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注意! 都合上、十九話の後からになってます。
そんなこんなで俺は愛と別れた。
一日だけでも酷く疲れた。今日はもう、早々に家に帰って寝よう。
そう思って、家へ足を運ぶ。道中、木の葉の揺れる音と共に泣き声が聞こえた気がしたが、気の所為だろう。
家に着いて、ふと、リビングにある全身鏡に目が行った。
眉間にシワが寄り、目の下には隈ができている。
「酷い顔だな」
自傷の笑みが漏れ出る。
「しっかりと笑えなきゃな。主を笑わせる為には、俺が笑ってないとな」
手で無理矢理口角を上げる。
「兄貴とはずっと疎遠のままで、主は幾ら手を尽くしても社畜のままだ」
「本当に、情けない」
なんでこんな事を考えているのだろう。余計に自己嫌悪が押し寄せて来て、反吐が出そうだ。
東の主を守れなかった俺は、兄貴に見せる顔が無い。守れと言われたのに、守り切れなかった。弱くて、主の社畜も辞めさせられなくて、どうして、俺はこの世界に存在しているのだろう。
そんな事を考えていると食欲も失せてきた。
今日は、飯抜きで良いか。
重くなって来た瞼を無理矢理開かせ、自室に帰って寝た。
次の日、俺は、風邪を引いた。
情けない。みっともない。そんな言葉が頭をよぎる。
そんな暗い感情を隠すように笑顔を作り、リビングに向かう。
「おはよう。主」
いつもどうりに笑顔でそう言ったはずだ。なのに、主は眉間にシワを寄せた。
「独、熱でもあるんじゃないか?」
図星だ。
「そんな事無いさ」
そう笑い飛ばすと、主が電話を掛け始めた。
「イタリア?俺は今日休む。独も休みだ。あぁ。後は頼むぞ」
「ちょっ、俺一言も休むとか言ってないぞ」
慌てる俺に主はため息をついて話し始めた。
「そんな状態でまともに仕事ができるものか」
そう言って、主は俺を無理矢理、強制的に部屋に戻らせて、ベッドに寝かせた。
「お前は、無理し過ぎなんだよ。兄さんの事とか、全部一人で背負おうとするなよ」
俺が睡魔に負けて、夢の世界に行く前に主がそんな事をボソッと言ってた気がする。
俺の事なんて、そんなに気にしないで欲しいのに。自分のことを第一に考えて、笑ってくれれば十分なのに。
そうして俺はスッと夢の世界に入った。
バンッと音を立てて俺、独華は本を閉じる。
「最悪な内容の本だな」
明らかに怒りや少し理解できる部分があってなんか、こう、余計に苛つく。
「確かに、伊華と出会わなければ、兄貴との関係も悪いままだっただろうし、ずっと自己嫌悪が襲って来ただろうけど、こりゃ酷すぎるだろ!」
作者を今度一発ぶん殴ろう。そうしよう。
そんな事を考えてると、ふと伊華に会いたくなってきた。
伊華の家に行こっと。
「本当に、あの時に、伊華に出会えてよかった」
家から出てきた伊華にそう伝えると、照れたように頬を薄紅色に染めて伊華は口を開いた。
「ioもなんね」
そう言って、フニャっと笑う伊華が何とも可愛らしい事か。