テラーノベル
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書也と愛は教子先生の案内でエレベーターに乗ると、教子先生は六階のボタンを押していた。
「あれ? 確か文化部の部室は七階に集中しているんじゃなかったですか? 運動部の部室は校庭のプレハブ小屋だったり、茶道部は中庭のユニットハウス、体育館はバレー部やバスケ部、七階のフロアから音楽室は吹奏楽部、科学実験室は科学部、家庭科室は手芸部、調理部、美術室は美術部、新聞部は視聴覚室……図書室でもパソコン室でもないんですね?」
書也がバックからパンフレットを出して、開いて部活動の項目を確認する。
「まあ、ラノケンの歴史は浅くてな。十年ぐらい前にできた部活だ。当時は人数が多い文芸部が図書室を使用していて、同じ図書室を使う訳にはいかなかった。かといって、パソコン室は他のグラフィックデザイナー部が使っていたりするからな。無いものは作るしかないということで、使っていなかった空き教室の使用が認められた」
エレベーターが六階で止まり、ドアが開くと、大学部の生徒達が行き交っていた。廊下を歩いていると、顔見知りの大学部の生徒が教子先生に会釈したり、挨拶を交わした。
「空いた教室ですか?」
使わない教室があるのかと、書也が思わず首を傾げる。
「昔は新聞学部があったんですよね? 今は少子化の影響で文学部に統合されて……その教室がラノケンの部室になっているって、聞いてます」
愛が得意気に言う。
「ラノケンの為に広い教室をよく借りる事ができましたね。ラノケンにハルヒみたいな部長でもいるんですか?」
書也の中学の頃でも少子化の影響で空きの教室があったのを覚えているが、ほとんどの教室は倉庫のような使われ方をしている場合が多く、使っても特殊学級の教室や学校関係の展示の資料室で、部活動に割り振られるケースはあまり聞いた事がない。
「学院長がアニメの映画監督をやっていた方でな、サブカルな部活動に対しては熱心に支援してくださっている。ほとんどの空いた教室は文化部に割り振られた。漫画研究部、演劇映画部、ゲーム開発部、アニメ研究部に割り振られている。まあ、特にラノケンには強力なスポンサーがいるからな」
「スポンサーですか?」
「ここだ」
辿り着いた場所は学校にふさわしくない鉄のドアで、鍵穴の上部にはインターホンかと思ったが、指を置く窪みがあり、指紋認証キーだと分かった。
「お前の指紋の登録だ。とりあえず指を置け」
「本当に指紋認証キーなんですね!? こんなのスパイ映画か何かでしか見た事ありませんよ!? 実はラノケン部室と偽った秘密組織ですか!?」
「スパイやら秘密組織は大げさだが、IT企業なんかで指紋認証キーは多く使われてる。まあ、それだけこの部室には高価な物が多いからな。厳重にしてるんだ」
書也が指を置き終わると、教子先生はボタンを押して登録していた。
「よし、登録が終わったな。詳しい事はは中で説明するが……」
「あれ? 愛は登録しなくていいのか?」
「わたしは中等部の時から体験入部させてもらっていたから、登録済だよ」
「なるほど……それで教子先生とも顔なじみな訳か」
書也は愛と教子先生を見比べた。
「愛は熱心な奴でな。中等部の部活にも入らず、ラノケンにいつも顔を出して、部員から教わっていたほどだからな」
「なるほどな。愛がそれほどまでにラノケンを勧める理由が分かった気がする」
「ラノケンは凄い人達ばかりだから、きっと書也君も驚くよ」
「凄い人達ね……」
まさか既にラノベ作家になった人や親が有名作家な方々がいたりするのだろうか?
「語部、試しに指紋認証キーで入ってみろ」
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「はい」
教子先生に促され、書也は指を押し当てると、妙な機械音と共にガチャリと、カギのロックが外れた音が聞こえた。書也は取っ手に手をかけ、ドアを開いた。
「こ、これは……!?」
部室のドアを開けて見て、書也は驚かされた。なぜなら小説を書く為の機器や資料、環境までもが全て整っていたからだ。教員が座ると思われる前のデスクにはデスクトップPCにデュアルディスプレイ、二十三・八インチのモニターが三つあり、そのチェアの下には非常時の電力確保の為かUPS(無停電電源装置)が置いてあったり、デスクの背後にはホワイトボード、天井にはスクリーンシートとプロジェクターが取り付けられ、左右の壁には一台ずつ無線ルーターが取り付けられ、エアコンも二台あり、加湿付の空気清浄機も隅に置かれている。
「部室なのにパソコン室並みの設備じゃないですか!? いやそれ以上!? デュアルディスプレイやUPSなんてパソコンオタクの友達の家でしか見た事ありませんよ!? それにこれは!? ラノベや資料がずらりと!? コピー機やレーザープリンターまである!?」
ドア付近には千冊近く入りそうな縦にも横にも人の背丈を超えた巨大なスライド本棚があり、受賞作と書かれた帯のラノベの文庫がずらり、ラノベ月刊誌も今年のものが並び、辞書、英和や和英などの海外辞書、図鑑、料理レシピ、歴史書、六法全書、医学書、日本と海外のガイドブック、地図帳、古事記、神話、ファッション誌、家具の通販カタログ、詩集、TRPGのルールブック、ゲームの攻略本、アニメの設定資料集、ノウハウ本など、執筆に必要なあらゆる本が並べられている。
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