ですね。皆まで言わずとも分かってる。
同じクラスの、伊集院マヤが不在のタイミングで来たんだから、なんの要件で来たかは、丸わかりだ。
「あいあい、なんの御用でございましょう」
「えっと、伊集院さんともっと仲良くなりたくって、その……伊集院さんの事、何か教えてくれないかな」
案の定である。
主人公側の行動を、傍から見た事って無かったけど、こんなにテンプレ通りの行動をするのか。
まあ、プレイヤーは普通、素直に攻略するから、そういうもんなんだろう。情報屋としては、分かりやすくて助かる限りだけど。
「そうですね……、お紅茶がお好きで、お茶会もお好きなようです。茶葉は特にアールグレイ。リスやウサギなどの小動物、観葉植物、チェスなどがお好きなようです」
ステータス画面に書いてあった事を、そのまんま伝えてあげると、朝倉くんは、微妙の困った顔をした。
マヤちゃんの家はお金持ちだから、朝倉くんが贈れる物では、紅茶も観葉植物も、太刀打ち出来ないだろう。
小動物を贈るのは、だいぶ不味い。生き物の命を、恋人未満、下手したら友達未満の相手に贈るなんて、軽卒が過ぎる。
そもそも、マヤちゃんの家には、ペットがたくさん居る。犬二頭に猫三頭、ハムスターが五匹、ウサギが三羽に、インコが三羽、熱帯魚の水槽が一つ。
そして、朝倉くんにチェスの知識があるかと言うと……無いから、こんな顔をしているんだろうな。
「それと、マヤさんは小柄な事を気にしているようですから、イジりは以ての外ですよ」
「しないよ、そんな事!」
「ロリィタショップや、ファンシーショップもなりませんよ。きっと、子供扱いされたとお怒りになる事でしょう」
「わ……分かった、気をつけるよ………」
あ、もしデートになったら、連れて行く気だったな。
まあ、さやかちゃんが喜んでくれたから、『女の子はこういうのが好き』と思って、他の子にも同じ対応をするのは、ままある話だ。
実際、私含む女の子は、可愛い物好きが多いからね。マヤちゃんとか、可愛いよね。
「う〜ん………、と、とにかく情報ありがとう。それじゃあ……また」
「ええ、今後ともご贔屓に」
朝倉くんは、腕組みして悩みながら、教室を出て行った。
さて、前に朝倉くんと入れ替わりで、メインヒロインの桜子ちゃんが現れた時と同じなら、マヤちゃんが来るはず……もう来た、早い。分かりやすくて助かる、ほんとギャルゲーってやつは。
「佳奈さん、ちょっといい?」
「はいはい、どのような御用命でございましょう」
私が返事を返すと、マヤちゃんは私の言葉遣いが面白かったらしくクスクスと笑う。
「佳奈さん、今度の日曜日。マヤのお家で、お茶会を開くの。良かったら、遊びに来ない?」
おお、またしても青春イベントが私に。
本意ではないけど、仲良くしてもらえるのは嬉しいし、誘いは嬉しい。
それを金曜日に言うのは、だいぶ急だけど、どうせ予定は無いし、どんと来いという所だ。
「おや、誘って頂けますか。私としては、もちろん参加させていただきたいですが……、その様子だと、私以外にも声をかけている、もしくはかける予定ですね?」
ステータスオープンで、マヤちゃんが友達を招いて、お茶会を開くのを夢見てたのは知っている。
友達なら、少なくともさやかちゃんには声をかけてるだろうし、私が知らない所で作った友達も居るかもしれない。
「ええ、さやかさんには、もう声をかけたわ。それから、佳奈さんのお友達だっていう、小鳥遊このみさんも招待したいの。佳奈さん、小鳥遊さんに声をかけてくれないかしら?」
このみちゃんと、マヤちゃんは、まだ面識が無いのだけど、そんな相手を家に呼ぶとは、めちゃくちゃ人懐っこいのか、シンプルにコミュ力が高いのか。
後藤ケンジロウとのケンカの時から思ってたけど、この娘、メンタルが強い。IJIのご令嬢をやってると、それくらいタフに仕上がるんだろうか。
「承知しました、このみちゃんにはわたくしからお伝えしておきます」
「ありがとう佳奈さん……あ、それとね……」
ずいぶんと、勿体を付けた言い方だ。
朝倉くんにも声をかけてほしい、とか、そんな感じかな。
「翔太さんも……呼ぶべきかしら?」
ああそっち。お茶会をやる上で、男子くんを呼ぶか呼ばないか。そういう事をお悩みで。
朝倉くんを呼ぶべきかといわれたら、常識的には呼ぶべきじゃないと思う。
女の子の中に、一人だけ男の子を呼ぶのは、朝倉くんとしても居心地が悪いだろう。
他に男の子を呼ぶにしても、朝倉くん以外の非モブは後藤ケンジロウだけ。流石に呼べない。
でもなぁ……、これギャルゲーだしなぁ………。
とはいえ、朝倉くんを参加させられる、合理的理由も思いつかない。仕方ない、ここは諦めるしかないか。
「男子が一人だけというのは、居心地悪そうですし、流石にご友人を増やしてからお招きした方がよろしいかと。今回は、女の子だけにしておきましょうか」
「そうよね。ありがとう、そうするわ」
マヤちゃんは残念そうだったが、私の言葉に素直に頷いた。
マヤちゃんの朝倉くんへの好感度は上がってきてるけど、ギリギリ好意的、という程度。
現状では、数少ない知り合いではあろうけども、ここは我慢しておくれ。
ドギマギする朝倉くんを見た、さやかちゃんが幻滅して好感度ダウン、なんて流れは、避けたい所ではある。
マヤちゃんも、朝倉くんに冷たい目を向けるさやかちゃんは、見たくないだろう。
「まあ、仲良くしてはいけないという話ではございませんし、折を見てお誘いしましょう」
「うん、そうする」
マヤちゃんは、にっこりと笑う。
私達を誘ったお茶会と、今後に実施させるであろう、朝倉くん含めた男子達も呼ぶお茶会、両方に想いを馳せて、もう楽しくなっちゃった顔だ。