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向井side
頭を抱えて項垂れる阿部ちゃんを見ながら加入して半年くらいのことを思い出す
(優しくて穏やかで可愛らしい人やけど、あの一瞬の阿部ちゃんだけは怖かったんよなぁ〜)
歌舞伎の練習や舞台本番、ダンスや歌の練習やらで慌ただしい日々を送る中、おそらくあの瞬間は全て阿部ちゃんの計算で作り出されたものだった
加入組の3人で練習スタジオから楽屋に戻ってきた時に、少しだけ開いた扉から阿部ちゃんと翔太くんの声が僅かに聞こえてきていた
「ちょ、なに、あべちゃんダメだって、ん」
「ちょっとだけだし、いいでしょ」
「もうすぐみんな戻ってくるから」
「だったら早く」
「もう〜、今までこんなことしなかったじゃん」
「今日だけ、なんか無性にそんな気分なの」
「仕事場ではしないって約束でしょ」
なんとなく、入ってはいけないような空気感を感じて、お互いに目を見合わせてそっとバレないように中を覗き込むと、2人が抱き合っていた
というよりは阿部ちゃんが一方的に抱きしめているに近かったけど
「ちょ、亮平、あの3人にバレるって」
「別にいいでしょ。隠すつもりもないんだし」
「いや、でも」
「付き合ってるの?って聞かれたら、翔太はどうするの?」
「それは、そうだよって言うけど」
つまり付き合っているということで
声が出そうになって慌てて口を押さえる
他の2人も同様に目を見開いていた
というかこれ、ラウールに見せていいものなのか
めめの方を見れば静かに首を振る
頃合いで、立ち去らなければと思いつつも気になってしまって動けない
「じゃあいいじゃん、今日だけ、お願い」
「もぅ……分かったから」
抵抗していた翔太くんの肩の力が抜けたと思った瞬間に、2人の唇が重なる
映画の1シーンのように綺麗で思わず見惚れそうになったが、慌ててラウールの方を確認すると、めめが目を抑えていた
反論しようと口を開けたのを慌てて塞ぐ
「ん〜!」
「ラウごめん、静かにして。ちゃんと後で教えるから」
「直接見るには、お前にはまだ刺激が強い」
静かに話していたのに気づかれたのか、はたまた最初から気づいていたのか
部屋の中に目線を戻すと、阿部ちゃんとばっちり目が合って、意地悪な微笑みを返された
扉に背を向けてキスを受ける翔太くんは気づいていないようだ
というか、翔太くんってあんなに綺麗なんや
歌舞伎では、翔太くんは男役だし阿部ちゃんは女役をしていて
そのイメージが強かったけど、おそらく2人の関係は逆だ
でも不思議と何の違和感もなくて、むしろその方が自然と思えるくらいに、2人の雰囲気は恋人同士のそれやった
「んむ、もう、いいだろ」
「うん、ありがと。この後も頑張れる」
「俺、そろそろ次の練習行かなきゃ」
「俺はもう少し休憩だから。いってらっしゃい」
翔太くんが扉に向かう雰囲気に俺らは慌てて近くの物陰に隠れる
幸い翔太くんは俺らとは反対方向に向かっていって気づかれなかった
翔太くんを見送って部屋の外に出た阿部ちゃんがくるりとこちらを向く
「いるんでしょ?入っておいでよ」
そう言われてしまっては出ていくしかない
3人ともぞろぞろと阿部ちゃんに続いて楽屋に入った
「阿部ちゃん………」
「ま、そういうこと。知ってた方がいいかなって思って」
そう言って笑う阿部ちゃんが何を考えているかがさっぱりわからない
1番優しいと思ってたけど、実は1番怖いのか……?
「俺たち、あんまり翔太くんに行かない方がいいの?」
ラウールが恐る恐る聞くと、阿部ちゃんは体の前で両手を振る
「あっ!そういうことじゃないよ!ごめんごめん」
「……………?」
「別にみんなが翔太と仲良くなることに関しては何も気にしてない
なんなら今後2人で遊んだりしても大丈夫だし、それに関して俺の許可もいらない
メンバー同士は仲がいい方がいいと思ってるし、俺とも仲良くして欲しいし」
「………そうなの?」
「うん、俺は翔太を束縛したいわけでも、みんなに気を遣わせたいわけでもないよ」
「いいの?スキンシップとかしても」
「翔太が本気で嫌がってないなら、別にいいんじゃない?」
「2人で遊んでも?」
「うん」
「泊まりでも?」
「うん」
「カメラの前で絡んでも?」
「うん。好きにしたら?俺はそんなことで怒ったりしないから、仲良くやってこ?」
だったら何がしたかったのか、あんな風にキスを見せつけなくても普通に教えてくれれば良かったのでないかと思っていれば、阿部ちゃんの声の温度がちょっと下がって3人で息を呑む
「ただ」
「「「……………っ……」」」
「翔太に惚れるのだけは許さない」
笑顔が消えて真顔になり、目線が鋭くなる
でもそれもほんの一瞬で、パッと一転して元の優しい声に戻る
「それさえ分かってくれてれば、俺はあとは何も気にしないよ」
「「「………はい」」」
「じゃ、それだけ。この後も頑張ろうね」
いつも通りの爽やかで穏やかな笑みを残して、阿部ちゃんは楽屋を出ていった
「え、こっわ〜!」
「阿部ちゃんにあんな一面があったなんてね…」
「ねぇ、翔太くんに恋さえしなければいいんだよね?そういうことだよね?」
「ん、大丈夫やで、ラウ。それは本人が言ってたんやから。お兄ちゃんとして慕う分には大丈夫や」
「ねぇこれ、自分で気付いた頃には手遅れだと思うから、お互いやばそうだなと思ったら止めようね」
「せやな」
めめと2人で頷きあっていれば、ラウールが素直な疑問を溢す
「え?そんなことなる?」
「「あり得る」」
2人して同じ答えを返せば、ラウールはさらに分からないという顔をしている
あのキスシーンをギリギリのところで見てないラウールには分からないだろう
あんなの間近で防御なしで見てしまえば、男だってクラッときそうだ
目の前に阿部ちゃんがいたからかもしれないけど、恋する翔太くんの顔は穏やかで綺麗で可愛かった
あの衝撃は今でも鮮明に覚えている
そして宣言通り、その後も俺らがどれだけベタベタにしょっぴーに甘えに行っても、阿部ちゃんは何も文句も言わず穏やかに見守っているだけだったし、しょっぴーからも阿部ちゃん何か言われたとかいう文句は聞いたことがない
現在に意識が戻ってきて、未だ項垂れたままの阿部ちゃんに声をかける
「あの時の阿部ちゃんさぁ、めちゃんこ怖かったで」
「へ?どれ?」
「俺らが入ってちょっとの時に、釘刺してきたじゃん」
「あぁ、あれ。俺もちょっと大人気なかったと反省はしてる」
「そうなん?」
「あんなに翔太が3人ともに1番懐かれるなんて思ってなかったからさ」
「へぇ?」
「普段滅多に怒らない分、怒った時には怖いことは自覚してるから」
その一言に少し驚く
「俺らのためやった?」
「どっちかというとねー!……焦りもあったのはもちろんだけど」
「まぁでも、しょっぴーやとね。知らんかったらうっかり好きになりかねん」
「そうでしょ。そうなったら俺許してあげられる気がしないもん」
「それで最初にね」
魅力的すぎる恋人を持つのも大変らしい
「阿部ちゃんは本当に気にしてないけどさ、どっちかというと、しょっぴーの方が嫉妬するんちゃうん?」
あの人は案外寂しんぼだということは、メンバーはみんな分かってる
「まぁね。でも俺はそれも可愛いからさ。束縛されるわけではないし」
「………もしかして今回も?」
「自分からは言わないけどたぶんちょっと拗ねてるね、帰ったら甘やかさないと」
「………拗ねしょっぴーは、可愛い?」
「それはもうやばいよ」
「あはは笑 阿部ちゃんすごい顔してるで笑」
「いやもう、翔太のことに関してだけはコントロールが効かない笑」
「溺愛やね。早よ帰ってあげんと」
しょっぴーのことを思い出したせいか、帰り道は惚気話が止まらなかったけど、2人が幸せそうで不思議と苦でもなかった
次にグループ仕事で会った時も、しょっぴーは通常運転で阿部ちゃんと話してて、ご機嫌取りは上手く行ったんだなと心の中で微笑ましく眺めていた
コメント
11件
やっぱりみんなにちやほやされてる💙が見たいまきぴよ🥰
もう短編じゃないけど、最高💚💙 やっぱこの組み合わせ好き🫶
