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錆の都が凍りついた2ヶ月――その間、鋼谷の目には無数の皮肉が映った。これまで数年にわたって築き上げてきたものが、たった1時間で崩れ去る。その刹那的な変動に、どれほどの苦笑を禁じ得なかったことか。
冥王会が鋼鉄結社に対して行った攻撃は、実に「効率的」で、しかも「見事なまでに無駄がなかった」。戦闘開始からたったの1時間で、鋼鉄結社の拠点、街の中枢が灰塵に帰したのだ。その後、冥王会のメンバーはただ静かに街を見渡すだけで、すぐに去っていった。予想通りと言えば予想通り、だが圧倒的な手際の良さに、鋼谷は内心で絶句せざるを得なかった。
「わずか一時間…何ができたっていうんだ?」
鋼谷は、2ヶ月前に起きた冥王会の襲撃を思い返していた。その間、冥王会はおそらく、わざわざ街を占拠して徹底的に破壊して回ったわけではない。ただひとつ、確実に成果を上げたのは、鋼鉄結社の象徴たる存在――その名声を消し去ることだった。
何が残ったか?残ったのは、冥王会がもたらした“空白”だ。
鋼谷がついに得た答えは、驚くほど単純で皮肉なものだった。冥王会は最初から、彼らに何も残すつもりはなかった。彼らの目標はただひとつ。それは鋼鉄結社が抱えていた「力」を根こそぎ奪うこと。そのために、徹底的に何も残さず、すべてを無に帰したのだ。
「結局、あの一時間で、俺たちは、何ひとつ守れなかったのか。」
鋼谷は、振り返ることのない2ヶ月を思い返し、皮肉の一言を呟く。戦記風に言うなら、まさに「誇り高き英雄たちが、愚かな選択で敗れた瞬間」。言葉にするなら、無駄な抵抗だった。
だが、鋼谷はその皮肉の中に、今一度、自らの意地をかけることに決めた。すべてが壊れても、最終的に自分が勝つこと。それが、冥王会への唯一の反撃だ。
「冥王会のやり方が、一瞬で奪ったのは、あまりにも効率的だな。でも、だからこそ…俺がその反動を、叩きつけてやる。」
それが鋼谷の答えだった。