目が覚めると医務室にいたベッドを囲うようにかけられているカーテンをずらし周りを見渡すがルカの姿が見当たらない。
シャル「嫌だ… 」
誰も居ない医務室はシャルロットの呼吸音とシーツが擦れる音、消毒液の匂い。昔を思い出して手が震える。
入院生活の全てが嫌だったじゃなかった、さなさんに出会えた、『聖人の世界を救うまでの人生』も見れ今この世界の役に立っている。ただどうしても思い出してしまう、昔のように外で遊びたいのに身体はそれに応えてはくれない、走る事も日によっては歩く事さえ出来なくなった。何より両親にとって要らない子になってしまったのが辛くてしんどくて生きて行ける気がしなかった。
(ルカが居たからこんな考えしなかったのに…
嫌な事を思い出してしまった、そう思い急いで布団にくるまり震える手を抱えルカが早く来る ことを願う。
カララ、とどのくらい時間が経ったか分からないが音がなかった医務室に響く音に布団から顔を出す。
ルカ「シャル、具合どう?」
靴の音を鳴らしながら掛けられているカーテンをずらし中に入って来たルカに シャルロットは起き上がり顔を見せずにそのまま腰元に抱きつき顔を埋める。
ルカ「シャル…?」
シャル「……」
ルカ「ははっ、シャルくすぐったい」
無言のまま腰に頭をぐりぐりと押し付ける、シャルロットの頭をくしゃくしゃに撫でながら笑うルカに震えていた手が止まる。
ルカ「どうしたの、なにかあった?」
シャルロットの事を抱き上げ膝の上に乗せる、ベッドの上に座り背中を赤子のようにトントンと一定のリズムで叩く。
シャル「なんでもない…ありがとう、ルーカル」
ルカ「えっ」
ルカの首に手を回して顔を埋め名前を呼ぶとびっくりしたような声が耳元で聞こえた。
ルカ「…今の俺がいるのは碧のおかげだよ 」
ルカ「きっと碧じゃなきゃ俺は俺の力を嫌って絶対使わなかった、そうなってたら無駄な犠牲が出てたよありがとう」
その後ずっとシャルロットの頭を撫でながら感謝を伝え、たまにシャルロットへラブコールし続けシャルロットの顔がどんどん赤くなっていくのに気づきニヤニヤしながら続けた。
シャル「っっもうっ、いい!」
ガバリッとルカの首元から顔を上げ真っ赤な顔でプルプルしている。
ルカ「魔力も戻ったみたいだし閉会式行こ!」
その状態のまま抱き抱えられ立ち上がるとアリーナへと走る。
_________________
(やっと降ろされた…
アリーナに出る前にやっと下ろされたが少し不貞腐れているルカの背中を叩きアリーナへの道を進む。
出口に近づくと共に歓声が大きくな理光が差し込む。
デニスはルール違反を起こし退場。ワイバーンを呼び寄せていた事も分かり騎士団によって連行されて言った、ルカに気絶させられたデニスは無抵抗のまま連れていかれた。
エディはこの事件に関わっていないとわかっている為ルーム学園はそのまま表彰される事となった。
『それでは!発表致します!!』
『3位!』
『ヴェルダン学園!』
『一試合目ではアビーが3着になりました。ワイバーンを従える力強さに素晴らしい火属性を披露してくれました。』+3
『二試合目ではメルーデル学園の代表者との高レベルな闘いが繰り広げられていました。勝利したメルーデル学園とヴェルダン学園に高ポイントが与えられます。』+4
『三試合ではルーム学園との対戦で惜しくも負けてしまいましたがアビーとミリーナの連携が取れた素晴らしい戦い方でした。』+3
ヴェルダン学園ポイント数『10』
『2位!』
『ルーム学園!!』
エディ「!!!」
エディは驚き目を見開き杖を持つ手に力が入る。ほっとして笑顔になったその目には涙が浮かんでいた。
『1試合目では4着になってしまいましたがワイバーンとの連携が取れておりワイバーンへの援護魔法も素晴らしかったです。』+3
『二試合目ではデニスとエイベルが闘い大きな爆発と共にデニスが勝利しました。メルーデル学園との戦闘の時にはこちらの不具合で決められなかったため勝利したメルーデル学園に+5ルーム学園に+4とさせていただきます』+2+2
『三試合目では様々な事がありましたが、治癒魔法だけに集中せず攻撃に備え防御魔法を貼っていました。』+4
ルーム学園ポイント数『11』
『それではついに、1位の発表です!!』
コロシアム中に歓声と共に魔法で打たれた花火が響き渡る。
『1位!メルーデル学園!!!!』
湧き上がる観客席。ルカとシャルロットは顔を見合わせて笑い手をグーにしてタッチする。その手を繋ぎ合わせアリーナの真ん中に歩き出す。
『一試合目では1着でゴールし、色違いのワイバーンとの連携、信頼を見れました。ワイバーンを気遣い飛びやすくする。水属性での防御も完璧でした。』+4
『二試合目ではすぐさま仲間と合流し戦力が別れないようにしました。ヴェルダン学園との戦闘でルカは魔法でアビーに、シャルロットはミリーナに高レベルな戦いで勝利しました』+5
『三試合目ではレイート学園と戦いルカが近距離のエイベルと戦いシャルロットが遠距離のカーラと戦い勝利しました。高威力の水属性に目で負えないスピードと強さをもつルカ』
『ルーム学園との戦いではシャルロットの闇属性を使った技に日光を応用とした近距離攻撃。』+5
シャルロットがエディとアビーの横に立つ。アビーは此方をチラリと見たがふん、と鼻を鳴らし顔を逸らした。エディは目が合うと微笑み「ありがとうございました」と手を出されその手を取り握手をしながら「こちらこそありがとうございました」と返した。
ぽんっ、と突然頭の上に何かが乗る、それは2人も同じようでエディは銀色の王冠、アビーは銅色の王冠。シャルロットは自分の頭からそれを取ると金色の王冠が手元にあった。
ミルアーナ「皆さんお疲れ様です。」
ミルアーナ「メルーデル学園校長のミルアーナです」
シャルロット達3人の前に立ち礼をしたミルアーナはもう一度指を振り、ルカとミリーナにも同様王冠を被せた。
ミルアーナ「メルーデル家の皆様がパーティを開いてくださるそうです。」
魔道大会が終わる今日、メルーデル家でパーティが開かれるらしい、シャルロット立ち参加者含めここに来ている観客の人たちも1部だが来るらしい。メルーデル家までの馬車が次々に出ている物に乗りそのまま家へと向かった。
__________________
表門は色々な馬車が止まり人で溢れかえっていたので裏門から入ることにした。裏門は馬車は数台、人も数人程度で気軽に入ることが出来た。そのまま部屋に直行しベッドに身を預けるとルカがベッドに腰掛けた。
ルカ「楽しかったけどやっぱ疲れるなー」
シャル「たのしかったな…これから…ぱーてぃー…も」
掛け布団をかけルカの横顔を見ながらパーティのことを考える、眠気が襲い考える思考は止まった、そんな眠気と戦っているシャルロットを微笑みながら見て頭を撫でる。
ルカ「少ししたら起こしてあげるよ」
頭を撫でていた手は元結に伸び解いた、遊んでいるのか元結をシャルロットの腕に巻き付けくすくすと笑っているが瞼が重くなりその姿は見えなかった。
そのまま眠りについた。
__________________
ルカ「シャル、起きてそろそろ行こ」
ゆすゆす、とシャルロットの身体を揺らし起こす、シャルロットは目をゆっくり開けて「んん…んー」と唸っていた。
ルカ「執事さんに服貰ったから着替えよ」
ほら、腕にかけてある服を見せる。その服をシャルロットが取り着替えようと手を動かす。
ルカ「シャル、違うシャツ着て、それベスト」
寝起きで回っていない頭でパーティ用の服を着るのは難しく、「ん”ーー」と唸る。着ようとしていた服を脱ぎまとめルカに渡すとルカは理解したようだった。
ルカ「シャル、腕通して」
_______________
最後に元結で髪を結んで終わり。
ルカ「行くよシャル」
シャル「分かった」
_______________
ロート「おはよう、シャルロット」
シャル「お母様!」
ロート「今日は大変だったものね、疲れは残っていない?」
シャル「なんで寝てたって…」
ロート「髪に寝癖ついてるわよ」
ロートはくすりと笑いながらシャルロットの頭の寝癖を撫でて治す。シャルロットは少し照れくさそうにお礼を言ってパーティ会場に向かう事にした。
________________
ロート「皆様、今日はお集まり頂きありがとうございます」
ロート「魔道大会は楽しめて頂けたでしょうか?」
ロート「メルーデル学園を優勝に導いてくれたシャルロットとルカに感謝を」
乾杯。とロートがグラスを掲げると皆も掲げる乾杯!と続く。
この世界にはお酒を飲むのに成人してから、という物がなくシャルロットはグラスに入っているワインを一気に煽る。
シャル「すみませんそれください。」
グラスを沢山持っているウェイターに話しかけ空になったグラスをそこに置き新しいのを貰う。
シャル「ルカ、何してるんだ?」
沢山のテーブルに乗った料理のひとつをじとー、と睨んでいるルカに何をしているのかと尋ねる。
ルカ「この料理の作り方なにかなって」
ルカらしい答えだ。
シャル「お母様にお願いしてシェフに聞いてもらうよ」
ルカ「本当?ありがとうシャル!」
飲んでいたグラスが空になりウェイターに新しいのグラスを貰う。
ルカ「…飲みすぎじゃない?」
シャル「そう?」
(お酒憧れだったんだよな…
20歳まで生きられても病気で飲めなかったし。
ルカ「程々にね?酔ってもちゃんと運んであげるから安心してね♡」
シャル「今日は、任せる」
シャルロットの腰に手を回し抱き寄せ頭をすり寄せるとシャルロットも頭を擦り寄せた。
ルカ「!?…酔ってる…?」
シャル「まだ酔ってない!」
_________________
グラスがついに10本目に行く頃にはシャルロットは酔っていた。
ルカ「シャル結構強いんだね」
シャル「シャルロットが強かったからかも…」
ルカ「確かにパーティでシャルロットが酔ってる所見た事ないかも」
窓際に座りルカに身体を預けているシャルロットは膝に乗せたお皿からツマミつつワインを飲む手を止めない。
ルカ「そんなに美味しい?」
シャル「おいしい…ずっとのむのゆめだった」
ルカ「じゃあ今度他のお酒持っくるね、美味しいの知ってるんだ」
シャル「うん…」
シャルロットはだいぶ酔いが回っており呂律が回っておらず顔は赤く少しゆらゆらと揺れている。
シャル「そういえば…ゼナ達見かけてないな」
ルカ「さっき居たけど料理に夢中になって気づいてなかったよ」
シャル「なるほど」
ルカ「すごい飲むね、もうワインボトルから飲んだ方が早い気がしてきた」
13本目のグラスを煽っているシャルロットにくすりと笑う。もう目が半分も開いていないシャルロットからグラスを取り上げる。
シャル「…ん…るか…かえせ」
ルカ「もうダーメ、明日二日酔いが頭痛所じゃなくなるよ」
シャル「ぅん…」
ルカ「まだまだ終わらなさそうだから部屋戻ろうか」
シャル「うん…」
ルカ「シャル水飲めそう?」
水が入ったグラスを貰っといて良かった、と思いながらシャルロットと口元に水の入ったグラスを近づける。
コクコクと飲み始めたシャルロットの口元から零れる水を拭きつつ飲み終わるのを待った。
シャル「ぷはっ…のんだ…かえる」
ルカ「そうだね、帰ろうか」
水を飲み終えたシャルロットを横抱きし部屋へ戻る。
ルカ「シャル、そろそろ着くよ」
ルカ「シャル?」
シャル「……」
返事はなく目は瞑られシャルロットの呼吸だけが聴こえた。
そのまま静かに部屋に戻りスーツとベストだけを脱がしベッドに寝かした。ルカだけはちゃんと着替えシャルロットの横に寝転がった。
ルカ「おやすみシャル」
__________________
2章 13話 エンド 4⁄14
遅くなりました!最近短くて話が多いいなって思ったので学園祭編をまとめて13話を長くしました。
シャルロット達のちゃんとしたプロフィール考えたのでそのうち投稿します
今更だけど「頼まれたので『代わりに』悪役令息辞めます。」代わりにを入れた方が良かったのかもと思います
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!