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#ミステリー
鬼霧宗作
686
みおん
5,211
結局、あまり眠れなかった。
去年から寝付きが悪かったが、学から聞いた話を思い出してしまい、全然寝れなかったのだ。
いつもは7時ぐらいに起きて準備をするが、6時には布団から出ていた。
とりあえず準備をして、余った時間はタバコでも吸ってゆっくりしよう。
携帯の目覚ましを解除していると、インターホンが鳴った。
こんな朝早くから誰だろう?
いくらなんでも失礼じゃないだろうか。
扉のレンズを覗き込む。
誰だ?
この人たちは……。
俺は震えた。
スーツを着た2人組。
昨日学が言っていた事件を思い出す。
まさか警察か?
俺は扉を開けながら「なんでしょうか?」と聞いた。
「朝早くからから申し訳ないです。私達こういう者です」
2人組が手帳を見せる。
「小田友和さんですよね? 少しだけお時間をいいですか?」
予想通り警察だった。
ボサボサの髪で背が低いのが、小山幸一郎警部補。
長身のオールバックできちんとしているのが、大鷲獅太巡査長。
見た感じだと、大鷲の方が上司に見える。
「はい……。大丈夫ですけど……何かありましたか?」
多分あの事件のことだと思うが。
「はい。先日殺人事件がありましてね。単刀直入に聞きますが、6月5日の日曜日は何をしていましたか?」
「ずっと家にいました」
休日は行くところがないからな。
「ずっと?」
「はい。外に出ず、ずっと家にいました」
「それを証明できる人はいらっしゃいますか
?」
「いません」
やはり俺が疑われてるらしい。
この人達の言い方からするとあいつは5日に殺害されたようだ。
待てよ……。
6月5日って俺の誕生日じゃないか!
綾葉が出て行った日もそうだったな……。
「うーん。アリバイは無しか」
ぶつぶつ小さな声で言ってるが、丸聞こえだ。
「大沢綾葉さんのことはご存知ですよね? あなたは高校が一緒で以前交際もしていたんですよね?」
「はい。ですが去年別れて、それきり会っていません。電話は着拒、Lemon等のSNSをブロックされて連絡手段もありませんし、彼女がどこで何をしていたかっていうのも全く知りません」
なんで付き合っていたことを知ってるんだ?
高校が一緒ってことも。
「なるほど……。ちなみにどのような事件だったかご存知ですか?」
「脳を抜き取られたとか。友人から連絡がありました」
それしか知らないが。
「そうなんですよ! 私も現場に行ったんですけど、ほとんどのやつが外出てゲーゲー吐いちゃって大変だったんですよね。 がはははははは」
そりゃそうだ。
脳を抜き取るなんて正気じゃない。
それにしてもこのおっさん、よく笑えるな。
「ちなみにこれが現場の写真です」
不意打ちで見せられた写真は想像を絶するものだった。
頭が空っぽになった綾葉と彼氏が、有刺鉄線で固定されてキスをしている……のか?
2人の口元は、赤と白のテープでバツ印に留められている
綾葉は血で染まったようなドレスで、彼氏は白いスーツを着てる。
しかもわざわざ綾葉側の白い壁は赤く塗られていた。
俺は気持ちが悪くなって目を背けた。
「ちょっと小山さん! 一般人に写真なんて見せてもいいんですか?」
静かにしていた大鷲が急にデカイ声を出した。
「いいんだよ。そんなこまけぇこと気にすんな」
小山は聞く耳を持たない。
「脳味噌は家のゴミ箱に捨ててありました。脳味噌ごと切断したからか、ぐちゃぐちゃの状態になってましてね」
小山が他の写真を見せてきたが、俺はすぐに目を背けた。
ふざけんな。
こんな原形もとどめていない脳味噌を見せるなんて……。
「おっと。流石にこれはきつかったですかな? 失礼失礼」
こいつ……。
悪気はないよな?
「検視の結果、頭を斬られたときの大量出血が原因で死亡したようです。おそらく凶器は鋸かなんかで頭をギコギコってね。手足にも縛られた跡や、顔を抑えられた跡があったんですよねー。しかも切断した後の頭はヤスリで整えてありましたよ!」
よくそんな事を平然と言えるな。
「隣に住んでる人は何も気づかなかったんですか?」
流石におかしい。
こんな派手な殺し方をしているのに。
「気づいていたようですよ。何か音が鳴ってるのを」
「え?」
気づいてたのに何もしなかったのか?
「いつも昼夜問わず激しいセックスをしてたみたいでね~。注意しても無視されたり、逆ギレするから関わりたくなかったみたいです」
「……」
聞かなきゃよかった。
「そういえば……空っぽになった大沢さんの頭の中に入ってたんですよ」
「何がですか?」
「大沢さんの血液型はAB型。なのにO型の血が入っていた」
「なっ……」
言葉が出なかった。
違う血液が入っていたってことは……。
「この血液はお付き合いしていた里部翔馬さんのものとわかりました」
里部っていう名前だったのか。
なんで血なんかを入れたんだ?
「ご丁寧に大沢さんの血を風呂場で抜いてから洗い流し、里部さんの頭から大沢さんの頭へ流し込まれてたんですよ。頭以外では大沢さんの口の中にもありました。まるで口移しされたかのように」
話を聞いただけで吐きそうだ。
「あと大沢さんのドレスを赤く染めて、部屋も半分だけ赤く染めてるんですよ。壁は途中からペンキでしたな。血が足りなかったんでしょう」
く、狂ってる……。
「天井に大きめなフックを差し込み、有刺鉄線で固定。まるで2人がキスしてるかのように見立てた」
「……」
俺は言葉が出なかった。
こんなことが現実に起こるなんて。
「最後にこれなんですが……」
小山に3枚の紙を渡された。
「小山さん!流石にそれは……」
大鷲が止めに入るが、
「うるせぇ!黙ってろ!」
と怒鳴られている。
大鷲も「やれやれ……」と諦めた様子だ。
「読んでみてください。小田さん」
小山に3枚の紙を渡される。
ワープロ打ちされたもののようだ。
1枚目は白い紙にピンク色の文字で印刷されている。
ノータリンの結婚式
祝福してくれる人は誰もいない。
2人きりの結婚式。
他にいるのは神父だけ。
そこには愛はない。
お互いのことがわからない。
自分の美を追求するために、脳を捨ててしまったから。
ロボトミー手術より効果的だろう。
傲慢で我儘な2人は、多くの人々に迷惑をかけてきた。
永遠にこのままだ。
異なる色に染まった2人の結婚式。
共通しているのはただ1つだけ。
2枚目は赤い紙に白い文字。
赤の花嫁
脳味噌を捨てた。
花婿から血をもらうために。
私は血液が足りてないから。
血が塗られた赤いドレス。
血が流れて赤くなった私の顔。
私は世界で1番、赤が似合う女。
3枚目は白い紙に赤い文字。
白の花婿
脳みそを捨てた。
花嫁に血を与えるために。
私は血液が足りているから。
血が引いたような白のスーツ。
血が抜かれて白くなった私の顔。
私は世界で1番、白が似合う男。
なんだこれは?
意味がわからない。
「あの……これは?」
俺は紙を返そうとする。
「実はそれ、現場に残っていたものなんですよ。1枚目の紙は額縁に入った状態で、2人の足元に飾られていて……。2枚目は大沢さん、3枚目は里部さんの頭の中に入っていました」
「え……」
俺は怖くなった。
そんなものを今まで持っていたのかと。
紙を落としてしまい、散らばった。
「おっと!」
小山が拾った。
「安心してください。それはコピーしたものですよ~。本物の2枚目と3枚目は折りたたんでチャック付きの袋に入れられてました」
いやいや、ちょっと待って。そういう問題じゃないだろ?
コピーしたものでも不快感を感じる。
「これを読んで何かわかったりします?」
小山に尋ねられて俺は即答した。
「わかりません」
わかるわけがない。
この犯人は確実に頭がイカれている。
「そうですか………」
小山は紙をしまいながら聞いてくる。
「最後に小田さん、この2人を恨んでる人を、知ってたりします?」
小山の目は明らかに俺を疑ってる目だ。
「知りません」
誰かはわからない。
だが、俺への行いから他にも
恨まれてもおかしくはない2人だが……。
「わかりました。ご協力ありがとうございます。また何かあれば宜しくお願いします」
小山と大鷲はそう言っておざなりに一礼して帰っていた。
やっと帰ったが、俺は落ち着かなかった。
またあいつらは来るのだろうか?
できれば二度と来てほしくない。
あの2人のことも気になっても仕方が無いが、それよりも早く犯人を捕まえてほしい。
あいつらのせいで予定予定よりも時間が遅くなってしまった。
早く会社へ行く準備をしなければ。
コメント
5件
ああ…これ、めっちゃ重い話だね…。警察の取り調べのシーンからもう息が詰まる感じがしたし、小山さんも大鷲さんもそれぞれのキャラが立ってて読んでて引き込まれた。特に「ノータリンの結婚式」の詩、あれが現場に残されてて、頭の中にまで入ってたってのがもう…狂気の中に美しさすら感じさせてくるのが怖い。Augusteさんの描く「闇」の表現、すごく丁寧で、ちゃんと受け取ったよ。次も読みたい。