──帰るしかないという、やるせない思いで部屋を後にして、最寄り駅から乗り込んだ電車の揺れに、うつろに身を委ねながら、
政宗医師は、なぜ急に感情的になったりしたんだろう……と、考え込んでいた。
普段は感情なんて少しも感じられず、言葉で散々追い立ててきたばかりのあの人が、あんな風に冷静さを欠くなんて……。
……何だったんだろう、あれは……。
あの取り澄ました美貌の陰に潜む本当の素顔が、一瞬垣間見えたようにも思えたけれど、
どうして、唐突にあんな言い方をしたのかはまるでわからなくて、考えれば考える程、ただただ疑問が深くなっていくだけにしか感じられず、
私には、あの人に未だ隠されている顔があるのかどうかすらも、何も知れることはなかった……。
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