テラーノベル
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カードが再び配られる。
さっきより、静かだ。
空気が、重い。
「……」
マフィオソは無言でカードを整える。
「……いい顔してるな」
チャンスが笑う。
「さっきより“乗ってる”」
「黙れ」
短く返す。
チップが置かれる。
「ベット」
「コール」
淡々と進む。
だが——
その時。
ピッ。
「……?」
マフィオソの背後のモニターが、再び点灯する。
ノイズ。
ザザッ——
【お楽しみ中、失礼】
文字が浮かぶ。
「……セブンか」
チャンスが軽く肩をすくめる。
「空気読めよな」
【読んでますよ】
ノイズが歪む。
【だから“今”なんです】
マフィオソは視線を動かさない。
「続けるぞ」
「いいのか?」
チャンスが笑う。
「邪魔入ってるぜ」
「関係ない」
即答。
「……いいね」
チャンスの目が細くなる。
「そのスタンス」
【では、少しだけ“情報”を】
画面が切り替わる。
暗い路地。
カポとラクティーの姿。
「……!」
一瞬だけ、マフィオソの指が止まる。
だがそれだけ。
「おいおい」
チャンスが覗き込む。
「気になるだろ」
「……」
「今ならやめてもいいぜ?」
囁くように。
「ゲーム、降りるか?」
沈黙。
モニターの映像が揺れる。
カポが誰かと対峙している。
ラクティーはその後ろで笑っている。
(……無事ではある)
一瞬で状況を読む。
「……続ける」
マフィオソはカードから目を離さない。
「へえ」
チャンスが少し驚いた顔をする。
「冷てぇな」
「信じているだけだ」
短く。
「……誰を?」
「全員だ」
その一言。
わずかに、空気が変わる。
チャンスの目が細くなる。
「……そっか」
小さく呟く。
【つまらないですね】
セブンの文字が滲む。
【揺れない】
【では、もう少し】
映像が切り替わる。
今度は——ソルとリエーレ。
罠のような場所に踏み込んでいる。
「……」
「さすがにこれは?」
チャンスが横目で見る。
「どうする」
「……」
マフィオソは一切動かない。
カードを一枚、静かに置く。
「ベット」
その声は、変わらない。
「……」
チャンスが笑う。
「やべぇな、あんた」
「普通じゃねぇ」
「……お前に言われたくない」
「違いねぇ」
コール。
【理解できません】
セブンの文字。
【なぜ動かない】
【なぜ焦らない】
沈黙。
その問いに——
マフィオソが、初めて視線を上げる。
モニターを見る。
「簡単だ」
低く。
「お前のゲームに、乗る理由がない」
【……】
「お前は“揺らしたい”」
「だが——」
カードを揃える。
「私は“勝つ”」
その一言。
ノイズが一瞬、乱れる。
チャンスが、静かにカードを見つめる。
「……いいね」
ぽつりと。
「そういうやつ、好きだ」
真顔。
完全に本気の顔。
「じゃあ」
カードを開く。
強い役。
さっきより、明らかに。
「これでどうだ」
勝ちに来ている。
だが——
マフィオソは、微動だにしない。
「……」
ゆっくりと、カードを開く。
一枚。
二枚。
三枚——
空気が、止まる。
チャンスの目が、
わずかに見開かれる。
「……マジかよ」
さらに上。
完全に、上回っている。
静寂。
モニターのノイズも、止まったみたいに静かになる。
「……」
「……」
数秒。
そして——
「はは……」
チャンスが笑う。
今度は、
本気で、悔しそうに。
でも——
楽しそうに。
「負けた」
はっきりと。
認める。
【……】
セブンの画面が、何も言わない。
「約束だ」
マフィオソが言う。
「“アレ”を返してもらう」
「わかってるよ」
チャンスはポケットから、
ハンカチに包まれた何かを取り出す。
テーブルに置く。
「ほら」
「本物だ」
静かに押し出す。
マフィオソはそれを見つめる。
だが——
まだ手を伸ばさない。
「……もう一つある」
低く言う。
「ああ」
チャンスが笑う。
「俺だろ」
自分の胸を軽く叩く。
「連れてくか?」
「当然だ」
即答。
「……はは」
チャンスは笑って目を閉じる。
「いいぜ」
その顔は——
どこか、満足している。
「退屈しなさそうだ」
モニターが、ふっと消える。
セブンの気配も、完全に消失。
静寂。
残るのは——
勝者と、
捕まったはずの男。
「……」
マフィオソが、ようやく“本物”に手を伸ばす。
「長かったな」
ぽつりと。
チャンスが肩をすくめる。
「楽しませてもらったよ」
#絵
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