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#長編
結愛
329
#地雷系
#夏休み
トド村
44
「俺には才能がなかったみたいなんだ。それに比べてこいつの作品は凄いぜ。なんせアニメ化まで漕ぎ着けたんだからな。」
俺は頬杖をつき、博巳を親指で指さしながら話す。
俺が博巳と知り合ったのは高校時代、とある事情からクラスの中でからかわれていた博巳を助け、それからの腐れ縁だ。同じ大学へと進学し、ほぼ同時期に、なろう作家デビューを果たしたのだが片や打ち切り同然に連載を終え、片やアニメ化を果たしアニメ二期プロジェクトの噂まである。
どこでこれ程の差がついてしまったのか……。いや初めから、天と地程の差があったのだ。ただテンプレに則り描いてきた俺と、生きたキャラクターを描き続けた博巳。スタートの段階で既に決着がついていたのだろう。
そんなことを考えていると、博巳も頬杖をついて俺のことを見つめた。
「何を言っているのさ。編集さんから『次回は女の子の魅力全開のラブコメ作品を作りましょう。』って打診を受けているくせに。僕みたいに運だけでアニメ化した作家とは違い、優斗には才能があるんだから。」
俺はウーロンハイを一口飲み「フン」と大きな溜息を吐く。
「何を言っているんだか……。魅力的な女の子を生み出すことが出来ない俺に、ラブコメ作品なんて無理に決まっているだろ。仮にもし、何かの間違いで企画が通ってしまったとしても、続刊出来るクオリティの作品が描けるとはとても思えないよ。」
「僕は優斗の生み出したヒロインはみんな大好きだけれどね。主人公に一途で。」
俺には作家として致命的な欠点がある。博巳は「一途なヒロイン」と評していたが、何と言うかトロフィー的な――中身の無いキャラクターになってしまい、魅力的な――生きた女の子を描くことが出来ないのだ……。
女の子の設定を詰めると、どうしても突然「好きな人が出来たから別れてほしい。」と一方的に別れを告げられ、その後、音信不通になった元カノの姿がちらつき、主人公とヒロインが幸せな日々を送る姿が見えない。
「博巳も知っているだろ、俺が元カノにこっ酷く振られた事を……。もしラブコメ作品を描いたとしても、メインヒロインが最終的に主人公とは違う男を好きになり、とんでもないNTRをかまされる絶望感満載の作品になるぜ。」
「そうならないために優斗のことをこの店に連れてきたんだろ。」
アイさんが頬に手を当てて困ったように微笑んでいる。たぶん、俺達とあまり変わらない年齢だと思うが、その仕草はまるで子供の言い争いを眺める母親のようだった。
一方ミィは何かを考えているようでニヤニヤとしながらこちらを向き口を開いた。
「じゃあさ、私にガチ恋してよ。過去の女のことなんて忘れるくらいのガチ恋をしたら、全部解決するでしょ?」
一瞬、俺の中で時が止まり、口の中に含んだウーロンハイを吹き出しそうになる。ゲホゲホと咽ながら慌ててカウンターの上に置かれた分厚いコースターの上にグラスを置いた。
「そんなに簡単に恋が出来れば苦労はしないよ。」
「うちのお店、色々な女の子が沢山いるんだよ。だから、ガチ恋の相手は私じゃなくても良いから、ユウトさんが『小説のヒロインにしたい』って思えるくらいの推しを見つければ全部解決じゃない?」
「まあ、見つかればね……。」
「きっと……いや絶対に見つかるよ。だってここのお店の女の子『全員レベルが高い』って界隈じゃあ有名なんだもん。この前も、専門誌でうちのお店が表紙飾ったし――コンカフェの専門誌って読んだことある?」
「読んだことない。っていうか、そんな専門誌があるの!?」
多少、本に関する仕事に携わっている人間なので、世の中には様々な専門誌があることは理解をしている。しかし、コンカフェって専門誌が出来るくらい多くのお店があるのか……!?
ミィはカウンターの下から一冊の雑誌を取り出し俺に渡した。大きさはB5サイズくらいで普通の雑誌よりは一回り小さい。その代わり厚さが分厚く、ハードカバーの本と同じくらいのページ数がある。
12月号と書かれた表紙には、Melty Loveの制服を身に着けたアイさんを中央に、その右側にミィが、そして左側には少しギャルっぽい女の子が、それぞれポーズをとっている。
中のページをめくると表紙に映っていた3人が、それぞれの特集ページで取り上げられていた。ここのお店――Melty Loveは「メルラブ」という愛称で呼ばれているらしい。超大手コンカフェ店程の規模では無いにせよ、界隈では知る人ぞ知る優良店という位置づけのお店のようだ。
「ミィちゃんもアイさんも凄いですね。雑誌の表紙を飾るなんて。それに、特集まで組まれていて――。」
「それも嬉しいんだけれど、注目ポイントはここ。」
ミィは雑誌をカウンターに広げるよう要求してくる。ミィに促されカウンターに今見ている雑誌を広げると、ミィはパラパラとページをめくり、とあるページで手を止めた。
「見て、ここのページ。ここにね、今メルラブで働いている女の子達の顔写真が載っているんだよ。」
ミィが見せたページには総勢50名程度の女の子のバストアップ写真が見開きいっぱいに掲載されていた。確かにミィの言う通り、どの女の子も本当に可愛くて、このお店の女の子達のレベルが高いことは嘘ではないようだ。
しかし本人が目の前にいるためか――それとも特徴的なツインテールのせいか――ミィの顔写真が一番初めに目に入った。
コメント
2件
リオンさん、コメントありがとうございます! ラブコメのコメの部分が苦手なので、「笑いました」と言っていただいてメッチャ嬉しいです! これからもよろしくお願いしますね!
うわあ、第4話読み終わりました!元カノのトラウマでラブコメが書けなくなっちゃった優斗の心理描写、めちゃくちゃリアルで切ないですね…。「トロフィー的なヒロイン」って自己分析するあたり、作者さんの人間観察の鋭さが光ってる。そしてミィの「私にガチ恋してよ」発言には思わず笑いました(笑)コンカフェ専門誌のディテールも凝ってて、世界観に没入できました。続きが気になる!