雨が好きだ。
昔はあだ名で「太陽くん」なんて呼ばれてたっけ。その時は確かに晴れが好きだった。でも、君と出会って関わるうちに、気付けば雨を待ち遠しく思っていた。
でも別に彼がインドアだからとか、陰気な人だからという訳ではない。なんなら根っから明るくて周りに花が飛んでいる様な人だ。
理由はたったひとつだけ。
君の髪色が、1番映える天気だから。
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「今日も雨だね〜」
涼ちゃんが窓を見ながらため息と共にそう漏らす。優しい雰囲気を常に纏う彼はじめっとした気候があまり好きではない。
「梅雨だからね〜。今日はやっぱりお家デートにする?」
久しぶりに2人とも休みだったため、2人でどこか出かけてランチでもしようという予定だったのだ。が、やはり梅雨の雨率には叶わない訳で。涼ちゃんは少し考え、
「んー…。若井が良いなら予定通り出掛けたいなあ…。だめ?」
と身長は俺より高いはずなのに上目遣いで聞いてくる。こんなの駄目って言う人いるのか。
「勿論いいよ。じゃあ準備しよっか」
「ほんと!ありがと〜。そうだね」
準備を始めようと後ろを向いた時、背中に重みを感じ、バックハグされたことに気づく。珍しい、というか初めてだ。こんな風に甘えられたのは。
「ふふ、どしたの?」
「えへ、楽しみだなーって。今日ランチの後どこ行く?」
と質問されたが、耐えきれずに向かいなおって緩んでいる口にキスを落とした。なんだか付き合いたてのバカップルのような事をしている気がする。しばらくして離れるとほんのり赤くなった顔で、はにかむように笑う姿が可愛くて。もう一度今度は深いキスをしていたら家を出るのが遅くなってしまった。
雨は思ったより弱く、傘をさせばあまり気にならない程度だった。ビニール傘越しに見る街は、いつもより薄暗く街灯がキラキラと眩しい。それらに照らされる君の髪の毛を見て、 ああ、やっぱり綺麗だなと思う。
バスに乗って10分程でお目当ての場所に着いた。落ち着いた、穴場っぽいランチ向けのお店。昔、テレビで取り上げられていて、行きたいねっていう話になったが、多忙過ぎて1年も経ってしまった。
「何食べようかなぁ。あっ、オムライスある!…いや、キーマカレーもいいな」
メニューと睨めっこし、ご飯のことですら真剣に悩める君を見て思わず口角が上がる。
「じゃあ半分こする?1個づつ頼んでさ」
「えっいいの!?若井、ここのハンバーグが美味しそうって言ってなかった?」
よく覚えてるな。1年も前の話なのに。言った俺ですら忘れていた。でも、ううんと首を振る。
「言ったかもしれないけど、今はオムライスとキーマカレーの気分だなって。」
そう言ったあと、1つ思いつき実践してみる。
「だめ?涼ちゃんと半分こしたい」
我ながら不慣れなことをしてる自覚はあった。それに顔が熱い。でもこれはやっぱり効果てきめんで、君は嬉しそうな悔しそうな表情でもちろんだよ、ありがとと言った。
しばらくして運ばれてきたそれは、普通のものと少し違い、トッピングでオシャレに仕上げられいた。はしゃぎながら写真をとる涼ちゃんを横目に、さっそくキーマカレーを1口頂く。湿った天気にぴったりでスパイシーで、美味しいよと涼ちゃんの口にも放り込む。突然のことに驚いているが嬉しそうだ。その後俺もオムライスを何度かあーんしてもらい、2人でぺろりと完食した。
店を出るともう雨は上がって青空が見えていた。傘が無い分近くなった肩を並べながら、動物の置物が欲しいから家具屋に行こうとなったので、歩いて少しの所に向かっていた。
「晴れてきたね〜。やっぱり太陽があった方が好きだな」
「涼ちゃんは根っからの晴れ好きだよね。雨だとランニングで濡れちゃうから?」
「んー、それもあるんだけど」
と急に走り出し、止まったと思ったら振り返ってスマホを取りだし写真を撮り始めた。何をはじめる気なんだろう、と見ているとまたこちらにかけて来る。
「ほら、これが僕が晴れ好きな理由!」
先程撮ったと思われる写真には、俺の赤髪が日差しに当たってキラキラと照らされていた。なんだか既視感がある。と思って涼ちゃんの顔を見ると、明るい金髪が視界に入ってある光景を思い出した。
俺が綺麗と思った時と、情景が全く一緒だ。
これは金色が映える雨が好きな俺と、赤色が映える晴れが好きな君の話。
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読んで下さりありがとうございます!
気がつけばフォロワー様が10人を超えていました…!ありがとうございます✨とっても励みになります
次も読んで頂けると嬉しいです
コメント
6件
優しさと可愛さで溢れている作品、とっても素敵です🫶 何故だ、何故いいねが少ない...!(꜆꜄꜆˙꒳˙)꜆꜄꜆ ポチポチポチポチポチ
心が暖まる素敵なお話、ありがとうございます....
初めまして。めちゃくちゃ可愛いお話しで、ほっこりしました🥰 また更新楽しみにしています✨