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私の名前は一条院麗華。退魔師を生業としている。これまで数えきれないほどの怪異を祓ってきた。
例えば先日は女性からの依頼があった。最近、誰かにずっと見られている気がして、ストーカーかもしれないと探偵なども雇ってみたが、その可能性は低いと言われたそうだ。
しかし、誰かに見られている気配はずっと続いた。そこで、もしかしたら霊的なものかも知れないと、友人に紹介されて私のところにやってきた。依頼者は最初半信半疑だったが、私が次々に悩みを当てると、すっかり信頼してくれた。
私が霊視してみると、確かに彼女は霊に憑りつかれていた。ただ、ごくごく下級の霊だった。どうやらその霊は生前は男性で、盗撮がばれそうになり、逃げだしたところで事故にあって死んだようだった。そして死んだ後も盗撮を続けているというわけだ。
このような霊が力をつけるとたちの悪い悪霊になる。また未練たっぷりだから、おとなしく成仏することもないだろう。私は霊力で霊魂ごと破壊することにした。
ただ、一つだけ想定外のことが起こった。男の霊は、私を見るなり逃げ出したのだ。普通、除霊されまいと抵抗したりするので、そのときにこちらも力をため、霊魂を破壊しているのだが、今回はあまりにすぐに逃げられたため、とどめをさせなかったのだ。
まあ、それでもかなり痛めつけてやったから、もはや普通の人間に干渉する力は残っていないだろう。あとはほっとけば数年もしないうちに力尽きるだろう。念のため依頼者の女性にはお札を渡しておいた。これで戻ってくることもできないだろう。
そんな感じで、普段は小物の霊を相手にすることが多い。ところが、その日の依頼はいつもと少し違った。ある廃校で次々と人が行方不明になっているという。最初は肝試しに訪れた学生数名、それから廃校の管理者が消えた。一応警察に連絡し、捜索隊も来たのだが、そのときは問題は起きなかったが、その代り何も発見できなかったという。ところが、新しい管理人を雇ったところ、その人物も消えてしまったのだ。
通常、霊体は人間に物理的に手出しできない。例えば、ストーカーの霊に憑りつかれた女性が、四六時中監視されている気がして精神を病む、ということはあるが、それは霊が直接手を出したわけではなく、霊の気配に心がやられてしまったわけだ。こういう感じで、普通なら間接的に影響をおよぼすだけで、霊体が物理的に何かするということはない。もしも、行方不明者が何らかの怪異によるものなら、普段相手にしているものとは比べ物にならない、かなり危険な存在だ。十分注意する必要がある。
そんなことを考えながら、私は依頼のあった廃校にやってきた。(続く)
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