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Ruu
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羽海汐遠
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「私も強くなってるから。警備隊の隊員にだって簡単に負けないって自信を持って言えるくらいにはね」
「ええ、存じ上げております。クレハ様が訓練場でご自身の倍くらいの体格差がある兵士と戦って勝利したお姿……今もリズの目に鮮明に焼き付いておりますから」
「でしょう? 『とまり木』のみんなには敵わないけど、結構良い線までいけてるんじゃないかなぁ」
不定期で警備隊の人たちとも手合わせをさせて貰っているが、そこでも確かな手応えを感じている。もう私は守られるだけではなく、自分で戦うことができるのだ。8歳の頃から地道に続けてきた鍛錬の成果が実を結び、嬉しくなる。
「はい。ですが……リズはクレハ様がこの先どんなにお強くなられたとしても、心配をし続けます。それはルーイ先生も『とまり木』の皆さんも……もちろんレオン殿下だって同じですよ」
仮に私がクラヴェル兄弟より強くなったとしても、その気持ちは変わらない。リズはきっぱりと言い切った。心配をしなくていいだなんて到底無理な話であると……
リズが、みんなが……私のことをとても大切に思ってくれている。私だって逆の立場だったらきっと同じことを言っていたはずだ。いくら成し遂げたい目的があったとしても、皆の想いを踏み躙るような無謀な真似だけは絶対にしてはいけない。
「……うん。それは分かってる。驕るべからず、そして報連相はきっちりと……でしょ?」
「はい。その通りでございます」
「ネルさんとティナさんに会う時は必ず『ラリー』の格好に着替える。そして、警備隊もしくは『とまり木』の隊員を2名以上同行させること」
「殿下が提示された条件ですね。そちらも間違いありません」
強くなったからといって慢心するな。油断している時が一番怖いのだと、この前ルーイ様にも注意されたばかりである。特に連絡や相談を怠ってはいけない。
どうも私はラリーの姿をしている時は普段よりも威勢が良くなってしまう。反省しなければ……
「ところで、クレハ様。お話しは変わりますが、三番隊にはコニー嬢の兄君が在籍しているのでしたよね」
「うん。実は今日会えるんじゃないかって、密かに期待してるんだ」
コニー・プラット男爵令嬢。
ユニレーム商会の来訪を知らせてくれた、私と同い年の14歳の少女。彼女の兄がクライヴさんの隊に在籍しているというのだ。もしかしたらこれまでに何度か顔を合わせていたのかもしれない。コニー嬢のことがあったからというわけじゃないけど、これも何かの縁である。改めて紹介してもらえたらいいなと思っていた。
「お名前は確か……ハリソン・プラットさんでしたね。クライヴさんに頼めばすぐにでも会わせて頂けると思いますが……」
「そうなんだけど、今日は突撃訪問だからね。あんまり迷惑かけたくないんだ。とりあえずお願いだけしてみて、忙しそうだったら次の機会にって感じにしようかな」
「分かりました。状況を見てお伺いを立ててみましょう」
仕事の邪魔をしたくない。今日の目的はケーキを届けることだ。三番隊なら他の隊よりも会えるタイミングは多いだろう。焦る必要もない。
軍の詰所までは馬車で40分くらいだ。リズと会話をしながらの移動はあっという間に終わりを迎え、私たちは目的地へと到着した。
「では……ラリーさん。ここで少しばかりお待ち下さい。私が先に行って中の様子を見てきますので……」
「うん、お願い」
事前連絡をしていないので当然であるが出迎えはない。本来であれば詰所の中に入ることだってできないはずなのだけど、私とリズに不安はなかった。なぜなら、リズを知らない兵士は殆どいないからだ。
彼女は『クレハ』の侍女という肩書きが浸透している。そしてリズには及ばないが、ラリーもネルとティナに会うために定期的に訪れているので、ある程度存在を認知されていた。つまり、この詰所では顔パスというものが通用するのであった。
とはいえ……私たちの顔を知らない隊員とてゼロではない。運悪くそういった者と遭遇した時の対処法も万全である。リズはジェラール陛下とレオン、両名のサインが入った通行許可証を所持しているのだ。
この許可証はリザベット橋を渡るためのものであるが、橋を通過することを王族に認められている……それだけで彼女の身分が保証されていることに疑いの余地はない。
王族のサイン入り書類……それは、万能通行手形のようなものになっていた。あまりにも強い効力にリズは恐れ慄き、いざという時にしか絶対に使わないと大切に保管している。そのため、実際に使っているところを見たことはあまりないが、そのいざという時がいつくるかは分からないので、常に持ち歩いているのであった。
「あれ? ラリーちゃんじゃないか」
ぼんやりともの思いに耽っていた私に誰かが声をかけてきた。声のした方向に視線をやると、警備隊の隊服に身を包んだ男性がふたり……そのうちのひとりとは面識があった。
「こんにちは、ダレルさん」
彼の名前はダレル・ハーギンさん。三番隊の隊員でクライヴさんの補佐役を務めている。ラリーとも気さくに会話をしてくれる優しい人だ。
隣にいる方もダレルさんと同じ襟章を付けているので三番隊だろう。残念ながら名前はわからないが、ダレルさんよりもかなり若く見える。もしかして新兵さんだろうか……