テラーノベル
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「ねえ、佐伯さん。伊集院さんって、どんな娘?」
週末、待ち合わせ場所の駅前で、このみちゃんが私に尋ねてきた。
このみちゃんとマヤちゃんは、まだ面識が無い。金曜日に、二人を会わせようとしたのだけど、相談を受けた時、このみちゃんはもう帰っちゃってた。
だから、電話でアポを取ったのだけど、マヤちゃんの人となりが分からないのが、不安だったのかもしれない。
「物腰柔らかで人懐っこくて、とても気さくなお嬢様って所ですね。怒ると印象が変わりますが、基本的には穏やかな方です」
「ふーん……、伊集院さんが怒る事って、どんな事?」
「礼儀を弁えないとか、無作法に振る舞うとか、そういう人に対すると、闘争心が燃えてしまうようですね」
交差点でぶつかった朝倉くん、ケンカを売ってきた後藤くん、きちんと謝れば収まるけど、相手が引かない限り、マヤちゃんも引かない。
「わたし、怒られないかな? 伊集院さんって、凄いお嬢様なんでしょ? マナーとか、厳しいんじゃないかな」
「平気ですよ、自分で言うのもなんですが?私が怒られないんですから」
「そうそう、アタシだって怒られた事ないし、平気平気」
実際、マヤちゃんはフレンドリーだし、少しくらいお作法がなってなくても、怒ったりはしないだろう。
それこそ、後藤ケンジロウみたいにオラオラしてなければ。
「そう? それならいいけど……、でも、お金持ちのお屋敷に行くのは、ちょっと緊張しちゃうかも」
「確かに、それは少々緊張するかもしれませんね」
お金持ちの、しかもギャルゲーに出てくるお金持ちだ。
そのお屋敷は、それはそれは豪奢な事だろう。
『日本のどこに、そんな土地があるんだよ』と言いたくなるような、バカでかい屋敷に違いない。
車で迎えに来てくれるらしいけど、絶対純白のリムジンで来る、間違いない。
なんて思っていたら、どう考えても日本の交通事情には全く合わない、長〜いリムジンが、私達の前に停車した。ちなみにシルバー、ニアピン賞。
左ハンドルのリムジンの運転席から、灰色の髪を七三に分けた、背広に蝶ネクタイ、白い手袋、モノクルを付けた執事風の老紳士が降りてくる。
絶対『爺や』だ。顔無しモブだから名前は無いんだろうけど、マヤちゃんは絶対爺やって呼ぶ。
爺や(仮)は、運転席のドアから、後ろのドアへと移動して優雅にかつ無駄なく開いた。
「お嬢様、到着いたしました」
「ありがとう、爺や」
ほらみろ、やっぱり爺やだった。ピタリ賞、100万円。
爺や(確定)が開けたドアから、マヤちゃんが姿を現す。
今日のマヤちゃんは、清楚な白のワンピース。制服姿もカワイイけど、可愛らしさに加えて、幼さが増した印象。ついでにヒロイン力も上がってそう。
マヤちゃんは、落ち着いた雰囲気で、車から降りた……かと思ったら、目をキラキラさせて、さやかちゃんの胸に飛び込んだ。
「さやかさん!」
「わっ!」
さやかちゃんは、唐突なハグに驚きつつも、優しく抱き留めている。
うーん、流石イケメン。女子だけどイケメン。
この辺の勘所は、主人公の朝倉くんよりあるんじゃないかとさえ思える。
朝倉くんは、多分このみちゃんのハグに『急に何!?』って困惑するような気がする。
というか、この懐き具合よ。好感度数値にすると、80%くらいはある気がする。
私には、ヒロインから主人公への数値しか見えないけど、多分そのくらいある。そのくらい無いと、こういう行動はしないはず。
朝倉くんへの好感度が、20%台だと言うのに、さやかちゃんへの好感度は、80%を超えているというのは、ギャルゲーとしてどうなんだ。
抱きつくなら、主人公の朝倉くんに……って噂をすればなんとやら……………え!?
道の向こうから、朝倉くんと、坊主頭の男子の二人が、ジャージ姿でジョギングしながら、こっちに近づいてくる。
「あ、朝倉くん!」
私が声をかける前に、このみちゃんが手を振りながら、キラキラ笑顔で頭上にハートを浮かべた。
さやかちゃんにデレデレなマヤちゃんと、朝倉くんにデレデレなこのみちゃん、お嬢様に注意しようか、でも友達と離れさせるのも忍びないという様子の爺や。
要素の大渋滞。その上、主人公と非モブの男子の二人組が交差点の向こうから来る。カオス。
「あ、小鳥遊さん。それに、みんな揃ってどうしたの?」
朝倉くんと連れの男子は、ジョギングのままこっちに来て、足を止めた。
息も切れてないし、汗すらかいてない、流石野球部。坊主くんも体力あるな、野球部の友達かな。
「お嬢様、この方々は……?」
爺やと呼ばれた老紳士。テンプレに則るなら、マヤちゃんにマナーなど指導する立場にあって、悪い虫がつかないか見張っている立場なはず。
そういう人からしてみれば、親しげに話しかけてくる男子は、警戒対象なんだろう。
マヤちゃんは、さやかちゃんに抱きつくのをようやく止めて、爺やの方に目線を向けた。
「うん、お友達。同じクラスの朝倉翔太さん。こっちの人は、知らない」
知らないにしても、もう少し言い方は無いんだろうか。坊主くんは顔があるから、非モブネームドだろうに、もうちょっと優しくしてあげてよ。
そんな言い方すると、こないだの後藤ケンジロウみたいに、怒り出してケンカになったり………ん?
「オレだ、後藤ケンジロウだ。この間は、本当に悪い事をしちまった。すまねえ」
ああーー! そうだ! 後藤ケンジロウだ!
金髪リーゼントを全部刈って、黒髪の坊主。服装も長ランじゃなくてジャージだから、印象変わりすぎて分からなかった。
顔あり非モブ男子が少ないから、ビフォーアフターが結びつくけど、そうじゃない世界だったら、気づけないレベルの変わりよう。
「あ……貴方があの時の……」
マヤちゃんも、まさかアレとコレが同一人物だとは思わなかったらしく、驚いて目を見開いている。
「この前は本当にすまん。アンタがIJIの嬢さんって事を抜きにして、心から謝らせてくれ。アンタがIJIの嬢さんだからって謝るんじゃねえ、一人の人間に対して、謝るよ」
坊主頭を下げる後藤くんはあの時のヤンキーからは想像出来ないくらい、普通の男子高校生に見える。
丸刈り自体は、むしろ体育会系らしい爽やかさまである。
ここだけ見ると好青年。両さん理論で言うならまだマイナス査定だけど、改心したっぽいし、許してあげてもいいんじゃないかという気がする。
ところで……。
「どうして、朝倉くんと後藤くんが一緒に居るんですか?」
朝倉くんと後藤くんは、あの時が初対面、しかも、私が暴露した恥を知ってる一人。普通なら、双方関わりたくないと思いそうなのに、一体どういう風の吹き回しだろう。
「たまたまだよ。後藤君が俺に気づいて、声をかけてくれたから、じゃあ一緒に走ろうって」
「オレも、謝らねえとと思って声をかけたら、一緒に走る事になって、それでこう……」
朝倉くんは、とんでもないお人好しなのか、もしくは単なるおバカなのか。
まあ、完璧超人では逆に主人公は出来ないから、少しくらい抜けてた方がいいけど。
「ところで、みんなは何をしに集まってるの?」
当然の疑問。バカでリムジンが止まってて、女子4人集合してるんだから、そういう疑問が出るのも分かる。
「マヤの家で、お茶会をするの。だからお友達を集めたんだけど………」
そこでマヤちゃんは、一回言葉を切って、ちらりと爺やの方を見てから、男子二人に目線を戻した。
「今度お茶会をする時、二人は誘ったら来てくれる? 今日は、おもてなしの準備が出来てないけど、来てくれる時は、必ず用意するから」
おお、いきなり誘ったな。本人に確認取るのが、一番手っ取り早いだろうけど、やっぱり大胆だな。後藤ケンジロウまで誘うとは。
「うん、楽しそうだね。良かったら、ぜひお邪魔させてほしいな」
朝倉くんは、マヤちゃんの誘いに笑顔で答える。
ギャルゲー主人公だとしても、女の子の家に招かれるんだから、少しはドギマギしなさいよ。
ほら、後藤くんは『オレも呼ぶのか?』とか、『いやありがてぇけどよぉ……』とか言ってるぞ。デリカシーという点に限れば、後藤くんの方が上だぞ。
「本当! 絶対誘うから、翔太さんもケンジロウさんも楽しみにしてて!」
「うん」
「お……おう」
朝倉くんは、素直な笑顔。後藤くんは、誘われた事と、初めて見たカワイイモードのマヤちゃんに、困惑と照れの表情。
「それじゃ! マヤはお茶会するから、行くね!」
「では、我々もこれで失礼いたします。朝倉くんと後藤くんも交えて、お茶会が出来る日を楽しみにしております」
「うん、またね」
「お……おう、またな」
二人を残して、みんなでリムジンに乗り込む。
「うわ……」
リムジンに乗るのはもちろん初めて、このみちゃんも、さやかちゃんも、唖然としてる。
マヤちゃんが「遠慮しないで座って」と言われて、ようやくみんなで座った。
そういえば、今回も描画範囲外でヒロインが消えなかったのは、なんでだろう?
というか、情報屋を始めた時、桜子ちゃんが消えちゃった事の方が、珍しい事なのかな?
もしかすると、間接的にでも、主人公が関与してるイベントなら、描画範囲外でも消えないって事なのかな
てことは今日、朝倉くんが現れたのは、必然って事?
#AIイラスト
QuartoMew
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