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ゆゆゆゆ
#Paycheck
ゆゆゆゆ
#Paycheck
ソファに並んで座ったまま、
部屋にはまだ夜の静けさが残っていた。
ピザ箱はテーブルの上。
テレビもつけていない。
エリオットはすぐ隣にいる。
肩が少し触れるくらいの距離で。
なのに――
チャンスはふと、妙な感覚に気づいた。
(……なんだこれ)
落ち着かない。
さっきまであんなに近かったのに、
むしろ今の方が変に意識する。
エリオットは何も言わず、
残りのピザをつまんでいる。
いつものようにニコニコしているが、
今日はやけに静かだ。
なにか落ち着かず、周りを見渡した
その時。
視線が、自身の胸元に止まった。
シャツ。
開いた襟元。
でも――
ネクタイがない。
さっき外したままだ。
そのせいかもしれない。
チャンスは小さく息を吐く。
(……変な感じだ)
いつもなら、
エリオットは隙あらばネクタイを引く。
ぐいっと掴んで、
顔を近づけて、
からかうように笑う。
それが当たり前だった。
でも今は――
それがない。
エリオットは隣にいるのに、
胸元を引かれる感覚がない。
不思議なくらい、
それが物足りない。
チャンスは眉をしかめる。
(……何考えてんだ俺)
そんなこと思うなんて。
その時。
隣から声がした。
「どうしたの?」
エリオットが首をかしげている。
「さっきから黙ってる」
チャンスは視線をそらす。
「別に」
エリオットは少しだけ目を細めた。
そして――
チャンスの胸元をちらっと見る。
「あ」
小さく笑う。
「ネクタイ無いから?」
チャンスの動きが止まった。
エリオットは楽しそうに続ける。
「いつも引っ張ってるもんね」
チャンスはすぐ否定する。
「違う」
「ほんと?」
エリオットは体を少し寄せる。
距離が近い。
「じゃあ」
指を伸ばして――
チャンスのシャツの襟を
軽くつまんだ。
「代わりにこれでいい?」
ほんの少し、
引く。
その瞬間。
チャンスの心臓がどくっと鳴った。
エリオットはくすっと笑う。
「ほら」
目が楽しそうだ。
「落ち着いた?」
チャンスはしばらく何も言えなかった。
それから小さく言う。
「……お前」
エリオットは首を傾げる。
「ん?」
チャンスはエリオットの手首を軽く掴む。
「そういうとこだよ」
エリオットは一瞬きょとんとして――
すぐ笑った。
「褒めてる?」
チャンスは答えなかった。
でも、
さっきより少しだけ落ち着いていた。
エリオットの指が、
まだシャツを軽くつまんだままだったから。