そこから数分後───…
10分と経たずに俺の頼んだ白珱サンド、潮風いちごボウルとココナッツミルクラテ
尊さんの頼んだビーチエッグプレートと白珱ブレンドコーヒーが運ばれてきた。
目の前に並んだ料理たちは、どれもため息が出るほど魅力的だった。
まず、俺の『白珱サンド』
ふわっふわの白パンに、厚焼き卵照りのあるハム
シャキッとしたレタスが絶妙なバランスで挟まれていて、見るからに柔らかそうだ。
パンの白さと具材のカラフルな層が、まるで小さな芸術品のよう。
その隣には、鮮やかなコントラストが目を引く『潮風いちごボウル』
真っ白なギリシャヨーグルトの上に、朝露に濡れたように瑞々しいイチゴの赤と
ブルーベリーの深い青が宝石みたいに散りばめられている。
そして、その間から覗く海藻由来のグラノーラが、どんな風味なのか、好奇心をくすぐる。
「うわぁ……すごいですね」
思わず声が漏れた。
尊さんの頼んだ『ビーチエッグプレート』も、また食欲をそそる。
厚切りのトーストに、とろりとした半熟の目玉焼き、そして香ばしく焼き上げられたベーコンが添えられている。
シンプルだけど、素材の良さが際立つ
間違いない組み合わせだ。
「いただきます」と言う尊さんに続いて俺も手を合わせた。
まずは、お目当ての『白珱サンド』から。
パンを軽く押さえつけ、大きく口を開けてかぶりつく。
「…っん、おいひい…!」
予想通り、パンは驚くほどしっとりとしていて
口の中でふわっと溶けていくようだ。
優しい甘さの厚焼き卵が口の中に広がり
ハムの塩気とレタスの爽やかな苦みが、その甘さをキリッと引き締めてくれる。
定番なのに、店一番人気というのも頷ける、丁寧に作られた優しい味だ。
サンドイッチを半分ほど食べ進んだところで
隣の『潮風いちごボウル』へ。
スプーンで真っ白なヨーグルトとフルーツ、そしてグラノーラをすくい上げる。
恐る恐る口に運ぶと──
驚いて言葉を失い、代わりに手が止まらなくなる。
ヨーグルトの濃厚なコクと、イチゴとブルーベリーの弾けるような甘酸っぱさ。
そこに、サクサクのグラノーラが食感を添える。
そして、海藻の風味だ。
磯臭さなんて一切なく、微かに感じる塩気が
かえってフルーツの甘さを際立たせ、全体の味を爽やかに引き締めている。
まるで、海の風が運んできたようなミネラル感のある新しさだ。
これは、サンドイッチの合間に口直しとして最高に合う。
ちらりと尊さんの方を見ると、彼は『ビーチエッグプレート』のトーストに、半熟の黄身を絡ませて食べている。
その様子がなんとも美味しそうで、彼の『白珱ブレンドコーヒー』から立ち上る湯気と香りが
この贅沢な朝の時間をさらに特別なものにしてくれていた。
「どうだ、上手いだろ」
尊さんがコーヒーカップを置き、俺を見てニヤリと笑う。
「はい…!びっくりしましたけど、めちゃくちゃ美味しいです!塩気が絶妙で、これ、いくらでも食べられちゃいますね」
「ああ…そう言うと思った」
彼と二人、他愛ない会話を交わしながら
心地よい木の空間で食べるご飯は、昨日よりもさらに美味しく感じられた。
朝日に照らされた海の家で、大切な人と過ごす時間はやっぱり格別だ。
美味しいものを好きな人と
この瞬間を共有できることが何より嬉しい。
程なくして全てを平らげ、尊さんと残りの飲み物を飲みながら談笑していた。
「ふぅ……食後のデザートも最高でしたね」
満腹感に身を委ねながら呟く。
「あぁ、また来よう」
食後、お腹が落ち着いた頃に尊さんが不意に問いかけた。
「この後、なにかしたいことあるか?」
俺は少し考えてから、店の壁に貼ってある『ビーチバレーボール10:00~18:59までレンタル可能!』と書かれた貼り紙に目が止まった。
「ビーチバレーやってみたいです!レンタルやってるぽいですし」
「ビーチバレーか」尊さんはちょっと意外そうな顔をしたが、
「そういえばガイドブックにレンタルできたって書いてあったな」
と納得した様子で頷く。
「はい!The夏って感じして楽しそうですし、それに……」
「それに?」
尊さんが少し首を傾げて見つめてくる。
「せっかくの機会ですから、尊さんと勝負してみたいです!」
「……勝負?」
「はい!先に7点取った方が勝ちで、負けた方が買った方にアイス1つ奢るんです!」
ノリノリで話すと、尊さんは
「ふっ、面白いな。やるからには本気で行くが、いいのか?」
「俺だってこう見えて高校時代はよくバレーやってたんで、望むところです!!」
「なら決まりだな」
俺達はレンタルサービスの受付へ向かい手続きを済ませると
バレーボールを片手に再び海岸へ向かう。
まだ人の少ない砂浜は朝日を浴びて眩しく輝き
波の音だけが静かに響いている。
「よし、ここでいいか」
「はい!」
軽くボールを地面に打ち付けながら
簡単なアップをする。
足元の砂は想像以上に動きにくくて
いつもより力が入りにくい。
それでも楽しさの方が勝っていた。
しかし、ビーチバレーは普通1チーム2人の「2人制」でやるものだ。
1体1という今の状況は確実に難しく、
攻撃範囲も広いため守備が難しい。
尊さんは仕事もスポーツも得意な文武両道なイメージがあるし…
正直勝てるかわからないけど
(でも負けたらアイス奢らないといけないし……絶対負けられない!!)
「アイスのためにも負けませんよっ!」
「こっちのセリフだ」








