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#グロテスク
観測者l!!@暑すぎて溶けた☆
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菜津/natsu
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「…」
(…複数人で使ってはいけない道具)
「椎名ちゃんは、嘘つきなの?」
(いや、違う…椎名ちゃんに限って、そんな…嘘をつくのが上手い、とかないよね。)
(…何年関わったと思ってるの?)
(…2年?いや、それどころじゃない、中学から一緒だった。)
(………)
完全に不信感に飲まれていたりりは、トイレで1人考え込んだ。
靄が出てはメモに書き、出ては書き、出ては書き
それを繰り返し、東雲椎名という、存在を整理しようとする。
言われてみれば、東雲椎名が幼い頃の話をあまり聞いたことがなかったような。
(…いや、覚えてないって言ってた、絶対。)
(ちっちゃい頃のことなんてあんま覚えてないって言ってたよね。)
___
「さて、探索者のチームはその2人だけじゃないんだ、知ってるか?」
教師は一息置いて話した。
「えー、そーなんですか?」
「あぁ、何百人にも及ぶ大編隊だった。」
授業に興味のある生徒は、驚いたような顔をした。
教師は続ける。
「そのうちのたった2人だった。…記憶だと一方はリィン・システムを取り、もう一方は取らなかった。」
教師は、相変わらず棒人間を書いている。
それを見て椎名はちょっと面白いな、なんて考える。
厳格そうな教師だが、椎名に対しては割と理解、というか諦めの表情を向けそうになっている、そんな人。
だからこそ絵が少し下手なことが、ほんのちょっとしたギャップのようなものに見えた。
「…変な話だよな、目の前にあまりに便利な道具があるというのに、あえて取らない選択肢を取ったこと_」
「…今でこそデメリットも徐々に分かってるのに、何も分からない段階で取らなかったその人が、何故あえて撮らなかったのか?」
「おとぎ話みたいな状況だけど、実際にあったらしいんだ。」
「…さて、なぜ取らなかったかクラスのみんなで考えてみるか!」
教師は、そう言って笑ってみせた。
生徒は、次々に手を挙げる。
「どうなるか分からなかったから取らなかったのではないですか?」
「ふむふむ…。なるほど、ではそこ。」
「え、その人が逆張り…というか、天邪鬼だったんじゃ?」
「流石にそれはないでしょ〜!!?」
後ろの席の方からそんな声がいくつか聞こえる。
そんな声に、先生は優しく笑って答えた。
「いや、あるかもしれませんよ?もしかしたら。」
「え〜!?そんな人なの〜?偉人なのに!?」
教師は、微笑ましそうな目でその様子を見ていた。
他の生徒は、なるべく考えて手を挙げている。
頬杖をつき、窓の外を眺めた。
…何故だろう?そこに答えがある気がするのだ。
だがそうしてもなお、椎名は…思いつかなかった。
リィン・システムの存在は知っているし、便利なものだともわかっている。
それなのに取らなかった理由が、よく分からないのだ。
まどろみが邪魔をして、拭いきれない思いが喉に取れない小骨となって残る
(…取らなかった理由も、分かるかもしれない)
(でも、なんでだろう、なんでわかるんだろう?)
まるで先程まで眠っていたかのような錯覚が、椎名を襲う。
何も考えられない、考えても分からない_
(…どうして?)
___
りりはようやく立ち上がり、重い足取りで、教室へと歩いた。
たった1人の空間では、異様なほどの孤独が心臓をつつくようだ。
皆は当たり前のように教室で授業を受けているし、体育館から聞こえる音は何もない。
随分と遮音がしっかりしているせいだろう…あまりにも孤独だ。
一人きりで、消えてしまいそうだ。
どこか遠くに行ってしまうのでは?誰かに連れられてしまうのでは?
_そんな錯覚だ。
「…」
最近は色々とありすぎたせいだろう、こうや って、妙に思いふけってしまう。
なにか、すごく大きな事件があったわけではない。
椎名がタヒんだだとか、学校が不審者に襲われただとか、そんな壮大なストーリーはここにはない。
ただ違和感が_積み重なろうとする1が、10になる過程を、どこか近いのに、遠い場所で見ているような_そんな嫌な気分。
粘ついてて、それなのに何百もの棘があって、それが身体を、じわりじわりと溶かしていく。
(…リィン・システムなんて所詮偉い人しか持ってないものだって思ってた、私には関係ない、って。)
(なのに、椎名ちゃんの”それ”は明らかに、どう考えても……)
(…リィン・システムの”禁忌”だよ…?)
(………ねぇ、なんで言ってくれなかったの?いや、知らなかった?いや、いや………)
(分からないよ…わからないよ…!)
再度トイレに戻ろうとする足すらも重くて、あの日、夕暮れの元で静止した椎名のように、りりまでも、この孤独すぎる廊下の端の方で止まった。
そこに当たるのは昼の陽なのかもしれない、だが…どうしてか、それにデジャヴを感じた。
重い足取りがどこに向かっているのか分からない。
ただぐるぐると、どこかを回っているかのようだ。
「……?」
彼女は、ゆっくり、へたり込む。
保健室の先生が、なにか良くないものを見るかのような目で、りりを見ている_そんな気がする。
_りりはそれに反応すらせず、ただ1人、呆然と倒れ込んだ地面を眺めていた。
「…だ、れ、か」
絞り出すように助けを乞いてみる。
誰にも届かないと分かっているのに、どうして無意味なことをしている?
というか、今の私はなんだ?
私が今こんなことをしているのは何故だ?
_なにも重い過去なんてないし、何もかも普通の、女子高生として。女の子としてただ生きていた。
それなのになぜこんな異常に巻き込まれている?
「………わからな…」
「…! ?」
「__夫!?」
だれかの声が聞こえる。
_聞こえるのに、誰かわからない。
ただ地面を見ている、それだけでいい。
「…?」
そんな思いと裏腹に、俯いていた顔は、勝手に上がっていった。
__何かに扇動されるように。
「…りりさん!!?」
そこに居たのは_くるめだった。
あまり関わりのない彼女が、わざわざ心配してこちらに来てくれていたのだろう。
りりは、はっと我に返る。
「…ご、ごめんなさい!私…なんか最近変で…」
「あの、困ってるんですか?大丈夫です?」
「…えっと、だいじょう…」
誤魔化そうとするりりを、くるめは静止した。
「…そんな風には見えませんけどね。」
「何があったのか知りませんけど…もう、限界なんでしょう?」
「…私じゃなくていい、椎名さんでも、先生でも…話してみたらどうなんです?」
りりの喉は、酷くつっかえた。
くるめの言い分は最もだし、そうするべきだ、否、そうしないと壊れてしまう。
それなのに…誰かが、そうしようとする足を掴んでくるように、何も進めなくなる。
「違う、んです……」
くるめの優しさすら受け取れない自分に、 嫌気がさす。
___もう、どうすればいいの?