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ねむ
そこまで口走ってから、ハッとした。
今の俺は、何を言おうとしている?
尊さんに余計な心配をかけたくないのに。
思わず口を手で塞いだが、時すでに遅し。
尊さんの眉間に僅かな皺が寄り、目が細められる。
彼は怪訝そうに、しかしどこか見守るような眼差しで俺を見つめている。
「同窓会に、苦手なやつでも来るのか?」
その問いに、俺は迷った末、ポツリポツリと胸の内を明かし始めた。
「苦手な人というか……あの、前に海に行った時に俺……大学の時の元カレと遭遇して、その時尊さん助けてくれたじゃないですか?」
「ああ、あの時の男か…亮太とか言ったか」
「はい。大学時代……半同棲してた頃に、一度中学の同窓会に行ってきていいか聞いたことがあって」
当時の光景が、まるで昨日のことのように蘇る。
「その時に……許可は出してくれたんですけど、凄くたくさんの制限を付けられて」
「それを一つでも守れなかったら、帰ってきた後に……酷く怒られて。だから、同窓会って聞くと、どうしてもそれを思い出して楽しめる気がしなくて……っ」
一気に話し終えると、部屋に沈黙が流れた。
尊さんは少し間を開けてから、言ってきた。
「なら、同窓会の帰りに迎えに行くか?」
「えっ……?」
予想もしなかった言葉に、思わず顔を上げた。
「どうして……」
「同窓会が終わったら、電話したければすればいい。お前の好きにしろ」
尊さんは、いつになく真剣な、それでいて包み込むような優しい声で続けた。
「嫌な思い出があるなら、上書きすればいい。新しい記憶で塗り替えればいいだけの話だろ?」
「…な、なるほど……!」
尊さんの提案は、俺にとって衝撃だった。
けれど、それ以上に、心の奥底が震えるほど心強かった。
尊さんは一緒に塗り替えようとしてくれる。
やっぱり、どこまでも、亮太さんとは違う。
(尊さんが、迎えにきてくれるなら……)
そう思った瞬間、肩の力が抜け、心がふっと軽くなったのが分かった。
「じゃあ……行ってみます」
俺が意を決してそう答えると、尊さんは満足げに、少しだけ口角を上げて笑ってくれた。
「そうか…何かあったら、いつでも呼べ」
その優しい眼差しと、自分を信じてくれている強さを感じて、俺の中にも本当の勇気が湧いてきた。
「ありがとうございます……っ! 尊さん」
トラウマの鎖はまだ完全には消えていないけれど
今の俺には、その鎖を断ち切ってくれる最強のパートナーがいる。
そう確信しながら、俺は桜への返信を打ち始めた。
コメント
1件
「いつでも呼べ」は安心しまくりなんだけど?!カッコよすぎるって🤣