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いたおーはんを広めにきました。海氏です。
表記
イタ王→イタリア王国 一人称:io
オーハン→オーストリア=ハンガリー二重帝国
政治的意図、戦争賛美等はありません。
大丈夫な方はどうぞ。
『夕日』
イタ王は、北の山岳地帯を見上げていた。
向こう側には、オーハンの領土。
まだ取り戻せていない“未回収のイタリア”がある。
「…この景色、いつかioのものになるんだ。」
その呟きを聞きつけたように、後ろから静かな声がした。
「またそんなことを言って……ここは渡しませんよ?」
淡く微笑むのは、オーハン。
整った顔立ちに穏やかな笑みを浮かべながらも、その目は氷のように冷たい。
「お前がここを渡さないことくらい、もうわかってるさ何度もこのやり取りしたし、学ぶよ。」
イタ王が肩をすくめ、わざと挑発的に笑う。
二人は同じ陣営に属していた。独、墺、伊の三国同盟である。
だが、イタ王の胸の奥では、同盟よりも昔からの恨みが湧き上がっている。
——奪われた土地、押さえつけられた誇り。
オーハンはイタ王のその思いを感じ取っている。
それでも……同盟国としてイタ王と並んで立つのが自分の務めだと、わかっていた。
「……私の背中を狙うようなことは、決してしないでくださいね。」
「はっ……そんなことするわけ」
言いかけたイタ王の顔が近いことに、オーハンは気づく。
距離、わずか数センチ。
挑発なのか、あるいは無意識か。
イタ王の綺麗な緑と赤が、まっすぐこちらを射抜いてくる。オーハンの顔が少し赤みを帯びる。
「ちょ、ちょっと……近いですよ。」
「何、怖いの?ioたち同盟国でしょ?。」
「……そう言いながら、目が笑っていないです。」
「お前の方が冷たい目してるよ。」
「いや、お前の方が…………」
言い合い。話していると必ず対立してしまう。根っから合わないのだろう。やめろ、と言われてもそうなってしまうのだから仕方がないと、本人たちは諦めている。
ふと、イタ王がくすっと笑う。
「……何がおかしいんです?」
「いやぁ……もし、もしここに独帝がいたらさ、”今日も仲がいいな”って…言うのかなぁと思って。」
「さあ……言うんじゃないですか?そうしたら私たちで”仲良くない”と、声を揃えて言う、までが1フレーズですね。」
「ふふ……そうだね。」
他愛もない会話。そのくらいが、居心地が良いのかもしれない。
オーハンは視線を落とした。
もしもこの国が本気で刃を向けてきたら。
その時、自分はどうするのだろうか。
イタ王の顔をちらりと見る。
……狡いなぁ。いつもの顔からは想像できない、静かな顔を浮かべるイタ王を見て、そう思う。そんな顔も良く似合う。
イタ王の顔、顔だけは好きだ。整った顔。気を抜くと、ずっと見てしまいそうになる。
「……あなたはどうしてそんな目をするんです。」
「え?」
「敵を見ているような、味方を見ているような。」
「そりゃあ……お前がどっちか分かんないからだよ。」
イタ王はふっと笑い、前を向いた。
「でもさぁ、同じ方向に銃口を向けてるうちは、味方ってことでいいでしょ?ねぇオーハン。」
オーハンは少しの間、何も言わなかった。
その言葉の裏に、いつか来る”裏切り”の影が見える気がしたから。
「…ええ。いまは、ね。」
「……そっか。」
……お前とは、戦いたくない。
「このままでいたい。」
想いが、ぽつりと声に出る。
聞こえたか聞こえなかったかなんてわかりやしない。聞こえなくていい。本当は聞こえてほしいのかもしれない。でも、やっぱりいい。
そんな関係。
2人は赤い光に呑まれていった。