「よし!お前!俺たち美術部を広げるための案を出してきたか?」「もちろんです!早速用意してきました!」
彼らは美術部の部員たち。『トウヒガ学園』の美術部は、万年人手不足なのである。このままだと廃部になってしまうため(しかも部員はこの二人だけ)何とかして部員を増やさないといけないのだ。
「ずばり!美術部には華がないんですよ!今の部員は俺たち男二人だけで、顧問も奇行教師紅蓮先生だし」
「それでどうすることにしたんだ?」
「じゃあ早速みせますね!……入ってきて下さい!」
ガチャッ
???「わっかるかなぁ」
「な、何だこれ」
美術部部員に前には、8メートルはあるでっかい熊にベッタベタに熊の顔を塗ったくられた人間の顔を取り付けた何かがいた。
「この子は、熊三郎です!」
???「熊五郎だ」
「この熊は何なんだ?」
「俺たち美術部のマスコットキャラクターになってもらおうと想いまして!俺がデザインしました!」
「これ、華になってるか?どう考えても人間と熊のキメラだろ……」
???「わっかるかなぁ……わっかんねぇんだろうなぁ……」
「まぁ作ったものはしょうがない……」
???「わっかるかなぁ!わっかんねぇんだろうなぁ!」
???「……このマスコットを連れて……」
???「わっかるかなぁ!!わっかんねぇんだ……」
「あぁ!やかましい!!何なんだよそのセリフは!この熊吉が!!」
???「熊五郎」
「はは……とりあえず一年の教室をみて回りましょ」
美術部部員は、『熊五郎』を連れて美術部の部員募集広告を配りに行くことにした。
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???「わっかるかなぁ……わっかんねぇんだろうなぁ」
「おい……そのセリフ言うのやめろ」
「こういうアイデンティティを持ってるんですって」
「どんなアイデンティティなんだよ!!」
そうこうしているうちに一年生の教室に来れた美術部部員と『熊五郎』
「一年生の皆さん!こんにちは!今我々美術部部員は、部員を絶賛募集中です!!ぜひ見学だけでも来て下さい!!お願いします!!」
一年生の反応は……
「美術部かぁ、楽しそうではあるけど作業が地味そう」「ただ作品を作るだけだろ?」「もっと派手なことしたいぜ!」「それにちまちました作業とかめんどくさいし」
「…………」
「で、でも美術部にも良いところはあるよ!!顧問の先生も体育会系じゃないし!この学校って体育会系の先生苦手な生徒多いでしょ?そんな先生じゃないからさ!」
それでも一年生たちの反応はいまいちである。
???「わっかるかなぁ……わっかんねぇんだろうなぁ……」
「え?」
『熊五郎』が口を開いた。
???「美術部の子たちは良い子だ。美術部の部員を増やすために自腹でこの着ぐるみ作ってくれたんだ。それはもう大切にね。でも入るのは君たちだから強制はしない。でも「地味」とか「めんどくさい」と言うのはやめて頂きたい」
「「ご、ごめんなさい」」
???「うん。君たちも良い子だね」
『熊五郎』は、一年生の頭を撫でた。
「こんな優しいマスコットがいるなら……見学くらいはしてやろうかな!」
「俺も俺も!」
「私もやってみたい!」
「ねぇ!私のことも撫でて!!」
まさかの『熊五郎』は大人気となった。
「『回弁地太郎』並に人気がある……」
「あのキャラただのうんこなのに……」
???「あれはただのうんこじゃない!!」
「「!?」」
???「あっ、ごほん失礼」
「変なの〜ははっ!熊次郎!」
???「熊五郎」
「おっかしい〜熊太郎!!」
???「熊五郎」
こうして、何とか部員集めは第一歩となった。
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「……それで」
「「熊五郎は何者なんだ?」」
「あぁこの方たちは……」
???「そろそろ脱ぐよ〜」
???「分かりました!」
???「まっじでこの空間きつい!!」
???「密空間だったな」
???「だ、橙がすぐ近くに……」
『熊五郎』の正体は……
「「生徒会の皆さんです」」
「雨花」、「橙」、「桃時」、「兎白」、「瑠璃人」だった。
「えぇぇぇぇ!?!?」
雨花「ボイスチェンジャーで声変えてたから気が付かなかったのかな?」
「お、お前!生徒会の皆さんにこんなことさせたのか?!」
「え?喜んで引き受けてくれましたよ?」
「ま、マジか……」
「あの」
「「本当にありがとうございました!!!!」」
美術部部員二人は頭を下げる。
雨花はメイクを取りながら、応える。
雨花「いいえ〜気にしないで〜」
橙「私は楽しかったです!」
桃時「アタシのために何か作ってくれるって奴忘れないでよね?」
兎白「とても貴重な体験だった。まさかマスコットの中に入って動く日が来るとは想わなかった。ありがとう」
瑠璃人「オレも役得があったし!また頼れよな!」
「「!、はい!」」
雨花たちはマスコットキャラクターになれた経験が良いと想ったらしい。
それから、美術部部員には結構な数の見学者が増えたそうな。
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