長い戦いも、ついに…終止符が打たれる。
勝負の行方は…どちらに……。
〈💚side〉
温かい。駆け巡る莫大な魔力に心が安らぐ。
今までにないほど力が満ち溢れる感覚、けど不思議と落ち着いていて……安定している。変だな、普通たくさんの力を取り込んだら、体が馴染まないはずなのに……君の力はすぐに馴染めた。
これが、君の力…。いや、君との絆、かな?
母「………っ…」
💚「………」
対して相手は、覚醒した俺に焦って取り乱している。魔力も枯渇してるし身体もボロボロ…満身創痍も甚だしい。
でも……戦う意識はまだ、持っているみたい…。
………まだ戦う意志を持っているんだ。
💚「……流石王族だね。」
💚「どんな状況も諦めない……、まだ勝とうとする意志があるなんて。」
母「当たり前…よ。……私はッッ、ここまでしたのよ……、こんな所で諦めてたまるか!!」
💚「……あー、そう。」
なんだ。こいつは……“どんなに苦しい戦いでも諦めない”んじゃなくて、“目標を達成したいから諦めない”んだ。
……………あの、目標を…。
💚「…………そっか。その言葉を聞けて良かった…おかけで………。」
💚「本気でやれる……ギロッ!!」
母「っ!!…」
お前は変わらない……彼と違って変わらなかった。何処まで言ってもクソ野郎……放っておいても、いつか災いを齎す可能性がある。
……けど、…この計画を立ててしまったのは、少なくとも俺の羽が原因だ。間接的に、俺が関わっている。
だから、お前にこの計画を実行させてしまった責任として……俺がケジメをつけよう。
💚「…新しい力は、どんな可能性を見せてくれるのかな。」
母「っ!!」
💚「しっかりと……実験台になってよね。」
俺の中には能力が2つあった。
1つ目は、俺が元々持っていた能力の【風】
2つ目は、彼が持っていた能力の【炎】
しかし、俺の魔力と彼の魔力が俺の身体で混じり合った結果、能力も同じように混じり合った。
そして俺は新たな能力を手に入れる。
2つの能力が【融合】して出来た新たな能力。
それが………
母「…!【炎風】……炎と、風。」
💚「本来風と炎の相性は最悪。なぜなら風は、炎の攫ってしまう、それほど足を引っ張ってしまうからだ。……でも、俺の能力【炎風】は炎と風が混じり合った力。」
💚「混じり合った【炎風】は風のように炎を操ることができ、炎のように風を激しく扱える。つまり、【風】と【炎】の完全上位互換。」
💚「そんな完全上位互換能力の攻撃を、果たして受け止められますか?」
母「……なるほど、完全にここで打ち取ろうというわけね。…確かに私は満身創痍、魔力もないわ。」
母「でも!甘いわね……ッッ」
💚「…魔力がないはず。なのに…魔技を使えた?」
母「……魔力の回復には2種類あるの。1つ目は自然回復、これは時間が経てば回復する…安全な回復方法。」
母「2つ目は生命を削り魔力を回復させること!!これは命を削る代わりに、大量の魔力を一気に回復させる手段!!」
💚「……だから、魔技使えた…と。」
母「……そうよ。だからこの魔技【バリアー改ー】を展開できた。」
母「私はこんな所で終わらない!!絶対に、絶対にッッ!ここで勝ってみせる!!そして、私の目標を!叶e(((…」
💚「…………【バリアー改ー】で慢心しすぎたね。そんな防御じゃ、防げない。」
💚「だって、突然変異種の【風】と純血王族の【炎】が合わさった能力なんだから。……格が何倍も違うに決まってる。ただの魔技程度が防げるレベルじゃないんだよ。」
💚「……(着弾地点に近づいていく)」
母「………っ、ゴホッ!!……ぁ”…ッッ…」
💚「……やっと、動けなくなったね。」
母「ッッ…ハッ…ァ…”…っ……ッッ」
💚「………これで終わり」
母「ま…だ……わ…たッしッは…、…」
💚「まだなんてもう無いよ。諦めて…。」
母「………ッッこ…ろ、ス……のかっ?」
💚「…………お前は、俺の大切な人の命を奪ったッッ……」
💚「あの光景…命が目の前で尽きるあの瞬間を思い出すだけで……また腹の底が煮えくり返り、殺意に包まれてる。…俺はお前が心底憎い。」
💚「でも、……殺さない。殺したら、お前と同じだから。」
そしてきっと……殺すことを、彼は望んでいないから。
なら……俺が殺す理由は無いよ。
💚「………だけど、お前がやろうとしている“独裁”。その思想を持っている、潰えてない時点でお前がこの世界を脅かす存在なのも確か。」
💚「だから…お前は、この世界から排除する。」
母「……なに…ッ……ぃ…で…」
💚「……………」
俺は合掌し、手の中に魔力を溜める。
💚「……今から貴方を、封印する。」
母「!…………」
💚「封印をする……っと言う意味は分かってるよね?」
母「………」
💚「封印を解く方法は1つだけ、封印者が解く詠唱を唱えるだけ。でも俺は今後一切解く気はない。つまり……貴方の人生はここで終わり。実質的な4刑宣告」
母「…………」
💚「貴方は確かに強かった…凄い妖精だった。でも、狂ってしまった……王族としての器じゃなくなった。」
💚「そして…彼を愛さず、利用とした。」
母「!!」
💚「それが………1番のミスだ。違う世界線だったら…貴方は誰にでも尊敬させるような妖精に、なってたかもしれない。」
母「…………」
💚「もし、次があったとしたら……今度は、間違えないことを…願っている。」
母「……(………愛さなかった。)」
❤️【貴方は俺に親の愛をくれなかった。なら母親認定しないのが普通でしょう?】
母「(……ずっと、言ってたわね…その言葉に耳を貸していれば……私も、変わっていたのかしら。)」
母「(これが…罪と罰……か。私にピッタリ…ね。)」
💚「…………………」
荒れ果てた地に静寂が訪れる。
💚「これで………終わり……。」
俺は振り向き、彼に近づく。そして問いかける。
💚「ひまちゃん……勝ったよ。ひまちゃんの言う通り……俺、勝てたんだよ。」
💚「ひまちゃんがいたから勝てたの……後押ししてくれなかったら、覚醒できずに負けてた…。」
💚「ひまちゃんの力…本当に凄いね。あんなピンチだったのに、すぐに巻き返しちゃって……魔力も能力も強くて、これから俺が使いこなしてみせるね。」
💚「火球カッコよかったからなぁー…俺もあれぐらいかっこよく使いたいなぁー。」
💚「ねぇ、ひまちゃん。俺…ひまちゃんに本当に感謝してるの。いっぱい助けられて……そのお礼がしたいの。」
問いかけても何も答えは返ってこない。
分かっているのに………心は否定する。
💚「ねぇ……目を開けてよ。また、喋ってよ。」
一度受け入れて、戦いに望んだはずなのに……彼の4を受け止めて、そして背負って挑んだはずなのに………。
また、まだ……心が…………苦しい。
視界が歪む、何かが頬を伝う。
動かなくなった彼の身体を優しく抱きかかえる。感じるのは冷たい体温……温かい彼とは思えない冷たさで、残酷な事実を突きつけられる。
受け入れなきゃ…いけないのに。なのに……
💚「……嫌だよ…ッッ…ひまちゃん…ポロポロ」
やっぱり…っ…受け入れられないよッッ。
💚「また…一緒に過ごしたいよ、…まだまだ教えたいこと…たくさん、あるのッッ…ポロポロ」
💚「それ以外も……学校も…放課後も…楽しい毎日を……一緒に、過ごしたいよ…ッッポロポロ」
💚「いくらでも…付き合うから…ッップリクラ…たくさん撮っていいから…ポロポロ」
💚「……生き返ってよ…ポロポロ」
そう、強く願う。
ただ……それだけを願って…。
大切な彼のことだけを考えて…。
“命の恵み”だけを思って…。
………強く、強く強く願う……。
💚「〝彼の命を……救いたいッッ〟」
💚「!?!?!?」
大きな心臓の鼓動とともに、大きな白い光が俺の中から放たれる
💚「何ッッこれ!?……この光…ッッ何!?」
放たれる白い光に、驚きが止まらない。
この現象は何なの……こんなの初めて。俺の身体に……何が起きて……。
💚「!!!……身体の傷が直ってッッ!?俺…治癒行為なんて技術、ないはずなのに…勝手に身体が……。」
💚「!!!……まさか、……この………光、って」
💚「そういうことなの……。」
俺は………ずっと忘れていた。何で俺が突然変異種個体なのか……。
それは【癒し】の家系から産まれた【風】の妖精だからだ。
俺はずっと風を使っていた。実際そうだ、風の能力しかなかったから………。
でも、俺は元々【癒し】の家系……癒しの血は、俺の中にも流れている。
つまり……俺はもしかしたら【癒し】の力を扱えるのかもしれない。
💚「そんな前例は存在しない……そもそも癒しが一切使えなかったか奴が、急に癒しを扱えるかどうかも……怪しい。」
けど、ここで起きたチャンスを…逃すわけない。
彼を救えるなら…またあの日常が迎えられるならッッ!!俺はどんなことでも挑戦する!!!
💚「無謀だろうが何だろうが…やってみせる!」
0に等しかろうが、俺にはそれを実現できる力がある!
俺は彼に思いっきり抱きつく。
俺の放たれた光が、俺と彼を覆う。
何も見えないし、聞こえないし、分からない……過度な光に目が眩み、痛くなる。
でも、抱きつく力を緩めない。ここで、可能性を捨ててしまうものか。
彼の命の可能性を……ここで、もう一度!!
その時…光が赤色に変わり、今まで以上に俺たちを包んだ。
俺はその光に包まれながら……そっと意識を落とした____。
?「ーーー」
?「ーーーーー。」
何かが……聞こえる。
何が聞こえて………
………駄目だ。意識がはっきりしない…何でこんな時に……。
?「たく、能力を存分に使いたいのは分かるけど…全魔力なるなるのは、SDカード抜かれて無くなるぐらいヤバいって言っただろ?」
?「それぐらい覚えておけよな…“すち”。」
え………俺の、名前。
それに……その例え方って………。
?「……お、意識大分戻ってきたみたいだな。」
?「………さぁ、ゆっくりと目を開けろよ。すち?」
俺は聞こえる言葉通り、ゆっくりと………目を開けた。
💚「ッッ!……ポロポロ」
そこに居たのは…………。
❤️「…無事で良かったよ。すち。ニコ」
傷も塞がり、羽も生えていて…
あの日常と何も変わらない…俺の大切な大切な…親友……。
💚「っ…ひまちゃんギュ!!!…ポロポロ」
❤️「うぉッッ…」
💚「ひまちゃん…ひ”まぢゃ”んッッ!!…ポロポロ」
💚「俺…ざみ”じが”った…!!……本当”に、ごわが”っだ!!!…ッッポロポロ」
❤️「!すち………ヨシヨシ…怖い思いも苦しい思いもさせてごめん……でも、もう大丈夫。生き返ったから。」
💚「もう”……居なぐ、なら”ないで”…ッッ約束…して…ッッポロポロ」
❤️「ん…もう、いなくならないよ。ごめんね……」
❤️「救ってくれてありがとう、すち。ギュ」
💚「(っ……やっぱり…温かい…ッッ)ポロポロ」
荒れ果てた地には……2人の妖精の啜り泣く声が響き渡った。
しかし、悲しさなどは一切ない。
次回、最終回
第21話「俺の羽は_。」
コメント
8件
感動するっ…ほんと神作品だ…!!何回も読み直しちゃいますっ!!
あ、あう... 神、神すぎます...✨ まじめに感動すぎます
なんですかこの神作は😢 最終回悲しいですがとても楽しみです!てかまじで涙止まんねぇw